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ノエル・ファンタジー  作者: 霜惣吹翠
【第二章】救う意味
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61.渦の魔剣、ボルティセ

灯台は周りに光を放つから目立つものだが、今は周りよりも暗いからよくわかる。

てか寒すぎだろ、潮風が殺す気か。

「こうやって見ると大きいですね」

「そうだねミアちゃん、上が見えないよ」

下を向きながら言うなロイバ。

方向音痴なのはソフィだけで十分だ。

「……なにみているのよ?」

「いや、別に」

武器を持ってないくせに怖いのは何故だ。

素手でもソフィは強いということが直感で分かる。

「ここにシユウ君の魔剣を買った魔術師がいる。皆さん、気を付けていきましょう。相手は恐ろしい人かもしれません」

ロマーン、足が震えてるぞ。

こいつも丸腰じゃねえか。

戦闘になったらどうするんだよ。

「行くわよ」

「ああ」

俺たちは聳え立つ魔塔に足を踏み入れた。

こうは言ってもただの灯台だけど。


張り巡らされた地雷、突然現れて壁を溶かす光線、的確に頭上を狙う鉄球。

いや、普通に魔塔じゃねえか。

誰だよここが灯台とか言ったやつ。

「な、なんでしょうか。顔に何かついてます?」

「別に―うわ!」

危なかった、今度は落とし穴かよ。

いきなり古典的なトラップだな。

「これはシンプルな罠だね。逆に意表を突かれたよ。まさかこのロイバ様を罠に……」

「シユウ、置いて行きますよ」

「ああ、そうだな」

「え、いいんですか。シユウ君」

「ほっとけ、あんなの」

「……あれ? ちょっと~?」

俺たちが来ることを想定しているから罠が張られているのだろうか。

でもそんなのわかるわけないよな。

もしかして仲間の中に―スパイが!?

