表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/45

38.王国アスタノース


北の王国、アスタノース。

冬は雪に覆われる国だ。

今は夏ということもあって、涼しくて過ごしやすい。

寒い地方ならではの植物や動物なんかもいるらしい。


国民は皆勤勉で、誠実な人柄なんだそうだ。

職人が多いのも、恐らくそれが理由だ。

アスタノース国王は、兵士上がりの厳しい王だとも聞いている。

そのわりに・・・・あの国境警備はお粗末な感じがした。

国の末端だからだろうか・・・・・。


ギルドで聞いた、エルフやピクシーなんかはどこにいるんだろうか?

この国にいる間に、是非一度お目にかかりたいもんだ。




アスタノースに入り、まずは3人とも、武器の手入れをすることにした。

ロランの剣、俺の弓、アリスのロッド。

それぞれに傷みがある。

道を歩いている人に尋ね、評判の良い武器屋に行ってみることにした。


なかなか大きな建物の武器屋は、門からそう遠くない場所にあった。

ドアを開けると、店内はなかなかにぎわっている。

丸い形をした建物に沿って、ぐるっと武器が並べられていた。

俺は新しい弓が欲しかったから、店内を見ることにした。

アリスとロランは、武器の手入れが出来るかどうか聞いてくる、と店員の所へ行った。


人をよけつつ店内を見る。

気になる弓を見つけた。

赤色が美しい。

弦はモンスターの毛で出来ているようだ。

固く張っているが、しなりもある。

耐久性もありそうだ。

値段も手の届かないほどではない。

これは良い買い物になりそうだ。


矢も見ようかな・・・・と思っていると、ロランとアリスが戻ってきた。


「俺たちの武器は、職人のいる場所で見てもらうのがいいらしい。

 紹介された場所に行ってみようと思う」


OK、と言って俺は新しい弓を買って、3人で武器屋を出た。



職人のいる店、というのは、手入れを専門に扱う店のようだ。

「これかな?」

看板の1つも掛かっていない、民家のような店のドアを開ける。

無骨な造りの店の中に、白いひげを蓄えた1人の老人が座っていた。

作業道具のようなものが、そこら中に散らかっている。


「あの~、すみません、武器をみて頂きたいのですが・・・・」

ロランが声をかける。


ジロッと睨むような視線。

寄越せ、というように手を差し出す。

随分と不愛想だ。


作業机に、ロランの剣とアリスのロッドを置く。

老人が剣を手に取り、しげしげと眺める。


「この剣の使い手はお前さんか」

ロランに尋ねる。


「はい、そうですが・・・・」


「良い剣だが、お前さんの技量が今ひとつ伴っておらないようだ。

 何かデカいもんを、力まかせに切ったろ。

 歯こぼれもひどい。

 お前、ちょっと剣を振ってみろ」


「え・・・・あ、はい・・・・」

有無を言わさぬ迫力に、ロランがしたがう。


ピュンッ、ビュンッ!

数回素振りをして見せる。


「どうでしょうか・・・・?」


「・・・・・なっとらんな。

 左足をもう少し後ろに引け。

 それに肩に力が入りすぎだ。

 力任せに剣を振れば、剣が泣く」


「は、はい・・・・」

ロランが力なく返事をする。


「どれ、こっちは・・・・」

アリスのロッドを手に取る。


「ふむ、これは良い魔法石だ。

 お前さんをよく護っている。

 幸運の祈りが付いているな」

老人が言う。


「もっとも使い手は未熟そうじゃがのぅ」

アリスをちらっと見る。


「柄も良い木で出来ておるが、お前さんの手には少し余るんじゃないかの?」


「あっ、はい、そうなんです。

 私の手には少し大きいような気がして」


「そうじゃろな。

 これは元々、素晴らしい魔術の使い手の物だったろうから」

いたわるように杖を撫でている。


「今は杖が泣いておるの」


「・・・・・・」


「ま、直すのは造作もないが、お前たちには勿体ない代物ばかりじゃ。

 直してやっても返す気にはならんの」


「ええっ、そんな・・・・」


・・・・・困ったことになった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