60.ちょっと待って、俺も残りたい!
エビフライ、唐揚げ、豆腐ハンバーグ、プリンなど。
異世界にきてから見たこともなかったけど、存在していたのか。
懐かしいけど、少し味が変わっていたな。
「口に合いませんでした?」
「いや、そんなことはなかったけど」
食器を片付けながらロマーンは微笑みながら聞いてきた。
流し台には山ほどの皿とそれを洗うウェイトレスがある。
さっきの子供たち全員分もあるからな。
「腕はまだまだですから、修行あるのみ。でもいつか君に美味いと言わせてみせるよ」
「あ、ああ……」
なかなかポジティブなやつ。
店もLEDみたいに明るいし、この感じは久しぶりだ。
なんか落ち着く。
「でな、俺言ってやったんだよ。オムレツにマヨネーズは合わないって」
「それはそうだよな!」
「だけどそれもありだと僕は思うよ?」
「な、なんだこいつ、一体いつからそこに!?」
「気持ちわるっ!」
「そんなこといわなくてもいいじゃない、ほら」
「あれ、消えた!?」
くだらない会話をしている少年たちもここにいる。
ボロボロの服だけど普通に綺麗な店の席に座り、笑っている。
「ここはいい場所だな」
「そう思うかい、シユウ君」
「お、おう」
緑色の水。
この香り、緑茶か。
そんなものまであるのかよ。
「おお、これは懐かしい味だ」
「懐かしい味?」
やばい口が滑った。
この世界じゃ、転生者は告発されるからな。
「懐かしい味ってどういう―」
「そ、それよりも、なんでこの店を作ったんだ? いい店だよな、ここ」
「あ、うん、ありがとう」
ふぅ。
なんとかなったか。
「今はあんなに元気だけど、僕が初めてこの町に来た時、あの子たちは死んだ目をしていたんだよ。僕はそれが嫌だったんだ」
ロマーンは自分の分の緑茶を持って、俺の隣に座った。
その中で茶柱立っている。
「でももっと許せなかったのはこのことを無視する大人たちだ。なんで平気でいられるんだって、心が痛まないのかって。」
「………」
「だけど大人を責めても仕方ない、人間ってたぶんそういうものだしさ。だから僕は店を作ったのさ。お腹くらいは満たしてあげたいから」
「……立派だな」
店内を走り回っている子供たちを眺めて、ロマーニは微笑んでいる。
そんなロマーンを睨みながらウェイトレスは皿を洗っているが。
「だけどこう思えるのもこの能力があったおかげだろうけど……」
「能力? それって―」
「ロマーンさん! 魔剣がどこにあるか分かったよ!」
扉を壊すほどに乱暴に開け、少年が走ってきた。
ロマーンはコップを机に置き、茶柱が揺らぐ。
「若い魔術師が買っていったって! やりましたよ!」
「そ、そうなんだね。で、その魔術師は―」
「ちっちっち、その情報も掴みましたよ。若い魔術師は灯台にいます!」
「灯台って、町の外れにある灯台のことを言っているのね?」
「あ、そ、そうです……」
ソフィが話しかけた途端、少年のテンションがあからさまに。
あの怖気ている顔の脳裏には、さっきの風景があるに違いない。
「うんうん、わかるぞ。その気持ち―うお!?」
「早く行くわよ!」
「ちょっ、引っ張るな!」
いきなり現れたと思ったら、強引な。
「お嬢ちゃん、助かったよ。あの馬鹿がサボっているから」
「いえいえ、気にしないでください。ご馳走になりましたし、本当に―」
「ミアも準備しなさい!」
「え、もう行くんですか!?」
ドタバタしてきた。
ああ夜風、外寒いな。
「あ、あの、ご馳走様でした!」
「ほら、早くしなさいミア!」
「は、はい!」
ソフィ、せっかちすぎる。
まったく何をそんなに急ぐんだ。
ん、灯台ってあれか。
「よし、行くわよ!」
「ソフィ、そっち逆です!」
「……!?」
急がば回れだ。
焦りすぎだろ、いや方向音痴だったか。
「ちょっとー、僕を置いて行かないでよー!」
「普通に忘れてた」
「ひどいこと言うね」
子供がお前のこと嫌そうに覗き見ているけど、何かしたのか。
いや、何となく見当はつく。
「ん?」
「その恰好何?」
「いや、こうなったのも僕の責任がありますし。同行しますよ」
「……勝手にすれば」
ソフィ、やっぱりロマーンのこと嫌いなのか。
明らかに嫌味だ。
ロマーンは気にせずだけど。
「お、おれもついて……いく」
「……相手は闇市を利用した人物、危険かもしれないから待ってなさい」
「で、でも―!」
「わ!」
「うわ、いつからそこに、気持ち悪い!」
「ついて来てくれるなら暇しなさそうだねぇ~」
「……むかつく、ロイバ」
子供をいじめるとか大人気ないな。
てか相手危険人物なの?
ちょっと待って、俺も残りたい。
「じゃあ、あとは頼んだよ」
「いいですけど、明日も営業日ですからね」
「さすがにわかってるよ」
「ああ、そうですか!」
もう戻ってくんなと言わんばかりに、ウェイトレスは強く扉を閉じた。
あとロマーン、何でそこで張り合う。
「お待たせしました。行きましょう」
「え、ええ……」
ロマーンが加わり、一行は満月の明かりに照らされながら、町の外れにある海を暗くしている灯台へ歩き出した。
茶柱の倒れたばかりの緑茶を気にすることもなく、ウェイトレスは残りの仕事にとりかかるのであった。
前話書いてるときに分割したもの。
だから短めになったよ。
ついに魔法使いが現れるよ。
異世界要素がようやっと出てくるという。
60話やってきて・・・・・・




