62.エルフの里(9)
「これ以上抵抗すれば、命はないぞ」
今までに聞いたことのない、低く厳しい声でロランが言う。
これは脅しなんかじゃない・・・・・本気だ。
「ぐぅううう・・・・・」
山賊は低くうなるような声を出す。
「お頭ぁ」
負傷した山賊が情けない声で言う。
「お前ら、一体ナニモンだ?」
「俺たちは、エルフに雇われた用心棒だ。
以前にエルフを襲ったのも、お前らか!?」
俺は言う。
「エルフの用心棒だと?
あの辛気臭い妖精どもが、人間を用心棒に雇うなんてな。
にわかには信じ難い」
ぐっ・・・・・
エルフの人たちの今後のためにも、ここは嘘をつき通さなければ。
「お前らのようにエルフを傷つける人間もいれば、俺たちのように守る人間もいるってことだ。
俺たちは、エルフの信用を得ている」
「ふんっ、信用ねぇ」
ロランに向けられた剣を払いのけるように、頭と呼ばれた山賊が立ちあがる。
俺たちはまた武器を構えた。
「今日のところは、退く。
しかし、俺たち以上の手練れがいることも覚えておくこったな!
いくぞ!」
と捨て台詞を残して山賊たちは去っていった。
「皆さん、大丈夫ですか?」
アリスがエルフに声をかける。
台座の陰で震えていたエルフたちが、ようやく顔を見せた。
「ああ・・・・ああ・・・・
本当にありがとうございました」
「できれば皆さんの前では戦いたくなかったのですが・・・・
恐ろしい思いをさせてしまって、すみません」
ロランが申し訳なさげに言う。
「いいえ、とんでもない。
私たちだけでは、また前回の二の舞になっていたと思いますから・・・・」
と暗い顔をする。
「皆さんに怪我がなくて、何よりです。
儀式が済んだなら、急いで戻りましょう」
エルフと俺たちは里に戻ることにした。
入り口で待つ護衛のエルフたちが、俺たちの顔を見てほっとした様子を見せる。
が、先程の出来事を話すと真っ青な顔をして
「皆さん方がいなければ、我々だけでは対処できなかったかもしれません。
本当にありがとうございます」
と頭を下げた。
里に戻り、長に出来事を報告する。
「やはり・・・・賊がおりましたか」
神妙な面持ちだ。
「ああ、でも・・・・
俺たちはエルフの用心棒だ!と言ってやったから、奴らもしばらくは大人しくなるかもしれませんよ」
里長は目を丸くして
「ほっほ、用心棒とな」
と言った。
「すみません、リュカが勝手なことを言って・・・・」
ロランがすまなそうな顔で言う。
「いや、でもよ。
そうでも言わなきゃあいつらまた懲りずに、エルフを襲いに来るかもしれないだろ!?」
「リュカ殿の言う通りじゃ。
重ねて感謝申し上げる」
里長が深々と頭を下げた。
他のエルフたちも同様に俺たちに頭を下げる。
「そんなかしこまらないで下さい。
俺たち、お役に立てて本当に良かったです。
な、お前たちもそうだろ?」
とロランが俺とアリスを見る。
「おう、こんなの朝飯前よ」
「うん、私たちに出来ることがあって、良かった」
言う俺たちを見て里長は
「君らは本当に・・・・・」
と言った。
「今日はもう遅い。
君たちも、他の者ももう休みなさい」




