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ノエル・ファンタジー  作者: 霜惣吹翠
【第一章】レイロンド大陸へ
38/130

36.無人島に潜む魔女

鮮やかな碧い海の上をゆっくり進む小さな船がある。

その船首で陽気に口笛を吹く青年、帆の下は風景に想いを寄せる少女、舵の前には退屈気な女性。

そして船尾でぼっーとしている俺。

「本当に方角あってるの?」

「たぶんあってると思うよ。」

「たぶんってなによ」

今、俺たちは船で近くの港を目指している。

ロイバが言うにはレイロンド大陸の西、地図で見て北西のほうにストラーダ港という大きな港があるらしい。

だがそこにたどり着く気がしない。

「しょうがないじゃん、ないものを考えたってさ。」

「あんたの船でしょ」

そう思うのはロイバが船の上で指示を出していることだけではなく、コンパスがないということが大きい。

海図だけじゃ不正確というのはロイバ自身が話したことだ。

「まぁ、最悪の場合は漂流するだけだから大丈夫だよ。」

「は?」

ニッコリとするロイバに今にも斬りかかりそうなソフィ。

俺は消して止めることはないだろう。

「たぶんヲーリアの海兵隊あたりが見つけてくれるさ、大丈夫大丈夫。」

「全然大丈夫じゃない、こっちは追われる身なの。昨日も言ったでしょ・・・」

ソフィは怒りを通り越して呆れている。

「あれ、そうだっけ?」

「そうですよ、見つかって捕まったら大変なんです。」

本当に大変だ。

俺については完全に死ぬことになる。

生きにくくなったな。

「なんで追われてるのさ?」

「・・・」

ソフィはそっぽを向いた。

「なんで?」

「それは・・・」

ミアが俺のほうを見てきやがった。

「なんで?」

「こっちくるな・・・」

海を眺める俺の隣から話しかけてくるロイバ。

「てかあっちのことは知らないし、こっちのことはある程度知ってるだろ。」

「そうだったね。」

ロイバはスキップしながら船首に戻っていく。

なんか俺も反乱を起こしたくなってきた。

スパイク、あんたのやったことは間違ってないかもしれないぞ。

「まぁいいや、ところで港に着いたらどうするのさ?」

「なんでそんなことをあなたに話さないといけないの?」

「うわ、厳しい! 僕はもう姉貴たちについて行く気満々だったよ!」

「やめてください。」

「ミアちゃん!?」

船首から零れ落ちた涙の波紋が船尾まで到達した。

さすがにミアに冷たくされたのは効いたか。

ざまあみやがれ。

「わかったよ! 僕はシユウとムールハット学院に入学するよ! くそー!」

「ムールハット学院?」

「ん?」

泣きついて走ってきたロイバを押し飛ばして、疑問符を浮かべたミアのほうに歩く。

というかミアのところにいればロイバ来ないだろ。

「私たちもムールハット学院を目指してるんですよ。」

「そうだったのか。」

ムールハット学院はレイロンド大陸の真ん中くらいにあるデカい学校らしい。

魔法の聖地だとか。

「あれ?ミアちゃんも学生になるの?」

「俺は学生にならないぞ。」

「違います、ムールハット学院なら魔剣のこと知ってると思ってです。そうですよね、ソフィ?」

「・・・ミア、言わなくていいのに」

ミアが探しているのは矢のような魔剣を持った男だ。

確かに魔法に詳しいところなら魔剣のことを知っているかもしれないか。

「ロウエルがソフィに頼んだのはミアをムールハットまで連れて行くってことだったのか」

「・・・そうよ、誘拐したのはミアを連れて帰ろうとするエースから逃げるため。もういい?」

「はいはい。」

エースか。

あの聖騎士とかいうチート野郎。

そんなやつに追われてるのか。

「誘拐? 姉貴がミアちゃんを誘拐したの? こんなかわいい子を誘拐とかなかなかやるじゃないですか姉貴~」

「・・・斬るわよ」

「またまた~」

「・・・」

「ごめんなさい。」

ロイバは本当に状況を理解してるのか。

そんなに陽気にしている場合でもないのに。

今だってあの野郎が追いかけてきているのに。

「あんまりよくわからないけど、シユウそんな顔してないでさーもっと気長に行こうよ。ほらミアちゃんだってニコニコしてるよー?」

「え?なんですか?いきなり?」

「なんでもないよー」

「こっち来ないでください。」

「そんなー」

ロイバだけじゃなくてミアも楽しんでいるのか。

