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ノエル・ファンタジー  作者: 霜惣吹翠
【第一章】レイロンド大陸へ
57/130

55.ストラーダ港へ行くために

ランタンの明かりじゃなくて、夕日か。

あれから草原を歩き、偶然見つけた集落のキャンプ。

そこで煩わしい朝日に目を瞑り、気づけばもう夕方だ。

おんぼろテントの割には、寝心地はよかった。

草原に吹く風も心地よい。

「ふわぁ~」

「大きな欠伸ですね」

「うわ!?」

いつから俺の後ろにいたんだ。

ミアもロイバのように気配を消せるようになったのか。

いや、そんなわけないよな。

「ソフィは?」

「まだテントから出てきませんね」

「そうか……怪我はあったのか?」

「いいえ、治癒の必要もありませんでした」

あれだけの死闘だったにもかかわらず、ほとんど無傷とは。

やっぱりソフィは化け物だ。

だがその化け物も睡魔には勝てないらしい。

「……」

もう集合時間だけどソフィは寝てる。

散歩して暇をつぶすか。

「どこ行くんですか?」

「え?」

「夕飯の準備を手伝ってください」

男も料理するというのは、この世界の常識ではない。

だけど俺はその常識に縛られない転生者。

だから従うことにした。


肌寒い風が鍋から出る湯気と香りを攫って行く。

クリームシチュー。

思ったよりも、美味しそうにできた。

もしかしたら俺は料理の才能があるのではないか。

「おー、これはクリームシチューだね~どれどれ」

「おいロイバ、指入れんな」

「……まずい」

「え?」

まずいだと。

そんなわけないだろ。

味見しても……やっぱりうまいぞ。

「ちょっと、つまみ食いしないでください」

「違うよ、これは味見。ミアちゃんも確認した方がいいよ」

「……まずいですね」

そんな馬鹿な。

こいつら味覚がおかしいんじゃないのか。

「これシユウがやったの?」

「そうですよ」

「シユウ、料理下手だね」

「は?」

この野郎、えらそうに。

お前は手伝わずに寝てただけだろ。

何もしてないくせに。

「これ、なに?」

「あ、ソフィ。おはようございます」

「……こんばんは。これなに?」

「まずいクリームシチューだよ。シユウがつく―ぐぶぅ!?」

「まだ未完成だ!」

そうだ、俺は転生者。

味覚もお前らとは違う。

これがまずいなら、もっとまずくしてやるよ。

「……」

「って、おい……」

ソフィが味見してる。

まだ未完成だって言ったのに。

「……別にまずくないけど?」

「え?」

「ありゃ?……ってやっぱまずいよ!」

「味覚おかしいんじゃない?」

やっぱり俺は合ってたんだ。

そう、たまたまロイバとミアが味覚音痴だっただけ。

なんだよ、もう少しで塩を大さじ5入れるとこだったぞ。

「ソフィってどこ生まれですか?」

「レイロンドの東のほうだけど」

「ああ、そういうことね」

ミアとロイバが目を合わせて頷いている。

ソフィと俺はそれを見て首を傾げるしかなかった。


今日も月は眩い光を放ちながら、俺を見下ろしている。

まずいと言いながらも鶏肉だけは食べ尽くしたミアと、諦めて酒を飲んでいたロイバへの怒りを抑えながらも、夕飯の時間は過ぎた。

そしてソフィは地図を広げた。

「これからのことについて確認するわ。今私たちがいるのはレイロンド大陸の南西よ。私たちが最終的に行きたいのは、この大陸の中央にあるムールハット学院。」

「そうだね。そこで魔法を学び、顔色の悪いあの方を倒すんだよ」

「……ここからムールハット学院に行くには少し遠回りしないといけないの。ここに山があるから」

「そうだね。この山には体長三メートル、白い毛に覆われた二足歩行の魔物がいるからね」

「……勾配が高すぎて越えられないから、こっちから回っていくの。するとここに町があるでしょ」

「ストリートファ―!?」

「ロイバ、さっきから煩いです」

「……ここからまず、ストラーダ港に向かうんだな?」

「そうよ。」

それにしてもムールハット学院、かなり遠いな。

ここまで歩いていくのか。

気が遠くなるな。

「わかってると思うけど、恐らくストラーダ港にもシュロム、敵はいると思うわ。だから―」

「そういえば言い忘れてたことがあったよ」

「なに?」

「敵の狙いはミアちゃんらしいよ。ミアちゃんを誘拐したいみたい」

「ミアを狙っているだって?」

そんなわけないだろ。

弓のシュロムはミアを攻撃してきてたぞ。

それになぜミアを攫おうとするんだ。

「盾のシュロムが死ぬ前に言ってました……」

「なんでミアちゃんを狙ってるんだろうね」

「……やっぱりエースが絡んでいる?」

「―今そんなこと考えても仕方ないでしょ」

ソフィの言う通りだ。

まだ情報が足りないし、わかったところでやることも変わらない。

「ミアを守るだけだ」

「そうだね」

「……あともう一つあるのだけど、その剣は何?」

「え?」

突然、ソフィは俺が握っている魔剣に指を刺した。

剣身に変な模様があるこの剣。

自分と同じ転生者からもらったなんて正直に言っても仕方ないし、どうする。

「それ魔剣よね?」

「あ、ああこれはだな……」

ソフィの目が怖い。

悪いことしてないだろ別に。

「こ、これは、ロイバの船の宝物庫にあったのを盗んだんだよ」

「……そうなの?」

「へ?」

やばい、こんなの言い訳にならない。

とっさに嘘をついたが、これはあまりにもガバガバすぎた。

