72.アスタノース城で
グゥ~~という、でっかい腹の音で目が覚めた。
そういや昨日から何も食べてない。
部屋の中には俺1人だった。
2人はどこへ行ったんだろ?
ガチャっとドアが開いた。
「あ、リュカ!
起きたのね」
アリスだ。
「よく寝てたから起こさなかったよ。
体は大丈夫か?」
「おう、大丈夫なんだけど・・・・・」
俺は深刻な顔をする。
『だけど・・・・?』
「猛烈に腹が減った」
「もう!何かと思った!
ビックリするじゃない!」
「はっはっは、それはそうだろうな」
へへ、なんかこういうやりとりが出来るのが、今日は妙に嬉しい。
侍女に頼んで、食事を部屋まで運んでもらった。
野生のシカの肉を柔らかく煮たシチューや、マッシュポテト、揚げパンに果物。
どれもうまかった。
ガツガツと食べる俺を見て
「そんだけ食欲があれば、大丈夫そうだな」
とロランが言った。
「そういや2人は、外で何してたんだ?」
「オーウェンさんに頼まれてた、ダンジョン調査の結果をまとめるのを手伝ってたよ」
ああ、そういやそんなこと言ってたな。
「あのダンジョン、どうなるって?」
危険なダンジョンだ。
また冒険者が入れば、同じようなことが起こるだろう。
「未踏破だった理由やフェンリルがいることがわかったから、国で決めて立ち入り禁止にするってさ」
そうだな、それがいい。
フェンリルも、自分の子を守りたいだけなのだろうから。
むやみに人間が入って、警戒させるべきではない。
「あ、アリスの魔法については何か言ってたか?」
あのまぶしい光。
聞いたことのない呪文。
瀕死の俺を治した魔法。
「それがね・・・・・
オーウェンさんたちが言うには、あれは光魔法だったんじゃないか、って」
「何だって?」
光魔法。
闇魔法と対を成す、最高レベルの魔法だ。
おそらくこの世に光魔法を操れるマジシャンは、両手で収まるくらいしかいないハズだ。
あとは・・・・・
光魔法が使えるのは、確かエルフだけ。
それもハッキリと見た者はいないから、伝説上の話のようになっている。
「でもね、私のレベルじゃ到底扱える魔法じゃないから・・・・・
もしかして、って思ってロッドの話をしたの。
このロッドには『幸運の祈り』がかかってるって」
「エルフの里の話もしたのか?」
あの場所・・・・・
ひっそりと暮らしているエルフを脅かす者たちがいるのは確かだが、その存在をこの王城という場所で大っぴらに話していいものかどうか。
「ううん、それは内緒にした。
ね、ロラン」
「ああ」
「だって・・・・・
それを言ったらね、城中のマジシャンが珍しがって見に来たんだけど・・・・・。
エルフに会ったのか!?
なぜ『幸運の祈り』がかかっている!?
って、すごい勢いで・・・・・
これは言わない方がいいのかなって。
アスタノースに住んでいても、エルフに会うのって稀なことみたい。
だから、ひいおばあ様の持ち物で、そのおばあ様がエルフに会ったことがあるそうです、って話した」
「そっか、それは良かった。
俺もあの里のことは・・・・・
むやみに言わない方がいいと思ってたから」
「結局、あの魔法が本当に光魔法だったかどうかは、分からず仕舞だったよ。
でも・・・・・
あの魔法がリュカを助けてくれたことは確かだから・・・・・」
「そうだな。
本当に感謝しなきゃ」
「ああ、また機会があったら、エルフの人たちに会いにいこう」
「おう」
「うん!」
俺が目覚めたのを聞いて、オーウェンたちがやってきた。
「リュカくん、体調はどうだ?」
「はい、もうすっかり大丈夫そうです。
うまい飯も食ったし」
「はっは、そうか。
それは良かった」
「そうだ・・・・・これを」
とオーウェンが布袋を渡してきた。
「?」
やけに重いな。
中をのぞいてみると・・・・・
「!?」
大量の金貨が入っていた。
「こ、これは・・・・・?」
「アスタノースの国王陛下からの拝領品だ。
君への謝罪の意も込めてな」
3人は深々と頭を下げた。
「いやいや・・・・
こんなに貰うわけには・・・・・」
俺は恐縮する。
「どんな大金も、君の命には代えられない。
それに、ロラン君、アリス君にも調査結果をまとめるのを手伝ってもらった。
少ないくらいだが、どうか受け取って欲しい。
これを突き返されたんじゃ、俺も立つ瀬がない」
うむぅ・・・・そう言われちゃったらなぁ。
「なんか、すみません」
その後も少し話をした。
俺たちがエストゥルードの出身だと話すと、アスタノースはどうかと聞かれたから、警備が随分厳重な割には国境や山の中などで危険な目にあった、と話した。
オーウェンたちはそれを聞いて神妙な顔をしていたが
「ありがとう、参考になったよ。
重ね重ねすまない」
と言った。
俺の体調も良くなったので、城を出ることにした。
王様に直接お礼を言いたかったが、多忙で会えなかった。
なんか来客があるとかで、城内はせわしない雰囲気だった。
「今日は城内が忙しくてな。
我々もここで失礼するよ。
気を付けて旅を続けてくれ。
縁があったら、また会おう」
オーウェンたちに見送られて俺たちはアスタノース城を後にした。




