52.エルフの里を目指して(2)
「これは・・・・あなたのお母さんのもの?」
コクンとうなずく。
「そうなんだ!良かったぁ!
私たちね、これを持ち主に返そうと思ってたの」
子供がじっとアリスの目を見る。
「本当よ!
私たちはダンジョンのモンスターを倒して、これを見つけたの。
これね、何か声がするのよ。
あなたのお母さんの声かしら?」
「!」
子供がオーブを手に取り、目をつぶる。
「お母さん・・・・・!」
ふわっと暖かい光がこぼれて、声がした。
「ミルハ!?ミルハなの!?」
「お母さん!!」
「あなた、一体どこにいるの!?
みんな心配して探しているわ!
無事なのね!?」
「うん・・・・でも・・・・。
帰り方がわからないの・・・・・」
「そこはどこなの?」
「わかんない・・・・川のところ・・・・」
「川・・・・そしたら、その川をずーっと北に歩いていくと小さい滝があるわ。
そこまで迎えを寄越すから、歩いてこられる??」
「うん、わかった」
「ああ・・・・ホントに良かった・・・・。
ところで、あなたどうやってここに連絡を?
オーブを持っていたの?」
「んっとね、人間のお姉さんが持ってて・・・・」
「人間!?あなた人間と一緒なの!?」
「う、うん・・・・」
「あ、この子のお母さまですか?
私たち冒険者なんですが、山の中でこの子が泣いているのに出会ったんです」
アリスが呼びかける。
「このオーブも拾ったものなのですが・・・・
持ち主に返そうと思っていたんです。
だから、良かった」
「・・・・・・」
母親は応えない。
俺たちを疑っているようだ。
ロランがとっさに口を開こうとしたが、俺は制止した。
ここは多分、アリスに任せた方がいい。
「ミルハちゃんの足では、上流にいくのは難しいかもしれません。
もしよければ、滝まで送っていきましょうか?」
「・・・・・・」
アリスの提案に返事はない。
警戒されているのか。
でもおそらく、俺かロランが口を開けば、態度はもっと硬化するだろう。
アリスの柔らかい声が、きっと母親の警戒心をとくはずだ、そう思って俺は今まであえて口を出さなかった。
「・・・・・・。
お願いしてもよろしいでしょうか」
「はい!わかりました。
お母さま、私を信じて下さって、ありがとうございます」
安堵の混じる、素直な言葉。
アリスの優しさが、きっとエルフにも伝わるんだろう。
「ではミルハ、待っているからね。
どなたか存じませんが・・・・・
ありがとうございます」
と言って、会話は途切れた。
「ふはー、良かった良かった」
なりゆきをじっと見守りつつ、口を出したかったらしいロランが、息吐き交じりに言う。
「私に任せてくれて、ありがとう。
勝手に決めちゃってゴメンなさい」
「いやいいんだ。
俺たちが口を出したら、態度がもっと硬化するかもって思ったんだ。
エルフは人間を怖がるものだからさ。
アリスに任せて正解だったな」
「そうか・・・・お前にそんな知識と考えがあったとは。
助かったよ」
などと話しているのを、ミルハと呼ばれたエルフの子供がじっと見ていた。
「ミルハちゃん、良かったね。
一緒に仲間のところまで行きましょ。
お母さまも心配されてるわ」
俺たち4人は、上流の滝を目指すことにした。
ミルハの歳は5歳~6歳くらいだろうか。
川に沿って山道を歩くのは容易ではない。
ミルハのペースにあわせていたら、日が暮れてしまう。
「ミルハ、ちょっといいか?」
前を歩くミルハに声をかける。
「?」
振りむくミルハを抱き上げて、肩車をした。
「!!」
ミルハは驚いて身じろぎする。
「おいおい、暴れるな。
しっかりつかまってろよ。
この方が早い」




