64.エルフの里(11)
寝付いたのが遅かったので、起きるのが大分遅くなってしまった。
気が付いた時には昼近かった。
エルフの里には、今日もゆったりとした空気が流れていた。
3人でロランの部屋に集まる。
「ここに長居してもご迷惑になるから、今日のうちには発とうと思う」
「そうね」
「賛成」
「里長に挨拶して、行こうか」
「そうか、もう行くか。
君らには本当に世話になった。
エルフの里一同を代表して、感謝申し上げる。
・・・・マリアの導きじゃろうかのぅ」
懐かしそうな顔をして里長が言った。
「そうじゃアリスよ、その杖、貸してもらえんか?」
「あ、はい」
里長にロッドを渡す。
里長は呪文を呟き、オーブに手を当てる。
オーブがまばゆく温かい光に包まれた。
「今のわしが持てる力で、幸運の祈りをかけておいた。
君らをきっと護ってくれるだろう」
と、アリスにロッドを渡す。
「アリスよ、魔法は常に自分の心と共にある。
エレメンツは清い心に力を貸す存在じゃ。
ゆめゆめ忘れないように」
「はい、里長様。
ありがとうございます。
ひいおばあちゃんのように、なれるかどうかわかりませんが・・・・・。
頑張ります!」
「うむ。
ロラン、それにリュカよ。
アリスを頼むぞ。
君らは頼もしい彼女の騎士じゃ」
騎士かぁ・・・・・
そんな風に言われると、なんか照れるな。
「君らという人間がいたこと、この里のエルフたちにもよく言って聞かせよう」
「ありがたいことです」
とロランが言うと・・・・・
バンッと家のドアが開いた。
ミルハだ。
走ってきたのか、息を切らせている。
「はぁ・・・・はぁ・・・・・
ロランお兄ちゃん、アリスお姉ちゃん、リュカ!
もう行っちゃうってホントなの!?」
泣きそうな顔をしている。
「ミルハちゃん・・・・・
そうなの、ゴメンね。
私たち・・・・これから行く所があるんだ」
ミルハの背丈までかがんでアリスが言った。
嘘だ。
本当は行くアテなんかない。
「だから残念だけど、ここにはいられないの。
短い時間だったけど、とっても楽しかったよ。
ありがとうね」
と言って、ふわっとミルハを抱きしめた。
「うわーん!!
嫌だぁ、もっと遊びたかったぁ!」
ミルハが涙をこぼして言う。
「うんうん、私もだよ」
抱きしめる腕にギュッと力がこもる。
「ねぇ、次はいつ会える?
いつ来れる?」
アリスは困った顔をする。
「そーだなぁ。
俺たち、これから他の国に行くからなぁ・・・・・
この里の人たちみたいに、困ってる人を助けに行くんだ」
とっさに出た嘘だった。
「助けに?リュカが?」
「おう、知らなかったろ、俺って強いんだぜ?」
「・・・・・うそ!」
「お、おい!
何だよ、嘘って!」
もしかして、気付かれてる?
「リュカが強いなんて、うそだもん」
そっちか。
「何を~?
ミルハはまだ子供だから、分からないんだろうなぁ~。
俺の助けを必要としている人たちが、この世界には沢山いるんだぜ?」
「・・・・・うそだもん」
また、目にいっぱいの涙。
「な、だからミルハも、この里で沢山勉強して、立派なエルフになってくれよ。
そしてミルハが、この里を守る人になるんだ」
「そしたら会える?」
「ああ」
「・・・・・わかった」
「おし!いい子だ!約束だ」
小指を出すが、ミルハはきょとんとしている。
あ、そうか。
この世界には指切りは存在しないのか。
「これは・・・・・
約束の魔法だ。
ミルハは立派なエルフになる。
俺たちは必ずまたここに戻ってくる」
ミルハと小指を絡ませて言う。
「約束の魔法・・・・・
うん!」
パッと明るい表情になる。
「ほっほ、約束の魔法、わしがしかと見届けた。
ミルハよ、励むのじゃぞ」
「うん!」




