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ノエル・ファンタジー  作者: 霜惣吹翠
【第一章】レイロンド大陸へ
53/130

51.何も斬れない能力×すべてを斬る妖刀

冷たい砂煙の中に銀色の輝く刀。

それを持って現れたのは、皴一つない和服と夜でも白く目立つ髭の老人だった。

その後ろは更地、その奥に紺色の海が見えている。

「さて、始めるとしますかな。」

この高い壁と町、それを作った弓のシュロム。

そこに無限とも思われる兵隊を動かしていた盾のシュロム。

やっとの思いで倒したのに、まだ敵がいたのか。

「下がって」

ソフィが剣を構えてアイツを睨んだ。

でもその剣の先は震えている。

「おい、大丈夫―っ!?」

体が動かなくなった。

指の先すらまったく動けない。

「……」

あいつのせいなのか。

なんだあれ。

感情的じゃなく、だからといって無感情というわけでもない目つき。

でもあまりにも変わらない、無駄がない。

恐くて動けないのとは違う、もっと何か未知の何かだ。

「退きなさい」

「あ、あれ……」

ソフィに押されたら治った。

なんなんだよ、今のは。

「小僧、その女の言うことを聞いた方がいいぞ。」

布で刀身を拭っている……。

ソフィが剣を構えているのにもかかわらず、あんなに冷淡にしてられるのか。

「……さて、これをやろう。」

アイツは緑色の瓶をソフィにほうり投げた。

あの瓶、さっきの回復薬と似ているような。

「いらないわ」

飛んできた瓶をソフィは剣で打って逸らす。

瓶は地面にぶつかり、音を立てて割れた。

「正々堂々と行こうとしたのだがね。」

「結構よ」

手入れを終え、アイツはソフィをじっと見ている。

それに対してソフィは剣を握りしめ、アイツのほうを睨んでいる。

ソフィの剣はやっぱり震えてるし、何度も柄を握りなおしてるし、顔色もいつもと違う。

でも指先が動いてるから、凄い。

あの目に狙われた瞬間に動けなくなった俺とはやっぱり違う。

「では、いくとするかね―。」

消えた。

え、消えたのか。

声はあそこから聞こえてた、でもアイツはいない。

「!?」

すでにソフィの一歩手前で刀を振りかぶっている。

視界から消えてたんじゃない、すでにアイツは視界の中にいた。

あまりに違和感のない自然な動きだったから気づかなかったのか。

でもかなり速かったぞ。

「……!」

ソフィの反応が遅れていた。

恐らく避けようとしてたのだろうけど、ソフィは攻撃に備えて、剣で身を守っていっている。

「……なによ、それ」

「ほう……さすがだな。」

なぜか、刀が近くまで来てソフィは体勢を変えた。

かなり姿勢は悪いし、すでにアイツの攻撃がぶつかる寸前だ。

「っん!」

それでもソフィはギリギリで上に避けていった。

やっぱりすごいな。

そのままソフィは屋根の上に着地し、すぐに剣を構えた。

でもアイツはそれを下から見ているだけだ。

「すでに斬ったぞ。」

「……!」

下を少し見た後、ソフィは屋根から飛び降りる。

それから間もなく、家々が真っ二つになって滑り落ちていった。

「嘘だろ?」

一体いつ斬ったんだ。

刀を振ったのは一回だけだったよな。

わけわからないぞ。


あの老剣士、何者なの。

まったく緊張してないし、動きに無駄がない。

しかもいくつも技があるようだわ。

「どうした。」

「……っ」

今の攻撃だけでわかったことが少なくとも三つあった。

俊足、私と同じように足で蹴り出す加速。

空斬り、鋭く空気を斬ることで周りのものを切断する剣技。

圧倒的、そして異様な切れ味。

「おい、なんだよ今の」

「離れなさい、私の近くにいると危険だわ」

「あ、ああ……」

体が少し鈍くなっている。

やっぱり、老剣士が私を睨まれてるわね。

「もういいかね。」

「……ええ」

「…………。」

向かって来ない。

なぜか構えた剣を下ろしている。

「……先に言っておこう女よ。怖気ているぞ。」

「―!」

来る。

いや、もう来ている。

さっきと同じ俊足で、私のほうへ飛んできている。

あまりにも静かすぎて見逃しそうになった。

「っ……!」

やっぱり音が無い。

左から銀色に輝く刃が向かってくる。

視覚ではわかっているのに、剣の気配が無さすぎる。

さっきは気配を優先してたせいで、避けるのが遅れたけど、見て避ければいい。

「甘いぞ女。」

「―嘘でしょ?」

私が上に飛ぶ寸前、老剣士の刃が瞬時に止まった。

そのまま刃は上に飛んでいく私を捉えて向かってくる。

フェイントだったって言うの。

「でも間に合う!」

あの刃のほうが少し遅い、私に届かない。

でも何か引っかかる。

目の前に上に飛んで行ってから斬るのに、なぜ老剣士は上に飛びながら斬り上げない。

私だったら絶対にそうするし、そうすることで確実に仕留められるのに。

「……間に合った」

刃は私の足元を通り抜けていった。

危なかったわ。

……あれ、遅くなってる。

いつもより上昇スピードが遅い。

いや、これはもしかして。

「若いな。」

「―!?」

体が引っ張られる。

感覚と合わない、もっと上に飛ぼうとしたはずなのに。

なんで落ちてるの。

「……。」

もう剣を構えている。

このままだと、間合いに落ちた瞬間に斬られてしまう。

だったら攻撃するしかない。

刃が来る前にその手を斬り落とす。

