22.星見
焚火が消え、暗くなってきた集落。
迷い込む男が一人。
「仕方がないからもう少し歩くとするか。」
フラフラと徘徊しているとあるテントに男は立ち止まった。
「ここかぁ?」
そう言って男は大胆にも勢いよく扉を蹴り飛ばす。
「…」
「…」
すると男は殴り飛ばされた。
酔っ払いが入ろうとした家はどうやら女の家だったようだ。
その家の前に倒れたまま空にうつる輝かしい沢山の星をぼーっと見つめながらおt子ははそこで寝てしまうことを想っていた。
また、自然と瞼も閉じていく。
・・・
なんだか、ぐわんぐわんする。意識がもうろうとする中、その違和感に瞼を開けようとした。
「…さい!」
脳が揺れて骨が振動している。だがどうせ夢だろう。半開きした瞼を閉じ始めた。
「いい加減…起きなさい!」
頬から電撃が走る。ありえないほどの勢いで首が捻るように反転し、そのまま頭を強打した。
「っく……」
痛みを超越した衝撃性のせいで頭を抱えたまま地面に悶えている俺を見下ろしている女からは殺意を感じた。
「人の家の前で寝るだなんてアホなの?」
視界の解像度がだんだん上がってきた。厳密には目に映るものを認識できるようになってきていた。
「だからって…殴ることないだろ…」
見下しているソフィに頭突きしようと立ち上がるが、簡単に避けられた。
「何度呼びかけても起きなかったほうが悪いわ。」
起き上がっても見下されるのが気に入らない。
やり返そうとしてもどうにもならないから不満げにするしかない。
そしたらソフィはため息を一つして歩き出した。
「回復必要ですか?」
隣にいつの間にか立っていたミアが純粋に心配してくれているようだが、煽っているようにも聞こえる。
「たんこぶありますね。」
仕方がないから頭を緑に光らせながらソフィについて行く。
朝起きたテントかソフィの休んでいたテントにてっきり向かっているもんだと思っていたが、両方を通り過ぎて集落の端に向かっていた。
「寝るんじゃないのか?」
隣で寒そうに縮こまっているミアに聞く。
「話があるみたいです。」
集落はすっかり深夜で村人はほとんど誰も歩いて無く、たまにこっちを怪しい目で見てくる松明持った見回りのおっさんを見かけるぐらいだ。
十分人影がなかった集落の端に着くとソフィは止まった。
「酔いは冷めた?」
ソフィがこっちを向いた瞬間、冷たい風が当たる。
「おかげさまでな。」
「そう…」
これ以上殴られたくはないから嘘をついた。本当は少しフラフラするし眠いからさっさと話しを終わらせたい。
「話って何だよ?」
あくびを手で覆りながらソフィに聞く。
「明日のことよ。」
わざわざ夜遅くにする話だからもっと怖いことだと思ったが、ただの予定の確認か。
「怪我は治ったのか?」
なぜかソフィは驚いている。何がおかしい。
「ミアが看病してくれたおかげでもうなんともないわ、それよりも明日は王都に戻るわよ。」
相変わらず俺に恨みがあるようだ。追い出したのはお前じゃなかったか。
「じゃあ今日はもう寝る。でいいだろ」
再び出ようとしていたあくびを止めるつもりなのかミアが突然に手を引っ張る。
「こっち来てください。」
「はえ?」
深夜も深夜で明日も早いのに一体何を考えているのか。
いきなり引っ張られていく俺を驚きのあまりその場でじっと見ているソフィにミアが気づいて少し戻る。そのせいで一瞬、手が千切れそうになった。
「ソフィもです!」
驚いているのはソフィだけじゃない。なんでミアはそんなに元気なんだ。
腰ぐらいの高さの柵を跨いで集落の外に少し出て、集落の端に沿って行く。
「なんかあるのか?」
「はい。」
自信満々に答えるミア。その自信は一体どこからきているんだ。
見晴らしの良いとこに出た。目の前には静かに靡く平原。その先は緩かに寝静まった海に繋がっていて、その波が輝いて涼やかに扇いでいる。さらに向こうは灯台の暖かい明かりが籠っているだけだ。
「シユウ、ソフィ、確かに海も港町も綺麗ですが、上も見てください。」
上を見上げるミアの横顔から俺も顔を仰ぐ。
前も見たはずの夜空。幾つもの星が広がっている。
目の前の景色は幾らでも変わるのに夜の空は何も変わらない。だから上を向いたところで飽き飽きするだけだ。
それでもいつかの神秘さを感じる。
「…」
シユウはふと横を眺める。彼女の横顔だけが月の明かりに照らされていた。
「そろそろですよ。」
変わらない星空の中、右から左へひとつだけの線が駆け抜けていく。
ひと時だけの眩い宇宙の塵は夜空を照らし、星をさらに美しくさせる。
「流れ星…」
三人の瞳には輝く星が映っていた。
それが何処かへ消えてしまった後は今まで感動させていた星空が少しむなしく感じさせる。ただ今を静かに眠らせてくれるはずだろう。
「流れ星?え?」
「見てなかったんですか?」
「また来るよな?」
「もうこないでしょ。」
「…」
見逃した流れ星がもう一度訪れるのを願いながら空を見上げる。
だが一向に来ることは無かった。
「あっちは大丈夫なのかしら。」
そういえばミアがいなくなって何日か経ってるんだった。王都では嫌味たらしい司祭どもがどうなっているか。
「大丈夫…じゃないかもしれないです…たくさん怒られるんですよね…」
下を向くミア。
「私がどうにかするから大丈夫よ。」
落ち込むミアの頭を撫でながら優しく言うソフィ。なんでかミアばかりに甘い。
「シユウは王都に戻ったらどうするんですか?」
三角座りするミアは俺に聞いてきた。
「どうするって…」
勢いでここまで来たけど、確かに長かった旅はもう終わりか。ソフィは旅に出てると前言っていたし、ミアは操剣の男を探すっていう使命がある。
「俺は鍛冶師として生きていくんだよ。」
俺にも鍛冶がある。前の生活よりは質素だが、アイツらと飲むのは楽しいからな。
「以外だわ。なんかあったの?」
不思議そうにしているのは単に知らないからということでいいのか。
「シユウはソフィがいない間に鍛冶屋で働いていたんですよ、しかも名工ジローさんのもとで。」
ミアがジジイの名前を言った瞬間にソフィの顔色が変わった。
「ジローって…ほんとなの?」
驚きながら馬鹿にするように俺に言う。
「信じなくても王都つけばわかる。」
ジジイは世界的な鍛冶師ってルイが言ってたから、これはソフィをギャフンと言わせられるかもしれない。
「ふーん?」
他愛にもない話を三人でしながら星空を眺めていると、灯台の明かりさえも消えかかってきていた。
林檎を食べ終えてすぐにシユウ以外はテントに戻り、月が雲に完全に隠れる頃合いになるとシユウも上を向くのをやめた。
一人暮らしはアジフライ一個じゃないと胃がもたれるよね。
後書き、書くことなさ過ぎた(´・ω・`)
おでんは二日目でも飽きなかったよ。




