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ノエル・ファンタジー  作者: 霜惣吹翠
【第一章】レイロンド大陸へ
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39.地を貫く矢

整って巨大な足音が通り過ぎていった。

俺たちはレイロンド大陸の西にあるストラーダ港を目指していたはずだ。

それなのにここは地図にも載ってない謎の港。

海流のままたどり着いたわけだが、なんかありえなくないか。

未知の発見ってやつ?

「シユウ、考え込んでないで作戦会議ですよ!」

「そうそういい案待ってるよ?」

俺たち四人が今いるのはこの港町の倉庫。

外を行進している兵隊から隠れながら様子を見ている。

「状況を確認するわ」

ここは恐らくレイロンド大陸の西南西にある存在しない港。

この港の四方は巨大な壁で囲まれており、よじ登るのもできないほど高く、壊せないほど分厚い。

そして外には数百を超える兵隊が歩いている。

「絶望的な状況だねぇ~」

「なんでうれしそうなんですか」

外を出歩くことも許されないから、逃げ道を探すこともできない。

完全にこれは封じ込めにきてる。

「罠だったわけね」

「モテモテだね、僕たち」

場違いなロイバに対して俺たち三人は真顔で返すしかなかった。

どんだけこいつはポジティブなんだよ。

「相手は恐らくシュロムよ。無人島女と同じような力を持っていると考えて動かないといけないわ」

「だったらあの兵隊全部がシュロムってやつか?」

「そんなわけないでしょ」

何がそんなわけないのか。

俺にはわからない。

「シユウ、ふてくされてる」

「いい? 兵隊はあまりに機械的に動いている。たぶん兵隊自体が何かの魔法だわ」

「だけど、数多すぎだよ?」

「それがシュロムってことだって言ったでしょ」

頭を抱えているソフィ。

俺と同じだ。

「シュロム相手は正面から戦っても負けるだけだから、逃げるのが得策なのだけど……」

完全に閉じこめられてる。

戦うしかないか。

「姉貴! まずは敵の数を確認するのがいいと思います!」

「はぁ……どうやって?」

俺は満面の笑みをソフィに見せつけた後、ミアに声をかける。

やったぞ。

「ミア、探知できるか?」

「できますけど、外の兵隊だけですよ」

「ってことは兵隊全部倒せばいいってことか」

兵隊全部倒せば勝てる。

単純なことじゃないか。

って無理だろ。

「それくらい、わかってたわ」

ソフィが呆れた視線が突き刺さった。

せっかく一泡吹かしてやろうと思ったのに。

「ミアちゃん探知できるの!?……あとでいい話があるんですがぁ……?」

「……。」

「無視されたよ。」

そもそもミアはこの広い港町全体を完全に探知できないんだった。

でも近くなら精度は上がっていくよな。

「作戦があるんだけど」

「作戦があるのだけど」

ソフィと重なった。

俺は手を振って譲る。

「私とミアが……」

ソフィの作戦は俺の考えたものと全く同じだった。

外の兵隊の気をソフィが引く。

そのうちにミアと俺とロイバの三人が町を移動し、ミアの探知でシュロムを見つけ出す。

見つかったら再びここで落ち合うという感じだ。

「よし、じゃあいこう!」

「なんでお前が仕切ってんだよ」

作戦開始。

最も生き延びるのに正解な策はこれなのだが、どうしても気になることがある。

それはソフィが一人になってしまうところだ。

俺がいても足手まといだってわかってる。

でも心配だ。


路地裏を音立てずに急いで進んでいく。

ゴミ箱とか瓶とかの障害物がないからだいぶ歩きやすい。

兵隊たちは表のほうしかいないというのもある。

「ミアちゃん、どう?」

「特に変わりないですね」

「そっか」

「!?」

雷鳴のような音。

それもいくつも向こうから。

「シユウ! 伏せて!」

「あ、え?」

強く鋭い風に尻もちをついた。

路地の隙間から出てきたその風に怒る暇もなく、ものすごく振動が伝わってくる。

表通りの兵隊たちがさっきの音に反応して進行方向を変えたようだ。

「ソフィが気を引いてくれたみたいです!」

「あの方向は町の南西だね」

なるほど。

ソフィも敵がいればわかるはずだ。

だからソフィのいる南西以外を探せばいいってことか。

「よし、じゃあまず北西から行くよ!」

「待て。ロイバ」

いくらソフィが強力とはいえ俺たちは全員で4人だ。

もしかしたらロイバの存在を知らないことも考えられるから、戦えるのはソフィだけだとあっちが思っている可能性が高い。

それなのにこれだけの兵隊を動かすのは相当慎重な奴に違いないぞ。

