42.修行?(2)
ふんっ
丸太を持ち上げてみる。
自分の手には少し余る太さだが、掴めないほどではない。
肩に担いでいくか。
丸太を肩に乗せる、と
「あー、そのやり方はいかん。
両手に抱えていくんじゃ」
「えーーーー!?
おいおい、冗談だろ!?
手がダメになっちまうよ」
「何を言っとるか!
修行だと言っとるだろ!
早く運べ!」
この爺さん、こういうときに妙に威圧感があるのだ。
「わかったよ・・・・」
しぶしぶ手に抱えて運ぶ。
あ、そうだ。
肘の内側に挟めば・・・・・
「それもいかんぞ!
手に持て!」
ええ~~~~・・・・
細い丸太とはいえ、長さがあるので重い。
100mほどの距離が妙に遠く感じた。
後ろを歩いてきたスタンリー爺さんに追い越される。
「ほっほ、もう辛そうじゃの」
ぐぬぬぬ・・・・
1本目を運び終わる。
ロランは汗を流して薪割りをしていた。
今日中にどのくらい終わるのか・・・・。
「ほれ、よそ見をするな。
あ、戻りは走っていけよ」
「はぁ!?」
「ほれほれ、その方が早く戻れるじゃろ」
爺さんが見ているから仕方なく走る。
結局3人とも、暗くなるまで言われたことを続けた。
「だぁあああああ~!!!」
デカい溜息とともに俺はベッドに倒れる。
もう腕も足もヘロヘロだ。
俺は料理は無理だぞ!というと、爺さんがスープと肉を焼いたものを出してくれた。
シンプルな味付けだが、疲れた体には旨かった。
「俺ももう体がだるくて・・・・・」
ロランも憔悴しきっている。
「とりあえず、寝るか」
交わす言葉も少なく、俺たちはいつの間にか眠った。
「ほ~れ!お前ら起きんか!
朝だぞ!!
スタンリー爺さんのデカい声で起こされる。
・・・・・起こしてくれるなら、アリスがいい。
顔を洗ってキッチンに行くと、アリスが朝食の支度をしていた。
こないだの妄想の逆だ・・・・・これはこれで、いいな。
「スタンリーさんのお手伝いしかしてないけど・・・・」
と、スープをよそってくれた。
半分は爺さんだけど、半分はアリスの手料理だ。
ありがたくいただくことにしよう。
朝食を終えてまた裏庭に出る。
「今日も同じじゃ。
同じことをやれ」
『はい』
「えーっ!?」
「リュカ、なんじゃその返事は!」
「はぁ・・・・・わかったよ・・・・・」
森を走って丸太の所まで行く。
疲れてるけど・・・・・
この距離を走るのには慣れてきた。
丸太を手に持つ。
ん、これはちょっと太目だな。
両の親指にグッと力を籠める。
昨日やっていて気づいた。
親指に力を籠めると、他の指が少し楽になる。
脇も閉めて丸太を体に寄せた方が、腕に力が入るようだ。
持つ場所が悪いと、片方に傾いてぐらぐらして持ちづらい。
良い場所を探しながら、体のバランスを取りつつ運ぶ。
昨日は行きは歩いてたけど、繰り返しているうちに、少し小走りして運ぶ余裕が出てきた。
ロランは相変わらず汗を流して薪割りをしていたが・・・・・
あれ、昨日から大分本数が減ってる。
俺が運んだ細い丸太にも、もうすぐ手がかけられそうな勢いだ。
アリスは・・・・・
相変わらず座禅をさせられているが・・・・・
妙に険しい顔をしてるのは何でだ??
スタンリー爺さんの合図で、日が暮れる前に今日の修行は終わった。
「これ、いつまで続くのかなぁ・・・・・」
「そうだなぁ・・・・・明日が過ぎても同じだったら聞いてみようか」
賛成だ。
これを修行と呼ぶのはいかがなものかと思っていたところだ。