一番年下のミアが頑張ってるのに、俺は何してるんだ。

「こっち来ないでください、あっち行ってください。」

「いいじゃんかよー宝石あげれなかったの怒ってるのー?」

船の上でそんなに走り回るな。

揺れてんだよ。

「あれ、変だね?」

「どうしたんですか?」

「なんか船故障してるかも。」

「え?」

ロイバが真剣面して階段を下りて行った。

ミアもそれについて行く。

「やばいです!穴開いてます!」

「・・・最悪だわ」

なんでいつもこんなについていないんだ。

どうしてだよ。

「ミアちゃん、手伝ってー!」

「わかりました!」

下からの救援に答えてミアは走っていった。

「なんでこうなるんだ・・・」

俺は地獄の綺麗な海に絶望している。

この景色に対してこの異常事態。

風景描写とはどこにいったんだ。

「ん? あれは?」

思っていたよりも運は悪くないかもしれない。

少し先に緑色の山みたいなのが、草木が生い茂っている島がある。

「あれ、あそこに船を止めよう!」

「ええ、わかってるわ。あなたは帆を見ておいて。」

「わかった。」

なんだかんだ海の上では騒ぎが止まない。

でもそのせいなのか、悩んでいる暇すらなかった。


風が島に向かって真っすぐ追い風だったから、沈没寸前なんてことはなく、思ったよりもあっさり島に止まることができた。

「みんなおつかれー、ひとまず安心てところだよ!」

「よかったです。」

「本当にそうだよ。」

俺とミアが胸を撫で下ろしているすぐ横をソフィが通っていき、そのまま船から飛び降りて森のほうへ歩いていく。

「ソフィ、どこいくんですか?」

「狩りよ。」

「狩り?」

「食料を調達しておいたほうがいいでしょ。」

少しは休もうと思わないのかソフィは。

昨日だってあれだけ動いて疲れが残っているはずなのに。

「シユウ?」

「俺も行ってくる、ミアはロイバを手伝ってやれよ。」

「ええ・・・」

行くなと懇願するミアを完全に無視して俺はソフィの後を追って森の中へ入っていく。

でも森っていい思い出ないんだよな。

本当のところ、あんまり行きたくない。


島は恐らく無人島で、ほとんどが森、中心に向かうほど標高が高くなっていく感じだから山のようだ。

森に山、ああ嫌だな。

腹が減って食料を探す。

そのために森や山に入る。

そしてさらに疲れて腹が減っていく。

矛盾してるぞ神様よ。

「さっきから嫌そうに何のつもり?」

「え?」

「勝手について来ておいて、ダルそうにされても困るのだけど。」

「悪かったよ・・・」

「・・・。」

ソフィの言う通り、ついてこないほうが良かったな。

ハイトと狩りをした経験があるって自慢しても、武器を持っていたとしても、俺はソフィの足手まといでしかない。

なのにどうしてついて行きたいと思ってるんだろう。

「ほら、気を抜いてたら野獣に食われるわよ。」

「そんな気配はないぞ。」

「そうね。」

俺とソフィは狩りをしているはずなんだよな。

山を登って数分、動物を全然見かけない。

無人島だけでなく、動物もいないのか。

これじゃ、ただの山登りだ。

「やっぱりいないわね、これじゃあ山登りだわ。」

「っぷ・・・そうだな」

「なんで笑ってるの?」

「いや別に?」

森に入ったのはソフィのくせに。

しかも気配があったからとかじゃないようだし、ソフィもこんな適当に探検することがあるんだな。

「なんか変なこと言った?」

「いや?」

純粋に聞いてくるから俺は腹を抱えるしかない。

「なんでまた笑ってるの? 謎だわ。」

俺が一人で盛り上がっている間、ソフィは少し早歩きして山を登っていった。

その後ろを笑いながら普通について行くと、ソフィはさらに早歩きしていく。

さすがについて行くのがやっとで笑ってられなくなって、息を切らすばかり。

大人げなさすぎる。

そんなことをしているうちに気が付いたら山頂にいた。


山頂に着いたことに気が付いたのはソフィが止まったからだ。

疲れすぎて前も向けない、息を吸うのに必死だぞ。

「人のことを意味もなく馬鹿にするからよ。」

「は・・・はぁ・・・」

結局ここまで一匹も動物を見ることはなかったようだ。

この疲労による恨みをぶつけてやろうと思っていたのに。

「ほら下ばかり見てないで、前を見てみたら?」

「え?」

なんとか俺は顔を上げると、びっくりさせられた。

そこにはデカい遺跡とその前に廃れた家が並んでいたんだ。

山頂にあったのは遺跡だったのか。