「うーん、わからないけど。魔剣の一本や二本はあっただろうからね、伊達に海賊じゃないよ?」

「元ですけどね」

助かった……。

ってまだなんかソフィが睨んでくるし。

「今日は冷えるな」

「……まぁいいわ、それじゃあ明日は―」

「本当にいいのかねぇ?」

いきなり横から、デカいリュックを背負ったおっさんが入ってきた。

目がぱちぱちするくらい派手な柄の服を着ている。

「失礼ながら話が聞こえちゃいましてね、あんたたちストラーダ港に向かうんでしょう?」

「……。」

「は、はい、そうですよ」

「だったら、その服装じゃダメだ」

そう言って、おっさんはリュックを漁りだした。

なんなんだこのおっさんは、胡散臭い。

おっさんは気持ち悪い顔を再びこっちに向けるとともに取り出したのは毛皮のフード。

「あっちは寒いよ、その恰好じゃ凍え死んじまうさ」

「そうだね、かなり寒いよあっちは」

「そうだろ、だから売ってやるぞ。ほれ?」

「……。」

おっさんは行商人だったようだ。

金をソフィにせびり、ソフィはそこに数枚の硬貨を置いた。

「どうしたんですか?」

「お姉さん……足りませんぜ?」

「……。」

ソフィがそっぽを向いた。

そういえば、俺たち貧乏だったっけ。

あれ、これヤバいよな。

旅終わるよな。


しかし旅は終わらず、むしろ旅をさせられる羽目になった。

夜もいい時間、欠伸も出てくる。

ああ、嫌だな。

「ほら、遅いわよ」

「はいはい……」

ああ森だ。

目の前に森がある。

いい思い出ないんだよな。

しかもこんな時間に。

「行くわよ」

「……はぁ」

ソフィはご機嫌斜めだが、それを俺に向けるのは違う。

確かにあのおっさんはぼったくろうとしているけど、俺たちだって金が足りなさ過ぎた。

それに防寒着は必要だし。

「遅い!」

「わかってるって」

あのおっさんが言うには、熊の毛皮と引き換えに売ってやるとのことだ。

だから俺たちは夜なのに森に潜っていってる。

出発の日にちを伸ばせばいいと提案しても、エースらに先回りされるから無理だとか。

意味が分からないことを。

「もたもたしてないで!」

「ああ、わかってるって!」

だけどなんで二人きりなんだよ。

なんで俺だけ連れてこられた。

「……はぁ」

いや、消去法か。

ロイバが嫌いで、ミアは戦えない。

俺だってそんなに強くないのにな。

「いたわ」

「ああ―え!?」

デカくないか。

熊がずっしりと一歩一歩出して森を歩いている。

熊を見たことないけどあんなに巨大なのか、足跡だけでも五十センチはあるぞ。

図鑑で見た熊の足跡は二十センチくらいだったよな。

「倒してきなさい」

「ああ、じゃあ俺はここで―え?」

「だから、倒してきなさい」

怒りのあまり馬鹿になったのか。

俺があれを倒せるわけないだろ。

「ほら、早くしなさい」

「いや、無理だって」

「……はぁ、情けないわね」

「え?」

ソフィが俺の手を掴んだ。

嫌な予感がする。

「……!」

「ええええええええ!?」

やっぱり投げ飛ばしやがった。

って大熊にぶつかるぞ。

てかこっち向いた。

「グワアアアアアアアアアア!」

空気が揺れて、はじき出されそう。

むしろ、そうなってほしい、逃げられるなら逃げたい。

「グルワアアアアアアアアアアア!」

「っくそ!」

やるしかないのか。

なんでだよ。


剣を握り、俺は熊と戦うことになった。

とはいえ避けるので精一杯だ。

なんなんだよ。

「攻撃しなさい!」

「は?」

何を無茶なこと。

あれが走るだけで地面が揺れてんだぞ。

怖すぎて無理。

「死にそうになったら助けてあげるわ。だから攻撃しなさい!」

「今が死にそうなときだろ!」

ああ、最悪だ。

逃げても逃げても追ってくる。

すごい存在感、噛みつかれてもないのに体が痛くなってくるほどの迫力。

「くそ、どうするか」

「……まったく、しょうがないわ―」

「ここか!」

隙を見て、こっちに走ってきた熊に剣を振った。

熊は木に引っ張られるように逸らされ、木に激突。

そこを攻撃だ。

「グクゥ…………」

「なんとかなった」

危ないところだったけど、倒せた。

割と俺も強くなってきたな。

「……帰るわよ」

「あ、ああ」

なんかソフィ、怒ってる。

なんでだ、俺が勝って不服かよ。

そんなに恨まれるようなことした覚えないぞ。

「……」

「おい、なんで俺を戦わせたんだよ。時間かかっただけだろ」

「……これからのためよ」

「は?」

ソフィは熊の死体を引きづっていく。

後ろから話しかける俺のほうをまったく見ない。

だから俺は前に出て止めるしかない。

「これからってなんだよ」

「はぁ……修行よ。敵に対抗できるようにあなたを鍛えようとしたのよ」

「え?」

「だけど、しばらくは不要のようね。今日はもういいわ」

この女。

なにからなにまで勝手な。


引きづられ、捌かれた熊に同情しながら、俺はキャンプに戻った。

防寒着を手に入れ、旅の準備は整い、明日出発。

だからまた寝るのだが、ああ、なんか眠れない。

どうやってあの女を懲らしめるかを想像していたら、いつの間にか眠っていた。


次回からストラーダ港編ということで、今回はそのための説明回です。

できるだけキャラの情報を入れれたはず。


そしてようやっと物語を書ける。

ストラーダ港編は、情緒的な感じにしたい。戦闘控えめの。

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