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93.夢の日々
四角い天井に目が覚める――――また夢が覚めてしまったのか。
クーラーの風、めまぐるしく回る車、静寂な部屋に波立つのはそんな無機物音ばかりだ。
腹が減っているみたいだ。
腕が細くなっているような感覚がある。何か吸い取られるような。
だけどどうしてもまた寝たくなる。
空腹感よりも眠気が勝っているからではない。むしろ眠気なんてほとんど無くなっている。でもどうしても起きたい気がしない。
このまま餓死してもそれで夢が見れるというだけだ。
コバエが一匹、周りを飛んでいる。あと半年たつ頃には数えきれないほどになっているのかもしれない。そのときには完全に死んでいるだろう。
「どうしたの?」
目覚めたときに悲しいのはなぜだろう。
現実に夢の中から沁みだした感情があるのはなぜだろう。
夢の中では忙しない日常を忘れていたのはどうしてだろう。
長閑な麦畑と連ねる山脈。その窓から呟く小鳥のさえずり。
ぼんやりとしていた日の光もここでは眩しい。
今日はあの山へ向かうらしい。遠いな。
靴を履き、服を着替え、また扉を開けた。




