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『迷子の冬』
きっと誰もが見たことがあるであろう『なんで』の一つ。
そこにはもしかしたらこんな物語があるのかもしれない。
ねぇ夏。
いつか一緒に遊びたいね。
そうだね冬。
いつか一緒に遊ぼうね。
もう何回目の約束だろうか。
なんど期待を裏切られただろうか。そう思いながらも、冬は約束をしてしまう。
春や秋も、遊ぶ約束をするけれど、冬はいつも独りぼっち。
さみしくて、さみしくて、冬は地球の隅っこで縮こまり、震えていた。
ねぇ夏。
どうして置いていくの。
お前が遅いからだよ。眠る時間が長いのさ。
そう言われて冬は泣き出しました。
仕方ないじゃないか。眠いんだもの。
なら、と夏は言いました。
お前が遅れないように目印を置いていくよ。
夏のある日。一人の青年が道を歩いていました。
その日は過去最高気温の真夏日。
それなのに、青年がふと道の真ん中に落ちているものに気づきました。
少し汚れた毛糸の手袋。
今日はこんなにも暑いのに、誰が落としてしまったのだろう。
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