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55.エルフの里(2)


「ふっふ、お嬢さん。

 わしは実は、その杖に見覚えがあっての」


里長がさきほどより砕けた様子で話す。


「えっ?」


「それは恐らく・・・・・

 元々マリア・エルドレッドの杖ではないかな?」


「!!

マリア・エルドレッドは、私のひいおばあ様なんです!

ひいおばあ様をご存じなんですか?」


「ああ・・・・・よく知っておる。

 その杖に『幸運の祈り』をかけたのも、わしじゃからの」


「そうなんですか?」


「ああ・・・・・話が長くなりそうだ。

 お客人たち、今日はこの家に泊まっていくといい。

 礼と言っては何だがの。

 そしてこのおいぼれの昔話に、少し付き合って下され」


「願ってもないことだな!

 エルフの里長の話が聞けるなんて」

2人を見て俺は言う。


「うん、本当に!」


「ありがとうございます。

 お言葉に甘えさせて頂こうか」




里長の家で夕食を食べる。

魔法陣のような柄のカーペットの上に、エルフのご馳走が並ぶ。

エルフは殺生をしないから、基本的に肉や卵は使われていない。

シチューやパスタのようなもの、サラダや果物などが並ぶ。

全く質素ではなく、温かく野菜の多い食事は俺たちの腹を充分に満たしてくれた。


食事が終わると、里長がおもむろに話始めた。


「マリアと出会ったのは・・・・・・

 もう6~70年ほど前かの。

 お互いに若かった。

 君らと同じくらいの歳の頃か。

 私はエルフの生まれだったが、どうしても外の世界を見たくてな。

 人間は危険だ、とばかり教えらえてきたが・・・・・

 自分はどうしてもそうは思えなかった。

 この目で人間がどういうものかを確かめたかったのだ。

 それで・・・・里を勝手に抜け出した」


俺たちはじっと聴き入る。


「その頃は、この国の治安も今のように良くはなかった。

 エルフだと知られたら、奴隷にして売り飛ばされることもあったようだ。

 わしはそんなことも知らずに、のこのこと街に出た。

 そして・・・・・乱暴な運転の馬車にはねられた。


 軽い体躯じゃ、怪我もなかったが、転んだ拍子に耳と髪を隠していたフードが取れて、エルフなのが周囲に知れてしまった。

 周囲がざわざわと色めき立ったのが分かったよ。

 そしてすぐさま・・・・・

 自分を捕まえようと、人間たちの手がわしに向けられた。


 わしは後悔した。

 人間と戦ったことなどないし、その頃は魔法もろくに使えなかった。

 羽を使って逃げれば、ますます目立ってしまう。

 とにかく走って逃げたよ。

 あの時のことを思い出すと、今でも身震いがする。

 人間たちの浅ましく歪んだ顔や怒声。

 後になって考えれば、あの者たちも生きるのに必死だったのだと気づいたが・・・・・。


 すると前の方から

 『こっちへ!』

 と呼ぶ声がした。

 信用して良いかわからなかったが、命の危険を感じていたわしは、その声にしたがって逃げた。

 角を曲がったところで

 『この箱に入って!』

 と、四角い木箱のようなものに押し込められた。

 そしてその声の主も、どこかに隠れてしまった。


 追ってきた人間たちは、わしを見失ったと口々に不満を言っていた。

 怖くて怖くて・・・・いつこの箱を開けられるのではないかと、気が気でなかった。

 嫌な汗が体から噴き出していたよ。


 どのくらい経ったろうか・・・・

 人間たちの声がしなくなり、静かになった。

 外へ出てもいいかどうか様子をうかがおうとすると・・・・

 『ねぇ』

 と声をかけられた。

 心臓が飛び出るかと思ったわい」


カッカッカと里長は笑った。


「声の主は言った。

 『もう大丈夫よ、出てきて』と。

 信用して良いものか迷ったが、清廉なその声にわしの気も緩んだ。

 そっと外に出ると・・・・・

 人間の女が1人、立っていた。

 それがマリアじゃった。


 肩までの栗色の髪に、お嬢さんと同じ深い緑色の目をしていた。

 そしてそのロッドを持っていた。

 こんな荒れた場所には似つかわしくないと思えるほど・・・・・

 美しかった」


里長は遠い目をした。


「『あなた、何でこんなところに1人でいるの?

  危ないわ。

  早くここから逃げないと』

 

 そういわれたが、とっさのことで頭が回らなかったし、腰も抜けておった。

 立てない、というと

 『しょうがないなぁ』

 と言って手を貸してくれた。

 

 『あなた心配だから、私がついてってあげる。

  家はどこなの?』

 まるで迷子の子供を扱うようじゃったな」

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