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ノエル・ファンタジー  作者: 霜惣吹翠
【第一章】レイロンド大陸へ
39/130

37.強い光の超越者

たまたま訪れた無人島。

そこにある山の頂上にあったのは、かなり古い遺跡。

知ってて来る観光とは違う驚きがあるもので、運命というのを少し感じた。

でも本当に驚くべきものは遺跡じゃなかったんだ。

その遺跡で俺たちのことを知っているであろう美女が待ち構えていたということだった。

だけど俺は驚かない。

なぜなら美女の向けてくる殺意に運命を確信したからだ。

「では、次はこれにしましょう」

その美女は小石をいくつかの手で掴んで少しニヤけている。

さきほどの攻撃から警戒を強めて剣を構えるソフィ。

「離れないで」

「あ、ああ」

俺はその後ろから戦況を覗いているだけ。

「くるわ」

美女はたくさんの小石をこっちに投げてきた。

これだけなら全然怖くはない。

だがあの美女には石化の能力がある。

それを用いた何かをあの小石に仕込んでいるに違いない。

「!」

ソフィは剣で飛んできた小石を弾く。

すべて弾いてソフィは驚いている様子だ。

「ただの石?」

「ふふ・・・」

また美女はいくつかの小石を投げてきた。

一体何なんだこれは。

ソフィは再び剣で小石を弾いていく。

「!?」

一つの何かが後ろにいる俺の頭のすぐ横を通っていった。

それもかなり速く。

「な・・・」

「単純ね、騎士さん・・・」

ソフィの右肩から血が出ている。

もしかしてさっきのが貫通したのか。

てかさっきのはなんだったんだ。

「あら、そんなに怯えなくてもいいのよ、坊や。」

美女は不敵な笑みを浮かべている。

「じゃあ、もう一度いこうかしら」

そのまま美女は石を投げてきた。

「気をつけろ、あの石は何かおかしい!」

「わかってるわ!」

ソフィは強張りながら剣で石を散らしていく。

だが三つの何かが高速に俺の足元にぶつかって砂ぼこりを上げた。

「これは・・・弾丸?」

タケノコの形の黒いのが地面に埋もれている。

どういうことだ。

この世界にきて弾丸を見たのはこれが初めてだが。

「今度は遅くなったわ。」

「え?」

ソフィはそう言いながら片膝をついて美女を睨む。

対して美女は見下すように笑った。

「すごいわ、そんなことまでわかってたの?」

遅くなった何が。

美女が投げた石のことか。

さっきは速くて今のは遅い。

もしかしてあの美女は投げた物体の速さも変えられるのか。

「そうよ、あたしはどんなものも石に変えることができる。でも石って何の石でしょう? 石といったっていろんな種類があるのよ。」

「軽いのと重いのがあるってことか」

「そう、軽ければ速くなり、重ければ遅くなるでしょう?」

何となくわかった。

美女は物体を石に変化させられる。

それは様々な種類の石という意味。

初めに投げてきた小石は軽い何かの石に変化させ、空中で速くなったんだ。

逆に次は重い何かの石に変化させ、空中で遅くしたのだろう。

そのようにして速いのを見せてから遅いので意表を突き、ソフィの足を負傷させたとうことか。

「これで速さは奪ったわ、光の騎士さん」

「・・・」

計画通りに事が進んで美女は汚い目をしてソフィに言った。

ソフィの強さはその脚力による素早さ。

それを簡単に奪われた。

膝をついて地面に顔を向けているソフィに俺は何も声をかけられない。

ただ心が痛かった。

「滑稽な騎士さんにトドメを刺しましょう」

美女は落ちている枝を拾い、外側に曲がった剣に変化させながらソフィに近づく。

その顔はもはや魔物のように憎悪に満ちていた。

そして石の女は跪くソフィのすぐ前まで来て止まる。

「じゃあ、さようなら!」

その歪な剣が振り下ろされる。

「・・・!」

歪な剣が空を舞った。

ソフィは石の女の攻撃を叩き飛ばし、その首に斬りかかる。

「っ!?」

強い金属音が鳴り響いていく。

ソフィの剣はその首に衝突して弾かれた。

「あぶなかったわ・・・」

石の女の首は白くなっている。

石化させてソフィの渾身の一撃を守ったのか。

でも少し首が欠けているぞ。

「!」

「んぁ!?」

ソフィは空かさず剣で攻撃する。

石の女はそれを石化させた腕で受けた。

それによってまたソフィの剣は強く反発したが、すぐ攻撃に移る。

「な!?」

ソフィの攻撃、石の女が腕で受けてそれを弾き飛ばす。

でもソフィはすぐに再び攻撃する。

それが何度も繰り返されていく。

「なん、なに!」

しかもソフィの攻撃は加速していっている。

石の女のほうはその間髪なくなった攻撃にただ守るしかない。

「だけどまずいぞ」

いつものソフィならそれでもいいのかもしれない。

だけど今のソフィは違う。

高速で繰り返される攻撃、その代償なのかソフィの足からは血が飛び散っている。

「っく・・・」

でもソフィはそれでもやめることはない。

その気高い背中はまさしく騎士なのだろう。

「う、うそ?」

その風圧で地面の砂が舞っていく。

まだ加速しているのか。

「!」

ピタリとソフィは止まる。

そして膝から崩れ落ちてしまった。

「・・・ふふ」

「うそだろ?」

砂ぼこりが落ち着いて見えたのはその首に食い込んだ剣。

剣は首の真ん中まで到達して刺さっている。

よく見ると石の女の両腕の肘から先は無くなっているぞ。

それなのに悪魔のような笑みを両手ついたソフィに飛ばしている。

「よくないわよ、自分の身体をそんなにしちゃ」

