76.祭りの夜(4)
イリーナがフードを取る。
「アスタノースの兵士様、大変ご迷惑をおかけしました。
私つい、お祭りの雰囲気に魅了されてしまって・・・・・
少しだけ外に出たいとワガママを言ったのです。
侍女たちに止められましたが、私の判断で勝手に。
そしたら帰る道がわからなくなってしまって・・・・・。
それで、この者たちに案内されてきました」
オーウェンは少々面食らった顔をしていたが
「そうでしたか。
ひとまずは、ご無事で何よりです。
イリーナ様がいなくなられたのを知っているのは、アスタノース側ではごくわずかな人間だけです。
そこまで大事にはなっておりませんから、ご安心下さい。
それより、エストゥルード国王様が心配しておいでです。
お急ぎこちらでお仕度を」
と言った。
イリーナは、侍女とエストゥルードの兵士に連れられて城へ消えていった。
オーウェンが
「君らは・・・・王女と知り合いなのか?」
と聞いたので俺らは、
「まぁ、ちょっと」
とあいまいな返事をするしかなかった。
城を出ると、ドーン!!と轟音が響いた。
花火が始まったのだ。
急いで王城の正面へ回る。
人混みもすごかったが、花火は美しかった。
花火が打ちあがるたびに、あちこちから歓声が聞こえる。
「わぁ~!すごい綺麗・・・・・」
アリスがため息交じりに言う。
俺は、アリスの花火に照らされた横顔を見ていた。
「ん?どうかした?」
と聞かれたので、あわてて花火を見ているふりをした。
「あ!あれ見て!
・・・・イリーナかなぁ?」
王城のバルコニーに数人の人影が見える。
ハッキリとはわからないが、あんな場所にいられるのは・・・・・
多分王族だろう。
「あんな場所からじゃ、花火なんてきっと見えないよね」
ロマンチックな花火も、少ししんみりした雰囲気になってしまった。
花火を見終わって、宿に戻る。
イリーナに会ったのには驚いたけど・・・・・
祭りは楽しかったし、アリスにプレゼントも出来た!
花火も一緒に見られたし・・・・・俺にしては上出来だ。
せっかくバスタブのある部屋なので、風呂を沸かして入ろっかな。
こっちの世界に来てからは、初めてじゃないだろうか?
蛇口をひねり、お湯を出す。
ぶわっと湯気がバスルームに充満した。
さ、着替えを準備してっと・・・・・
コンコン
ノックの音。
誰だろ?
ドアを開ける。
「アリス・・・・どうしたんだ?」
「ゴメンね、私の部屋のシャワーが壊れてるみたいで使えなくて・・・・・
貸してもらえないかと思って」
シャ、シャ、シャワー!?
おっ、俺の部屋で・・・・!?
「あ、ああ~かっ、構わないけどっ。
いっ、今ちょうどお湯を張ってるから、さっ先に入るといっいい、か、と」
「なぁに~?どうしたの?変なの。
というか、私が先でいいの?
自分が入るためだったんでしょ?
終わったら教えてくれたらいいから。
ねっ、宜しく!」
と言ってドアが閉まった。
お・・・・・おぉおぉおおおお!?
な、なんか緊張してきたっ!!
どうせだったら、アリスの後が良かった・・・・・
とかっ、邪なことは言うまい!!!
は、早く入ってアリスにシャワーを貸してあげないとな!!!
お湯が沸くのもそこそこに、俺は慌てて風呂に入った。
でもナゼか・・・・・
なんとなーーーく、なんとなーーーくだけど、いつもより念入りに体を洗ってしまった気がする。
よ、よし終わった。
アリスを呼んでこよう。
部屋をノックする。
「はぁ~い」
と明るい声。
「リュカ!
もう終わったの~?
急がなくても良かったのに・・・・
ちゃんと体、洗ったんでしょうね~?」
「しっ、失礼なこと言うなっ!
ピッカピカだわ!」
「あははっ、それならいいけど。
ゴメンね、それじゃ借りるね~」
「お、おう」




