表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/27

19本目×ティー休憩

俺は今、喫煙所でたばこを吸いながら、人生の岐路に立っている。

ぼんやりとニュースアプリを眺めていると、ショッキングなタイトルの記事が目に飛び込んできた。


“たばこと薄毛・抜け毛の関係。喫煙で頭皮の血行が悪くなる?”


前髪が後退し始めてから、抜け毛に関する文献を読み漁ったので、たばこが頭皮に悪影響なことは知っている。

知ってはいるが、仕事の息抜き、ストレス発散、喫煙所でのコミュニケーションなど、色々と理由をつけて吸い続けてきた。

だが、そろそろ目を背けるのをやめ、向き合う時なのかもしれない。

というのも、先日、新しく購入した育毛剤の効果が全く無く、それどころかさらに抜け毛の本数が増えてきている…。

このタイミングでこの記事が表示されたのは、髪の毛のためにそろそろ本気で禁煙をしろということではないか?

そうだよな…。きっとそうだ!

残りのたばこが無くなったら禁煙を開始しよう。

いや…、違うな…。

こうやって、後回しにするのはやめよう。

今、ここで始めるんだ!

そうだ!もう、この電子たばこの本体を捨ててしまおう。

それが手っ取り早い!


「すみません!」


電子たばこの本体をどこに捨てればいいのか分からないので、とりあえずたばこ屋のおっちゃんに尋ねてみよう。


「このアイコースの本体を捨てたいんですけど、どうやって処分すればいいか分かりますか?」

「えっ?捨てるの?故障?」


たばこ屋のおっちゃんが、不思議そうに尋ね返してくる。


「いえ、まだ使えるんですけど、今すぐ禁煙したいので捨てたいんです!」

「はぁ…、故障じゃないんだね?じゃー、誰かが使うかもしれないからもらっておこうか?」

「えっ?いいんですか?ありがとうございます!助かります!」


聞いてみるものだ。

捨て方を教えてほしかっただけなのに、思いがけず処分することができた。

これで禁煙を始められる。

何て幸先の良いスタートなんだ!

これは禁煙に成功したら、毛量爆増コースかもしれない!

テンションが上がってきた!頑張ろう!




禁煙を開始して5時間が経過した。

眠い…。

何だかとてつもなく眠い…。

“お昼を食べた後は眠いなー”とかいうレベルではなく、一瞬でも気を抜くと意識が飛びそうなほど眠い。

明日、訪問するクライアントの資料を作らないといけないが、眠た過ぎて全く進んでいない。

もう、パソコンの文字も見えなくなってきた…。

何だ、これは?

禁煙が関係しているのか?


「きゃっ!どうしたんですか?」


隣の席の本田さんが、俺を見て驚いている。


「何が?」

「いや…、白目むいてましたよ…」

「あー、そう…」


本田さんが何か言っているが、眠た過ぎて頭に入ってこない。

これはちょっと、まずいな…。


“禁煙 眠気 関係”


禁煙と眠気に関係があるのか、グーグールで検索する。


“禁煙すると、ニコチンの離脱症状として、眠気が生じる場合があります”


あぁ…、これだな…。

やっぱり禁煙が関係していた…。


“離脱症状のピークは3日間ほどで、その後2週間ほど続きます”


はぁ?ピークが3日間?その後も2週間?

いやいや、数時間でこの状態だぞ…。

これは…、もう…。


「うわぁー!真中さん!また白目!」


本田さんに肩を揺さぶられ、意識を取り戻す。

完全に意識が飛んでいた…。


「どうしたんですか?体調、悪いんですか?」

「へぇ?大丈夫…、大丈夫…」

「大丈夫には見えないですよ!そういえば真中さん、今日はたばこ行ってないですよね?休憩してきたらどうですか?」


本田さんが俺を心配し、たばこ休憩を勧めてくる。

まぁ…、そうだな、本田さんに心配をかけているし、仕事にも支障をきたしているので、不本意ではあるが1本だけ吸ってみるか…。

いや、ダメだ!これは罠だ!

俺は今、”髪の神様”に試されているんだ!

ここで”1本だけ”と言って吸ってしまうと、もう二度と禁煙できないような気がする。

今、ここで限界を超えるんだ!


「実は今日から禁煙してて、そのせいで睡魔に襲われてるのよ」

「そうだったんですか!禁煙すると眠くなるんですか?」

「ニコチンの離脱症状らしい」

「たばこ…、恐ろしいですね…。でも離脱症状ってことは、体からたばこが抜けてる良い状態ってことじゃないですか!頑張ってください!」


本田さんのポジティブな考え方と、明るい励ましで、少し眠気が和らいだ。

ここで頑張って、毛量80%増量を目指すんだ!


「たばこ休憩の代わりに、ティー休憩に行きません?」

「ティー休憩って何?」

「たばこ吸う人は何回も休憩に行ってズルいので、私も外の自動販売機でミルクティーを買ってティー休憩してるんです」

「へぇー、貴族みたいだな」

「そうですよ!お紅茶です、お紅茶!外に出ると眠気もマシになるかもしれないですよ」

「よし!ティー休憩に行くか!」




会社の入るビルを出ると、向かいに3台の自動販売機が並んでいる。


“ガシャガシャ”


本田さんと俺のミルクティーを購入する。


「真中さん、ありがとうございます!また、明日も奢ってください!」

「図々しいな!まぁ、俺がたばこを我慢できてたら奢ってあげるわ」

「えっ、冗談で言ったのにいいんですか?」

「たばこ1箱600円近くするからね。禁煙して浮いたお金でお紅茶を買おう!たばこと比べると全然安いし!」

「いぇーい!絶対に禁煙成功させてください!」


外に出たことで眠気は少しマシになったが、まだ頭がぼーっとしてモヤがかかったような状態だ。

自分が何を言っているのか、自分でもよく分からない。


「本田さんとティー休憩ができるなら、絶対に禁煙を成功させるよ」

「えっ?ま、真中さんもそんなに、ミルクティー、す、好きだったんですか?」

「んー、ミルクティーを美味しそうに飲んでる本田さんが好きかな」

「なな、何ですか、急に!どうしたんですか?」

「別に思ったことを言ってるだけだけど」


あれ?何か変なことを言ったかな?

本田さんが耳を真っ赤にして、うつむきながらミルクティーを飲んでいる。

何だろう?自分が何を言ったのか思い出せない。

ニコチンの離脱症状、怖ろしい…。

お読みいただき、ありがとうございます!

少しでも面白いと思ったら、ブックマークや↓の★★★★★をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