35.アスタノースを目指して(2)
ギルドで紹介されたダンジョンの前まで来た。
情報によると、この洞窟ダンジョンから少し離れたところに、2つ目の経由地になる街があるらしい。
ダンジョンは3階層になっていてやや複雑だが、正規の地図を買うことが出来たので安心だ。
森の中での光景がふと頭をちらつく。
異世界とはいえ、ダンジョンに入るときはいつも命懸けなのだ。
「俺たちの技量だと、中ボスを倒せたら万々歳って感じかな」
ロランが言う。
「そうだろうな。
まぁ出口まででどのくらいレベルが上がるかだけど」
「久々のダンジョンね!
頑張りましょ!」
アリスはやる気だ。
「よし、いくか」
洞窟ダンジョンなので、前に入ったダンジョンに作りは似ている。
モンスターも見たことあるヤツもいれば、サイズが多きくなったな、という感じのものもいる。
カタツムリみたいなやつは、攻撃すると殻にこもるから厄介だった。
殻が意外と堅いのだ。
アリスは新しく雷と風の魔法を覚えた。
いい感じだ。
俺は、この魔法矢の使いどころはまだないな、と思いながら進む。
ダンジョンの出口は2階にあり、階段の所まできた。
この突き当りに中ボスの部屋があり、それを倒すと一旦出口に出られる。
高レベルパーティーは3階までいってボスを倒し、お宝もゲットしてくるようだが、俺たちにはまだそんな余裕はない。
「ここからは中ボスの部屋だ。
気を引き締めていこう」
「おう!」
「うん!」
中ボスは確か・・・・・
森の主と言われてたやつと同じ、角の生えたクマのような姿をしたモンスターだったはず。
部屋の中に入る。
グオォオオオオオ!!
奥から恐ろしい声が聞こえてくる。
俺たちに緊張が走る。
「会敵したらすぐに攻撃を始めよう。
悠長にやっている暇はなさそうだ。
俺が最初に気を引き付けるから、援護を頼んだぞ」
「わかった!」
「無茶しないでね」
ロランが先頭を切る。
「!!」
思っているよりデカい・・・・・
3メートルほどはあるだろうか。
目は血走っていて、口からは涎を垂らしている。
空腹で気が立っているのか?
いずれにしろ、やらなきゃこっちがやられる!
「うおぉおおお!」
ロランが斬りかかる。
クマは両腕を振り上げて襲ってくる。
腕に剣が当たる、が深手にはならない。
すぐに次の攻撃がくる。
「アリス、フローズンで援護を!」
俺が言う。
「うん!」
クマが一瞬だけ動きを止める。
そこをロランがすかさず斬る。
前にも試したが、この方法が一番効率が良い。
俺も弓を引く。
弓の威力がないから、全部が効いているわけではなさそうだ。
これは俺自身の力のなさだな・・・・・。
次は足を狙ってみるか。
動きが鈍ればいいが。
「ロラン!!」
アリスが叫ぶ。
剣が弾かれ、ロランが倒れた。
一向に俺たちを倒せない苛立ちからか、クマが狂暴性を増した。
ロランが標的になる。
「くそっ」
俺はストックしてあったファイアーの弓を、顔を目掛けて放つ。
ボウッとクマの顔が炎に包まれる。
が、ひるむのは一瞬で、すぐにまた襲い掛かってきた。
ファイアーでは威力が足りない。
「アリス、ロランに剣を!」
弾かれた剣をロランに渡す。
間一髪、ロランの剣が攻撃を防いだ。
こいつはべらぼうに体力があるようで、なかなか倒せない。
アリスも魔力をポーションで補いながら戦っている。
何かとどめになるような一撃を・・・・・
そうだ、あの弓を試してみよう。
「アリス、また俺の矢にファイアーをかけてくれ!
あの大グモと戦った時みたいに!」
「わかった!!」
俺は残り1本になったファイアーの弓を構えた。
2重にかかったファイアーなら、威力は倍になるはず。
弓を引く。
早く当てないと、俺たちをかばっているロランが危なくなる。
矢を放つ。
「アリス!!!」
ファイアーを唱える。
弓は炎を上げて飛ぶ。
ファイアー×2の威力の弓が、クマの腹に当たる。
上半身がボウッと炎に包まれる。
動きが止まった。
効いているか!?
『!?』
なんとクマは、そのまま暴れだした!!!
このままではラチがあかない。
ファイアーの炎も、そのうちかき消されてしまうだろう。
あと少し、こいつを完全に倒すには・・・・・!