「いやでも狩りは?」

「これだけ探していないなら、もう見つからないわよ。」

「最初からわかってなかったか?」

「そんなことないわ。」

「ほんとかよ。」

お得意の気配を読むやつでお見通しという気がするけどな。

でもそうであったとしても特に意味はないか。

「どこ行くんだ?」

「帰るに決まってるでしょ。」

「なんでだよ、ちょっと遺跡を見てもいいだろ?」

「観光してるわけじゃないでしょ・・・まぁいいわ。」

別に俺も廃墟が好きなわけじゃないが、ここまで労力使って山を登った利益が必要だろう。

それを求めて俺はソフィを道連れにここを彷徨う。


家はヲーリア平原の廃墟で見たのと同じようなもので、石の壁に煉瓦の屋根の小さい家ばかりだ。

違うと言えば、この廃墟の奥、俺の目の前にある遺跡。

「ミアがこれを見たら喜びそうだな。」

何本もの柱が並んで真ん中の長方形の空間を囲っており、上からの太陽の光がそこを照らしている。

本当に神が現れそうなほどの神殿だ。

極めつけは神殿の前にある何種類もの動物の石像だ。

とてもリアルで本物みたいだぞ。

特に人間の女性の石像は美しすぎる。

「感動してるとこ悪いけど、あれ見て。」

「え?」

この神々しい遺跡を前にしてなんでそんなに無関心でいられるんだ。

まぁ別にいいけど。

「・・・?」

ソフィが指さしているのは古びた井戸。

廃村の中央にあるただの井戸だ。

でもソフィは意味ありげにじっと井戸を見ている。

「なんだよ、ただの井戸だろ?」

「そうね。」

「?」

真っすぐ井戸を見る横顔を俺はじっと見ている。

ソフィと同じように。

「よく見て。」

「うーん?」

なんで言葉を使わない。

そっちのほうが手っ取り早いのに。

ただの井戸、井戸があるってことは集落が近くにあるのか。

たぶんその集落も人はいないだろう。

それぐらいしかわからない。

「・・・?」

「・・・桶があるでしょ、水が少し入っているわ。」

「雨が降ったってことか?」

「違うわ、ここの土も湿気がないでしょ。」

「じゃあどういう・・・?」

一体何が言いたいんだ。

井戸のそばに倒れている桶に水が少し入っていて、ここの地面の土には湿気がない。

雨が降っていないのに桶に水がある。

そんな状況が成立するのは・・・もしかしてそういうことか。

「だれかこの島にいるってことか?」

「その通りよ。」

「!?」

「後ろだわ!」

後ろから聞こえた声に振り向く。

そこには誰もいない。

あるのは美女の石像だけだ。

「うわ!」

ソフィが手を引っ張って俺を石像から遠ざける。

それでもよくわからないが、ソフィがその石像を睨み続けていることでわかった気がする。

でも信じられない。

「さすが光の騎士ってところだわ・・・あたしを見抜くだなんてね・・・」

「嘘だろ!」

石像の口が動いたぞ。

そして灰色の石の肌がだんだん肌色になっていく。

本当なのか。

「下がって。」

「あ、ああ・・・」

ソフィが剣を構えた。

俺はその後ろに隠れるしかない。

さっき光の騎士って言ってたが、ソフィのことを知っているのか。

一体何者なんだ。

「困惑することはないわよ、坊や。」

やっぱり美女だ。

しかもちょっとセクシーだぞ。

「あなた何者?」

「答えるつもりはないわ、騎士なら剣で確かめてみたらどう?」

ほとんど裸で丸腰の美女が手を招いてソフィを挑発している。

こんな命知らずな人間が存在するのか。

「騎士は武器を持たない敵を襲わないわ。」

「そう、じゃあこっちからいくだけよ。」

美女は近くに落ちていた枝を手でつかんでそれをソフィに投げた。

枝はただ回転して空中を移動しているだけだ。

「舐めてるの?」

「それはどうかしら?」

「・・・?」

ソフィはその木の枝が頭の上くらいにきたところで剣を振った。

枝はもちろん真っ二つに切れたりしていくと予想できる。

しかし違った。

ソフィの剣は枝に弾かれた。

そう、枝は石化していたんだ。

「石化させることができるのか」

「ご名答。」

無人島の頂上、そこにある遺跡には美女がいる。

彼女の名はセルペンテ。

出会ったものを石に変える化け物であった。


最近食べたい料理がない。

美味しいものがあったらだれか教えてください。


できれば有機物でお願いします。

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