45.修行?(5)
クマから逃げてウサギを探す。
行きは見当たらなかったから、少し進む方角を変えながら、爺さんの家に戻ることにした。
声と足音をひそめて進む。
音にびっくりしてウサギが逃げてしまうかもしれないからだ。
「ん!リュカ、その先にいそうだよ」
小さな声でアリスが言う。
どれどれ・・・・と目を凝らしてみると、いた。
茶色い野ウサギだ。
しかし弓もないのにどうやって捕まえたもんか。
「罠でも仕掛けるか?」
ロランが言う。
なるほどそれが一番よさそうだが・・・・・
「ちょっと試させてくれ」
とっとと帰りたい俺は、自力で捕まえてみることにした。
気配を殺して近づいて、そーっと首ねっこを掴もうとする。
が、すんでの所で気付かれる。
「ちぇっ」
ウサギは走り去っていったが・・・・・。
ん?思ったよりも遅くないか??
これなら俺の足でも追いつきそうだ。
「あ~あ、やっぱり罠の方がいいんじゃない?」
アリスが言う。
「いや、もう1羽試させてくれ」
次は多分いける。
2羽目を見つけてそーっと近づく。
今度はもっと早く気付かれた!
先にウサギが走り出すが・・・・・・
ダッ、とスタートダッシュをかける。
追いついた!
今度は両手で胴体を捕まえる。
「よっしゃ!」
野ウサギを捕まえた。
「はー、すごいもんだな」
ロランが感心したように言う。
「すごいダッシュ・・・・犬みたいだったわ」
アリスぅ・・・・・
しかし、俺ってこんなに足速かったっけ?
同じ要領でもう1羽ウサギを捕まえて、スタンリー爺さんの家に着いたのは、夕方になる手前だった。
爺さんに声をかける。
「おーい、獲ってきたぞー」
爺さんは何やら作業をしているようだった。
丸眼鏡を外してこちらを見る。
「ほう、んじゃ捌いてやるかの」
今日は捕まえてきた魚とウサギを、外で焼いて食べることにする、と爺さんは言った。
野営の時のようにかまどを作って火をつける。
魚はくし刺しにして塩が振られ、ウサギは野菜と一緒にくし刺しになっている。
「わぁ、美味しそう」
「なぁなぁ、パンとチーズも焼かないか?
いつかリュカが作ってくれたみたいに」
「さんせーい!
あー、あの時の甘いのがあれば、もっと良かったのにな~」
ハチのポーションのことか。
ここにくる道中で、使っちまったもんな。
するとおもむろに爺さんが立ち上がり、家に入っていった。
すぐに戻ってきたが、手にはなにやら小さなビンを持っている。
「これを食べてみろ」
とアリスにビンを差し出す。
「あ・・・・ありがとうございます」
アリスが受け取って、一さじなめてみる。
「ん!!何これ!?
おーいしーい!」
満面の笑み。
どれどれ、と俺とロランもなめてみる。
ホントだ、すごく美味しい。
味は・・・・そうだな、メープルシロップに近い。
「これは何のシロップなんですか?」
「カラエデという木の樹液だ。
それを煮詰めるとこういう味になる」
「へぇ~、すごい!
これホントに美味しい!
スタンリーおじいさま、ありがとう!」
「ふんっ」
爺さんはおじいさま、と呼ばれてまんざらでもない顔をしている。
「こらこら、アリス、そんなに軽々しく呼ぶんじゃない」
「ごめんなさ~い。
なんか楽しくってつい」
えへへ、と笑う。
「それでお前たち、今日はどうじゃった」
俺たちは今日の出来事を話した。
スタンリー爺さんは黙ってきいていたが
「ふむ、明日から武器を返してやろう」
と言った。




