73.祭りの夜
城を出て歩く。
「うーん、思わぬところで大金が手に入っちまったなー。
ありがたいけど、なんか申し訳ないぜ」
「元はと言えば、お前があんな無茶をするからだぞ。
本当にもうダメかと思ったよ」
「そうよそうよ!
1人で無茶しちゃって!
私たち、そんなに頼りない!?」
「い、いや・・・・そんなことは・・・・。
・・・・2人ともゴメンな」
「もう!ホントよ!」
アリスはご立腹のようだ。
「まぁまぁ、リュカも無事だったことだし。
今後は皆で気を付けていこう。
な、リュカも」
「おう」
「そういえば、アスタノース城への来客って誰なんだろうな?」
ロランが話題をそらしてくれた。
「城の皆があんなにせわしなくしてるんじゃ、よほどのお偉いさんかもな」
俺は言う。
「どんな人が来るんだろうね?」
お、アリスものってきた。
などと話していると、前方に騎馬隊が見えた。
「あれは・・・・・」
エストゥルードの国旗を掲げた一軍だ。
「来客ってもしかして・・・・・
エストゥルードの人なのかな?」
騎馬隊が近づいてくる。
数台の馬車の中に、見覚えのある顔があった。
エストゥルード国王と・・・・・
イリーナだ。
いくら顔見知りと言っても、一介の冒険者の俺たちが隊列を止めてまで声をかけることはできない。
馬車は俺たちの横まで来たが、こちらには気が付かなかったようで、そのまま通り過ぎていった。
「イリーナとまた話がしたいなぁ・・・・・」
アリスが言う。
ロランはボーっと隊列を見送っていた。
あ、そういえばコイツ・・・・・
イリーナのことが気になってたんだった!
「来客って、エストゥルード国王とイリーナ王女のことだったのか・・・・」
「そうみたいだな」
「何の用事なんだろうね?
国王と王女が国境を越えて一緒に来るなんて、あまりないことだよね?」
「確かにな~」
そんな話をしながら、今日の宿を探すことにした。
大金も入ったし、俺の体調も心配だということで、早めにちょっといい宿を取る事にした。
それにしても・・・・何だか来た時より、街の喧騒が気になる。
こんなに賑やかな街だったかな?
宿の受付にいくと、明るく声をかけられた。
「いらっしゃいませ!
本日は3名様ですね。承ります。
お客様方も、今日のお祭りをご覧になりに来たんですか?」
「お祭り?」
ロランが聞くと
「あら、ご存じありませんか?
今日はこのアスタノースの年に一度のお祭りなんですよ」
そうだったのか。
どうりで街が賑やかだと思った。
「夜市がメインですし、花火も上がりますよ!
よければ是非見ていって下さいね」
アリスはキラキラした目でその話を聞いていた。
せっかくなので1人ずつ部屋をとって入った。
エストゥルードと違って、王都でも宿はさっぱりとした造りだ。
あまり飾り気がないと言えばいいか。
その代わり、ベッドやバスルーム等は充実していた。
バスタブのある宿は珍しい。
寒い地域だからなのか、お湯につかる習慣があるようだった。
アリスが、お祭りを見に行こうよ!
というので、夜市に繰り出すことにした。
よその国のお祭りなんて、初めてだな。
屋台に食べ物も並ぶと聞いたので、宿の夕食は断った。
暗くなってきたので、3人で宿を出る。
街には、昼とは全く違う光景が広がっていた。
夕闇を照らすランタンの下には、沢山の屋台が並んでいる。
人もどこから出てきたのかと思う程、にぎわっている。
「すごいすごい!
賑やかだね!」
アリスは楽しそうだ。
「なぁなぁ、とりあえず腹ごしらえしないかー?
俺、腹減ってきた」
屋台からは色々な食べ物の匂いが漂ってきている。
鹿肉の串焼きや鴨肉を焼いたもの。
マッシュポテトを団子状に丸めてチーズと香辛料をかけたもの。
メロンのような果物や、レイドジェリーのジュース、ジャムを挟んだパンなんかもあった。
ビールのような酒も売られているらしく、それを飲んでいる者もいる。
それぞれに好きなものを買って頬張る。
「うーん、美味しい!
エストゥルードとは違う味付けだけど、どれも美味しいね!」
どの料理にもしっかりした塩味がついているのだが、それがアスタノース特有の素材と作り方で出来た調味料らしい。
少し独特の香りがあるのだが、何の料理にも合うので驚いた。
野営の際の料理に使いたいと思い聞いてみると、粉末になったものが屋台で売っているから、買うといいと言われた。