「北東だ。そこから行こう」

「なるほど、じゃあそうしよう」

「???」

俺の考えを察してくれたのか、頷きながら答えるロイバ。

ミアは首を傾げてじっと俺を見てくるが、おそらく考えはわかっているだろう。

「なんで説明しないんですか……?」

どちらにしても北東は兵隊が一番少なくなっているはず。

なぜか頬を膨らませているミアを無視しながら移動していく。


遠くで見ても大きかったけど、近くで見ると倍以上に大きいなこの壁は。

「20メートルくらいあるんじゃないのか」

「……」

俺たちは町の北東、東の壁が目の前にある。

これだけデカい壁があるのに地図にない港だなんて信じられないな。

「……?」

おかしい。

ここに来てからミアだけでなく、ロイバまで頬を膨らましてる。

なんでロイバまで怒ってるんだ。

「ミアちゃん、いた?」

「いないです!」

「そっか!」

もしかしてこれだけ歩かせたのに何もないからって不機嫌になってるのか。

いや、そんなわけないよな。

「あー、足がガタガタだよー!」

「私もです!」

「いや、二人とも納得してただろ」

「私は納得してないです」

いい読みだと思っていたのに、見当違いだったのか。

一体どこにいるんだろう。

あとなんでロイバは笑ってるんだ。

「どうした?」

「いいこと思いついたよ」

「は?」

真上を向いて塔のような壁を見ているロイバ。

……なんか嫌な予感がしてきた。

「もしかしてお前、この壁を上るとか言わないよな?」

「うん、登ろう。」

いつもロイバには頭を抱えさせられる。

これを本気で言ってんだからな。

「本気ですか?」

「だってこの上に行けば、敵の位置が丸わかりだよ?」

「確かにそうですけど……」

20メートルはあるであろう壁をどうやって上るって言うんだ。

そんなことができたら外に逃げれてるぞ。

「どこかに壁の上に通じている塔のようなものがあるに違いないね」

「はぁ……」

キョロキョロしてその塔とやらを探しているのか。

どこまでロイバは気楽なんだ。

「???」

「ミア、どうしたんだ?」

「いえ、鳥ですよね」

ミアが北の壁の上のほうをじっと見ている。

何か探知に引っかかったようだけど、壁の上までは視認できないから何なのかはわからないな。

「あれぇ?」

キョロキョロしていたロイバの目もそこに止まった。

本当に塔でも見つけたのか。

ロイバは目を凝らしている。

「鳥かなぁ?」

「見えるのか?」

「うーん、ギリギリかな」

この距離を認識できるとか凄い視力だな。

さすがロイバ。

……いや、待てよ。

「シユウ? また下向いて考えてる」

恐ろしいことが頭をよぎった。

あまり考えたくない。

それは最悪すぎる。

そんなことがあれば敵うわけがない。

「ん?」

なんか風を切る音がする。

しかも近づいて来てるような。

「あれは……鳥じゃないよ! 敵だ!」

「!?」

ロイバのその言葉に顔を上げようとする寸前、俺は矢を見た。

俺を正確に狙いすまし、鋭く向かってきている矢があった。

しかもそれは下からだ。

「シユウ!」

矢は空に上昇していった。

ミアが俺を突き飛ばしてくれたおかげで中らず済んだのか。

「ちょっと、抱き合ってる場合じゃないよ! また撃ってくるよ!」

「まじかよ!」

上に乗っているミアを突き飛ばす。

嫌な予感は的中した。

敵は壁の上、しかも特殊な飛び道具持ちだ。

「どうする!」

「とにかく逃げるよ!」

「……」

壁の上で何かが光った。

まずい。

「逃げるぞ!」

不機嫌な顔してるミアの手を引っ張ってとにかく走る。

まだどんな状況か理解できない。

距離を取って攻撃の範囲外に行くしかない。

「!?」

「ロイバ! 下です!」

「ええ?」

走るロイバの真下から風切り音がしてきている。

あの矢が迫ってきているんだ。

「う、うわ! あぶなかったぁ~」

ロイバは変な格好しながら鋭い一撃を避けた。

今のでわかった。

信じられないが、あの矢は地面から飛んできている。

空中からじゃなく地面だ。

「意味がわからないぞ!」

「ほんとだよ!」

「ロイバが言うと説得力があります!」

「ほんとだよ! え?」

高所を取っているのに地面から矢の攻撃。

この攻撃は壁の上にいるやつがしているんじゃないのか。

「とにかく今は逃げよう!」

「そうです!」

ともかく今は逃げるしかない。

風切り音に背筋が凍らされながら、俺たちは南へ走っていった。


異能ものっぽくなってきた?

今までの敵って割と転生と関係ない感じだったんで。


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