そんなわけがない。

「だから、僕になにか言いたいことがあるんですか!」

「いや、別に」

なんとなくロマーンを警戒しつつ、俺たちは先に進んでいった。

あと、「僕が黒幕かもよ~」と後ろで鳴り響く怪奇現象は忘れることにしよう。


相手が魔術師だけあって、魔法っぽい仕掛けばかりだ。

でもそれはあんまり苦痛じゃない。

一番嫌なのはこの階段。

「はぁ……はぁ……どんだけ長いんだよ」

「ほらシユウ君、頑張りましょう」

なんでロマーンも体力あるんだよ。

お前は料理人だろ。

「シユウ、置いて行きますよ~」

「この野郎。」

異世界から来た俺が提案しよう。

灯台にもエレベーターをつけた方がいい。

エレベーターがないなら魔法でどうにか代用してくれ。

「シユウ、あと少しで最上階に着きますよ!」

「もうちょっとだけです! 踏ん張りましょう!」

「シユウ、急ぐことないさ。先に展望台で海を眺めてるよ」

「早くしなさい、遅いわ」

ワクワクしているミアの声、温かいロマーンの声援、ロイバの雑音、ソフィの冷めた声。

一番よく聞こえたのはソフィの残酷さだった。

だからちょっとイラついて登りきる。

「はぁ…はぁ……きっつい……」

「あれくらいでへこたれ過ぎだわ」

登ってもこれか。

くそ、こうなったのも全て俺の剣を買ったやつが悪い。

もうこの恨みを魔術師にぶつけるしかない。

「よし、開くよ!」

「ちょっと待ってください、心の準備が!」

「じゃあ待つよ」

「開けるに決まってるだろ、てか開ける!」

忌々しい扉を殴り飛ばす。

涼しい風と共に薄暗い光が差し込んでくる。

「14分23秒、まぁまぁといったとこかな」

青い衣、右手に本、左手に時計、そして壁に立てかけられた俺の魔剣。

俺たちが来たことを驚くこともなく、冷静な青年は机に座っていた。


数は一人。

武器は持っていないみたいだ。

広さは割とあるか。

「さて、君たちが求めているのはこの剣かな?」

「ああ、そうだ」

魔剣が宙に浮いてる。

ドヤ顔して魔法使うな。

「……お金ならあるから、買い戻させてほしい!」

「ロ、ロマーンさん!? その大金はなんですか!?」

「盗んだのは僕たちだから、これくらいは」

魔剣ってそんなに高いのか。

知らなかった。

てかなんでそんな大金持ってるんだ、ロマーンは。

「……残念だけど、渡す気はない。帰りたまえ」

きっぱりそう言い、男は本を読みだした。

まったく応じるつもりはないみたいだ。

それはそれでいい、だが気に入らない。

敵が目の前にいながら平然と本を読んでいることが。

「だったら奪うまでだ!」

「おお、シユウも海賊らしくなったね!」

海賊じゃないが、もともと金なんて払うつもりはない。

ここまで来るまでにお前は俺の敵になっているからな。

俺はアーミングソードを抜いて斬りかかっていく。

「はぁ……無駄なことをする」

奴は座ったまま、魔剣を右手に持った。

まずい、あっちが丸腰だったから突っ込んだのに。

「でも遅いぞ!」

もうすでに距離は詰めた。

立ち上がらなければ、剣は振れない。

攻撃は俺のほうが速い。

「もらった!……あれ?」

なんか体の動きが鈍くなっていく。

というか、ゆっくりになっている。

「嘘だろ」

刃も徐々に減速していき、奴の首元寸前で完全に止まった。

「何が起こって―!?」

今度は後ろから何かに引っ張られていく。

一体何なんだよこれは。

地面に着いた足が離れ、何かに急速に引きずり込まれていく。

「止まった?」

宙に浮いたまま止まった。

でも体は自由に動かない。

「これは君の剣のはずだ。それなのにそんなに驚くことあるか?」

「なんだと?」

奴は俺に魔剣を向けたまま、そう言い放った。

ドヤ顔がムカつく。

「ねえねえ、宙を浮くってどんな感じなんだい?」

「近づかない方がいいわ」

てか本当に動かない。

指先でさえも。

「……魔剣は太古から存在する特殊な能力を持った武具のことである。それゆえにその多くは遺跡で発掘される」

「えらそうになんだよ!」

「馬鹿なシユウ君に教えてあげているだけだ。魔剣というものについて」

なんで俺の名前を知っているんだ。

もしかしてこいつ、シュロムだったのか。

俺たちをここにおびき寄したってことかよ。

「ミア、離れないで」

「え、ええ」

アイツの狙いはミア。

ソフィも構えているな。

「魔剣にはいろいろな能力があるが、最も基本的な分類は属性、付加、補助、特殊の四つ。これは魔法においても……」

話が長いしわかりにくい。

てかどうでもいい。

「……属性には火、水、風、雷の基本四属性、その他に熱と凍がある。付加については……」

指先は動くようになっているし、時間で動けるようになるようだ。

時間稼ぎになるならまぁいいか。

「話が長いわ」

「シュバリエルミエール、人の話は最後まで聞いた方がいい」

難しいこと言われても困る。

だけど今はもう少ししゃべらせておいてほしい。

「……基本四属性には上位互換がある。火なら炎、水なら氷、風なら嵐、雷なら神雷。だがそれは役の進化でしかない。いわば威力をあげるだけだ」

「なるほど。火よりも炎のほうが熱いし、水よりも氷のほうが冷たいってことだね」

「……? そんなこと、どうでもいいわ」

役の進化。

ああ、こういうこと好きな奴っているよな。

理屈は好きじゃない。

「火は燃え広がる発散、水は留まらせる静止、風には回転、雷には平行。これら分けの属性がある。これを進化させることによって基本四属性は変貌する」

分けの属性。

どうやら属性は役と分けの二つで構成されているのか。

例えば火の役は変化、分けは発散。水の役は物質的、分けは静止。

とかだろうか、どうでもいいな。

「火は爆発、水は重力、雷は線や光、そして風は渦になる―渦は物体をある点に引き込んでいく」

「引き込んでいくだと?」

「勘が悪いのか、頭が悪いのか。気づいていないようだな、シユウ君」

ムカつくなやっぱり。

体が動けば、ぶん殴ってやるのに。

腕を上げようとしてもなんか、引きずり込まれるし。

「……渦の魔剣ボルティセ。それがこの魔剣の名だ」

「ぼるてぃせ? 渦の魔剣? なんだそれ」

アイツのムカつくドヤ顔が崩れた。

ここまで説明しても無駄だったな。

「はぁ……まったく、興味なしって感じか。よかったよ、ボルティセがこんな馬鹿から解放されて」

「うるさいな、さっきから―」

「そう。それだけ喚いても無意味さ―!!」

一面が光に覆われた。

この声はエースか。

しかもギザギザとしたこの音は。

「喰らうがいい。神の裁きを!」

「嘘だろ」

この感じは神雷が飛んでくる。

しかもこれは複数だ。

「くそ、動けない」

まだ渦が止まらない。

これじゃあ避けられない。

「ああ、最悪だ」

音が近づいてくる。

渦のせいで神雷が引き寄せられている。

「まずい」

海を照らす、夜中の灯台。

その光は聖騎士の鉄槌によるものだった。


だいたい魔法の概念とか、細かい世界観とかって説明的なだけになってしまって意味がないと感じてしまっている。

わかったところでどうしようもないし。


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