「……?」

構えた瞬間、老剣士は一歩引いた。

あの距離じゃ、私に攻撃は届かないし、私も同じ。

いや、違う―もしかしてこれは。

「―!」

老剣士が剣を振るった。

その刃は私には、まったく触れることはない。

でも、あれは空振りじゃない。

自分の前方の空気を斬り飛ばす、空斬り。

薄く鋭い空気の刃を飛ばしたんだ。

「でも、それなら!」

その刃を断ち斬るしかない。

薄い刃なら剣で折ってしまえばいい。

「ほう……。」

「んっ―!?」

硬い。

斬れない。

しかも周りの空気を取り込みながら前進することで加速し、威力を上がっていっている。

「―なにこれ」

私はうまく空気の刃を弾いて避ける。

でもその反動で大きく飛ばされた。

なんなのあれ、どんな剣技よ。

「っ!」

「……今のは面白かったぞ。」

起き上がる前に、老剣士は私の前にいた。

まったく気配はなかった。

「土壇場で避けきるとは。粗削りではあるが、楽しめそうだ。」

「あんた趣味悪いわね」

「そうかな。」

「―!」

どこだ。

前じゃない。

右手が硬直した。

「そっちか!」

すでに老剣士は右横で、剣を振るおうとしていた。

気配を消すこともやっぱりできるのか。

「でもそれなら」

私は後ろに飛んだ。

仮に空斬りをしてきて、前方に斬撃を飛ばしてきても、剣で弾いて飛ばされれば攻撃自体は回避できる。

「遅い。」

「―!?」

いきなり速くなった。

振りながらあんなに速度を変えることができるのか。

しかもとっくに剣の速さじゃないし、振りが滑らかすぎる。

本当にあれは剣なのか、そもそもあれは物質なのか。

「外か。」

ギリギリ。

でも刃は当たらなかった。

「っ!」

空気の刃が向かってくる。

これは剣で弾けばどうにかなるから、どうってこともない。

私は空気の刃に剣をぶつけた。

「!?」

なにかおかしい。

剣に伝わる振動がブレている。

空気の刃の威力が上がってるからか。

いや、それだけじゃない。

「おや。」

「―っく!」

うまく空気を弾くことができず、大きく飛ばされた。

力をうまく発散できない。

体が、骨が軋んで痛い。

「ったい……なんでこうなった」

地面に激突した衝撃が体に入り混じる。

それに紛れて手から離れた剣が転がった。

「なかなかしぶといな。」

「……うるさいわ」

やっぱり、なぜか倒れていても攻撃してこない。

私が起き上がっても構えないし。

こっちが構えるまで待ってる。

「……」

「早く剣を持て。」

「……むかつく」

私は老剣士に背を向け、剣を急いで拾いに行く。

敵がここまで舐めてくるなんて屈辱だわ。

この剣を持って戦ってきてから、こんなことは一度もなかった。

「……なにこれ」

剣の刃が少し切れてる。

壊れて使えないほどじゃないけど、かなり丈夫なはずなのに何で切れたの。

まさかさっきの剣があたっていたのか。

まったく感覚がなかった。

「もういいかね。」

「……」

あの老剣士、本当に何者なの。

いろいろな技を使いこなしているうえに極めているし、家を真っ二つにするほどの剣の切れ味、そして剣の速さを逸脱した高速の振り。

あの剣のせいなの。

「そんなにこれが気になるかね。」

「……ええ、そうよ」

「そうか。これは刀だ、それも妖刀の部類。」

「妖刀?」

魔剣の一種なのかしら。

やっぱりこの老剣士もシュロムなのね。

「これはどんな硬いものでも斬れる……そのかわりに振れば死んでしまうほど疲れるのだ。人間が扱えるものではない。」

「……?」

「破壊した分のエネルギーは使用者が支払うのだ。」

この人、ボケているの。

それを何回も振ってきたでしょ。

「だが私には効かない。なぜだかわかるかね」

「あなたが人間じゃないってことかしら?」

「……それは面白い回答だが不正解だ。正解を教えよう」

老剣士は刀を構えた。

刃は月から落ちてくる白い光を弾いて、銀色に輝いている。

「!?」

家の壁で刃が泳いでいる。

というか透けている。

「……そういうことだ。」

「え―!?」

老剣士はその家を斬り崩した。

軽く片手で振っただけで。

「我が能力は“何も斬れない”というものだ。」

……何も斬れないって。

でも今家を。

「我は呪われていた。ここに来て何も斬れなくなったのだ。いろいろと不便の上、弱者として生きるしかなかった。……だが、この呪われた能力ですらも妖刀は斬ってしまったようだ。」

「それって―」

「何も斬れない能力と全てを斬る能力が合わさったとき、何が起こったか。」

老剣士は重い刀を滑らかに振っている。

「矛盾だよ。」

「……?」

「何も斬れないとは、斬ろうとしてもエネルギーを消費できないということ。そう考えればわかるかね。」

「……嫌なことを言ってくるわね」

斬るという行為が禁じられ、それに伴うエネルギーが無視される。

斬るという行為を許す代わりに、それに伴う膨大なエネルギーを消費する。

それがぶつかり合ったら何も起こらないとはならないのか。

「我が能力は、“全てを無限に斬る”ということになる。」

刀のシュロム。

あらゆるものを無制限に斬ることができる能力。

なによそれ。


最終決戦。

最後の敵は刀のシュロム。

完全にチートかつ、ソフィの上位互換です。

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