63.エルフの里(10)
各自、里長が用意してくれた部屋に戻る。
相手が手応えのないやつらで良かった。
俺たちより強い相手だったら、諸共やられていた。
それにしてもあいつら、一体このエルフの情報をどこから・・・・・
などと考えていると
「コンコン」
と部屋とノックする音がした。
「リュカ?起きてる?」
アリスだ。
こんな時間に何の用だろう?
「おお、起きてるよ」
と声をかけると、寝間着姿のアリスが入ってきた。
「ごめんね、急に。
何か寝付けなくて」
「大丈夫。
そうだよな、わかるよ」
エルフの里を回り、夜にはあいつらと戦い・・・・
体は疲れてはいるが、興奮しているのか頭は妙に冴えている。
アリスに椅子を勧めて、俺はベッドに向かい合って座る。
「何だか・・・・
すごい経験してるね、私たち」
「ホントだよなぁ。
冒険者になって良かったなって思うことばかりだよ」
俺は興奮気味に答える。
「辛いことはない?」
「いーや、あるよ。
モンスターと戦うのも、人と戦うのも、怖いさ。
野営も正直疲れるしな。
でも、この里に来て、自分たちの手で守れるものや人がある、ってことが何か本当に嬉しくてさ」
「わかる!そうだよね。
本当にそれは、何にも代えがたいな」
「だろ!それにさ、エルフの里の素晴らしさといったら・・・・
世界にはこんな美しい場所があったんだな、って本当に感心したよ。
冒険者になってなきゃ、こんな場所には来られなかったと思う。
エルフの人たちや暮らしを、こんなに身近に感じられる経験なんて滅多にないぜ!
それにアリスのひいばあちゃんの話まで聞けたし!
これも全部、アリスが山でミルハを見つけてくれたおかげだな」
俺はニカッと笑って言った。
「そうだね・・・・ミルハちゃんを助けられて良かった。
エルフの人たちも親切だし、本当にここは夢みたいに素敵な所。
スタンリーお爺ちゃまにも感謝しなきゃね」
「そうだな~。
でも俺たちあそこじゃ爺さんの世話もしてやったけどな~。
だいぶこき使われたし」
ふふっ、とアリスが笑う。
「ねぇ、リュカ。
・・・・・私のこと、助けてくれてありがとうね」
「え?」
アリスが真っ直ぐに俺を見つめている。
窓から差し込む満月の明かりだけが、俺たちを静かに照らしている。
「アスタノースに入るとき、兵士からかばってくれたでしょ。
それにさっきの戦いのときも、私のことをずっと気にかけてくれてた」
気付いていたのか。
アリスにあまり気を遣わせたくなかったのだが・・・・・
「いやぁ、あの兵士が変なこと言うもんだからさ、俺もつい腹が立って。
金よこせーなんて、明らかに俺たちをバカにしてただろ?
それにさっきだって、俺はアリスの魔法に助けられたって思ってんだけど」
アリスはふっと笑って続ける。
「ミルハちゃんと出会った時も、私にお母様と話をさせてくれたよね。
仲間として信用してもらえてるって感じて、嬉しかった。
それに、ミルハちゃんに里を案内してって言ったのも、元気がないのに気づいたからでしょ?」
あれれ、何だよ、それも分かってんのか。
「し、信用するのは当たり前だろ。
俺たち仲間なんだし。
里を案内させたのは、単に俺が興味があっただけで・・・・・」
また、アリスはふふっと笑う。
「いいよ、そういうことにしといてあげる」
「何だよ、それ、俺はホントに・・・・・」
と言いかけてやめた。
アリスがまたじっと俺を見つめている。
な、なんだろ、緊張するな。
「アリス・・・・?」
「リュカ・・・・・私ね・・・・・」
うつむいて、少しの沈黙。
「何でもない!
ただお礼が言いたかっただけ」
「お、おう。そっか。
もう眠れそうか?」
「うん、ありがと」
そう言ってはにかんだ顔が可愛かった。
頬が赤いのは気のせいか?
月明りでよくわからなかった。




