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ノエル・ファンタジー  作者: 霜惣吹翠
【第二章】救う意味
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71.向かうべき方向へ

機械的に歩く兵士の後ろから馬に乗った高位聖騎士を見上げる。

背中に銀色のデカい槍がある、鎧はシンプルに銀色。

顔はハッキリ見えないが、年齢は二十代くらい。目鼻立ちは良い。

一人の兵士がそこへ走ってきた。

「後ろの状況は?」

「はい、謎の魔剣使いがヴィヴール様と。女騎士が第二司教様と戦っておられます」

「司教が?」

「はい」

ちゃんと高位聖騎士に心配されてるのか、ロウエル。

そんな風には見えないけどな。

「どうされますか」

「今は任務優先だ。ヴィヴールと司教に任せる」

おいおいそれは賢明じゃないぞ。

どっちも死んで返ってくることになるぞ。

「い、いいのですか。女騎士は噂のシュバリーエルミエールですよ」

「それがどうした」

兵士の意見に全く動じない高位聖騎士。

その一徹した様に兵士はわずかに震えて怖がっているようだ。

「お、女は、ロアマトの子の誘拐した女です。情報を何か―」

「いらん、その女性の情報など不要だ。下がれ」

「は、はい」

兵士は汗を拭きながら去っていった。

どうやらあっちの状況はだいたいわかっているみたいだ。

援軍が行かないのは、ある意味安心できるが。

「どうしたもんか」

「絶対に動かないマンだね。加勢してくれれば屋敷まで走り込める隙もありそうなのに」

「でもそうなったら、あっちが危ないだろ」

ロイバが真顔で俺をじっと見てくる。

なんか変なこと言ったか。

「今はミアちゃんを救出することが優先だよ。あっちはあっちに任せておけばいいよ」

「でもそれじゃ―!?」

視界が真っ白に。

堪らず目を閉じるが、まだ薄く白い。

「な、なんだ、あれは!?」

「眩しくて見えねえよ!」

兵士たちが何か言ってる。あたりが騒がしくなってきた。

手をかざしながら、ゆっくり目を開けていく。

「あれは……」

「太陽だ。太陽が南にあるよ」

赤く黄色い巨大な丸。

その輪郭に息吹く灼熱の帯、肌にぶつかる熱が痛い。

ブレイブの召喚したんだろう。

「た、大変です! 謎の球体らしきものが―」

「わかっている」

高位聖騎士もさすがに止まって、有るはずのない太陽に目を向けた。

ただ、慌てふためく兵士とは対照的にあまりにも冷静だ。

「……仕方ないか」

「ど、どうなされますか」

「一同、聞け!」

高位聖騎士は馬を完全に軍勢のほうへ向け、大きく声を張った。

その一喝で、飛び交っていた声が止んだ。

「これは奇跡ではない。皆は名誉あるロアマトの戦士である。ゆえに恐れることはないのだ」

「しかしあれはどう考えても奇跡の規模ですよ!」

「山賊程度ができる技じゃない!」

再び葛藤と叫びで場は埋められていく。

それでも灼熱の光は関係なく、一面に強くぶつかっていた。

「静まれ! 今から命令する!」

その声が出るとすぐに止みそうにもない声が消え失せた。

あまりにもハッキリと静まった。

「あれは放っておけば、地を干し、焼き尽くすだろう。それほどにあれは驚異的である。ゆえに全ての軍勢を用いて、あの忌々しき太陽を破壊する! これは天明だ!」

さっきまで喚き散らかしていた空気が一変、歓声と士気に溢れている。

なんなんだこの空間は。

「シユウ、今だよ。今がチャンス!」

「あ?」

こっそりと忍び足で前に進んでいくロイバ。

武器を掲げる軍勢はまったく気づいていない。

俺はロイバの後ろを走っていく。

「すごいうるさいな」

「耳を塞いでも足りないね」

ここまでに高位聖騎士ってすごいのか。

熱狂的すぎるぞ。

やっぱりかなり強いのか―ってそうじゃない。

「おい!」

「うわ! なに?」

肩を掴んで止めようとしたが、ロイバは転んだ。

お尻を撫でながら俺を見上げる。

「聖騎士が加勢しに行くってヤバいだろ。完全に潰しにかかってる!」

「はぁ……シユウ、いい加減にしなよ」

お尻を叩きながらロイバは溜息をついて言った。

なんでそんな適当でいられる。

ソフィが死んでもいいのか。

「行くよ」

「待てって!」

颯爽に走っていくロイバに声を飛ばす。

ロイバはゆっくりこちらへ振り向いた。

「姉貴が負けるって? 大丈夫だと思うよ。僕は」

そう言うと、高位聖騎士の隣を迷わず真っすぐ、ロイバは駆け抜けていった。

軍勢が整列して回れ右をした。太陽を目指して歩き出していく。

肩はぶつからず、嘆く声もない。ただ横を兵士たちが通り過ぎていった。

「カッコつけんなよ!」

高位聖騎士が真横を通っていく前に、俺は地面を蹴って走り抜けた。

もう後ろは見ない。

白く眩しく照らされる屋敷へ一直線に向かって行った。


もう71話も書いてるのか。

凄いな。

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