「・・・」

石の女は地面に無くなった腕の断面をつけ、石の腕を再生。

その手で首に刺さっている剣を抜いて投げた。

「どうせ死ぬだけなのだから、苦しむ必要ないのよ」

「・・・それはわからないわ」

ソフィは震える足を無理やり立たせる。

その背中で石の女が隠れた。

「じゃあ、わからせてあげる」

「・・・ごめん」

石の女の声と同時に強い光がソフィの身体から零れていく。

あれだけ強かったソフィが簡単にやられていく姿の儚さよりも、その石の女の圧倒的な力への恐怖や驚きなんかよりも、ソフィの弱く小さい一言のもどかしさが辛かった。

「次は・・・あなたよ」

光が消え、ソフィは石になっていた。

そしてパッとしない顔して石の女は俺の目の前にいる。

「ゴルゴーンみたいだな」

「・・・残念だわ」

強い光から逃げようとも思わなかった。

ここまでして守ろうとしてくれたソフィには申し訳ない。

どうして俺は戦えないんだ。


無人島の海辺には汗を垂らして船に金槌を振る青年とそれを厳しい目つきで睨みこんでいる少女がいた。

「・・・」

昼頃になったかな。

お腹が鳴ってるからたぶんそうに違いないよね。

船の修理は大体済んできたし、そろそろ飯が食べたい。

「ねえミアちゃん、二人はまだ帰ってこないの~?」

「あ、はい」

そろそろミアちゃんに冷たくされ続けるのもキツくなってきてるんだよ。

助けてくれシユウ。

僕頑張ってるよねぇ?

どうしてだよおおおおおおおおおおおお。

「手が止まってます、早くしてください。」

「あ、はい」

姉貴も鬼だけどミアちゃんのほうが怖い。

休憩なしで働き詰めだよ。

このままじゃ死んじゃうよ。

そう思いながら僕は眩しい太陽の光に協力を仰ぐのでした。

「手止まってます。」

「・・・」

「止まってます」

「・・・」

「早くしてください」

「はい・・・」

もうミアちゃんに絡むのやめよう。

いや、なんで僕はミアちゃんの言うことをこんな聞いているんだ。

そもそも僕は船長だぞ。

いざとなったら三人この無人島に置いて行って逃げちまえばいいじゃんか。

そうだ、僕は偉いんだ。

修理すべきは僕じゃなく、シユウと姉・・・シユウだけだ。

僕は悪くない。

だから船の修理をやらない。

「でもなんかおかしい?」

「・・・」

「僕が船を直すのをやめて、シユウにやらせて僕は逃げる」

「・・・」

「やっぱおかしい?」

「・・・」

「あ、置いてけないじゃん。逃げられないもん。」

そうだったのか。

結局僕が船を修理するしかなかったんだ。

そこまでわかった上で厳しくしてくれたなんてミアちゃんは優しいなぁ。

「・・・あれ?」

さっきから催促の声がしないと思ったらミアちゃんいない。

しびれ切らしていっちゃったのかな。

「うーん」

どうしようか。

なんかやる気なくなっちゃった。

やれと言われたら人間はやりたくなくなるなんていう話を聞いたけど、僕はその逆なのかな。

だったら僕は人間じゃないってことか。

なるほど、そりゃあ興味深い。

「あれ?」

あんなところに石像なんてあったっけ。

しかもミアちゃんにめちゃくちゃ似てるような。

「!?」

そういうことだったのか。

やれと言っていた側が人間でない可能性もある。

その場合、僕が人間である可能性は残っているじゃないか。

そうだ、僕は人間だ。

「そうだ」

僕は金槌を海投げた。

「そうだ、僕は人間だ」

僕は浜辺を歩き出す。

「そうだ、僕は人間だ、自由なんだ!」

僕は浜辺を走り回る。

そしてこの自由な海を眺めながら酔いしれるんだ。

もう僕は何も背負うことはない。

だって僕だけが人間なんだ。

僕だけが自由なんだ。

この青い空の下、広くて広大な海を漂えるのはこの僕だけだ。

「あー気持ちいいね」

こんなに気持ちがいいと一杯飲みたくなってくる。

でも酒がないんだよね。

予備の船にも酒を入れておくべきだったかな。

「ん?」

なんか浜辺に落ちてる。

これは・・・酒瓶だ。

「おお、なんてことだ!」

願ったり叶ったり。

もしかして僕は神に・・・。

僕は神に・・・。

神に愛されているのではなく、僕が神なのか。

僕は神だったのか。

「・・・」

くだらないこと言ってないで酒飲もう。

僕はコルクを強引に手で開けた。

「じゃあ、カンパーイ!」

太陽と僕は乾杯。

まばゆい光が瓶を照らした。

あまりの眩しさで体が固まりそうになったよ。

「では・・・」

この喉越し、泥のような濃厚さ。

なかなか癖が強いな。

「ってまずい!」

なんだこれ、飲めたもんじゃない。

僕は広大で偉大なこの大海原に腐った酒瓶を投げつけるのであった。

「やっぱり無人島はこりごりだな、早く船直そう」

スキップしながら浜辺を通り過ぎていく陽気な青年。

あまりの場違いさは異世界のルールをも超越してしまったのだろうか。

石の女、セルペンテはその二つ名の通り完全に石になってしまった。


シリアスにいってからのコメディ的な感じになってしまったけど、実はオチを最初に決めて今回は作っています。

それでも前半がシリアスになってしまったのは、仕方ない。


セルペンテの倒し方として他に考えていたのが、酒を飲ませて酔わせたところを倒すのと、寝首を掻くというのがあったのです。

どれも現実的じゃなかったので、酒瓶に反射した光で自滅という結論になりました。

だってあの女強すぎるんで。

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