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ノエル・ファンタジー  作者: 霜惣吹翠
【三章】エンテレケイア(前編)
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102.【風車町5】機械化

山賊らはサーベルをソフィへ振り下ろす。その前にサーベルが落ちていた。

瞬く間に多種多様の頭が宙を舞う。地面にぶつかると、どの死に顔もだいたい同じような感じに驚きを露わにしている。死んだらどの頭も見分けがつかない。


舗装された道も血で真っ赤に染まり、元々何色のどんな道だったのかも忘れてしまった。

ソフィが現れてから場は夥しい数の山賊が首を刎ねられ、死んでいる。なのに山賊らはソフィに怯えることなく、機械的に襲い掛かっている。


もちろんそんな狂気的な山賊も気持ちが悪くて仕方がない。ただそれ以上に機械的な山賊のせいで、さらに流れ作業のように殺しをするソフィに、そうさせている現実に吐き気がする。


ソフィの身のこなしは山賊の首を斬るごとに増していき、だんだんと華やかにも美しく見えてもいた。それも踏まえて気分が悪くなる。

あとはソフィが華麗に殺すせいで、手を貸そうとすれば逆に邪魔になってしまい、ただ見ているしかない自分が憎い。なぜだろう、俺は周りにいる騎士と同じように喜べない。


「……何かおかしいわね」


ソフィは掛かってくる山賊らの足を切断し、それによって壁をつくった。そうしてすぐに辺りを見回して疑問に思っている。

前で動けなくなった仲間の身体を切り刻み、肉壁を破壊しようとしている山賊を無視したまま、冷静な面で。


こっちは充満した血の臭さに嗚咽を繰り返し、胃が捻じれてきているのに。いくら戦場を越えてきたとはいえ、あんな涼しい顔ができるものなのか。

俺は一人だけ際立って異様なソフィに疑問を抱き、見つめていた。そしたら目が合い、ソフィは俺に向かって歩いてきた。


「急いで南門に向かいなさい。私は足止めをしないといけないから」

「は? 邪魔ってことかよ?」

「違うわ、妖術師が数十の山賊と南門に回っている。あなたはそっちに行って」


この崩れた北門には山賊が数えられないほどいた。なのにあっちに行けって邪魔だと言っているようにしか聞こえなかった。ムカついた。

ただ、敵の全てが北門にいるわけではないと言われれば、山賊を牛耳っている妖術師がここにいないと知らされて誤解が解けた。


俺はソフィの命令通り、南門へ全速力で向かう。

入り乱れてどうしようもなかった胸の奥は高揚に変わっていた。こんな状況なのにスキップしたくなるほどに嬉しかったんだ――――――――ソフィの後ろを任された気がして。



山賊の襲撃の第一波には妖術師はいなかった。教会から戦況を覗いたとき、あれほど山賊が狂って動いてなかったはずだ。

ということは第二波、妖術師は増援と一緒にやってきたはずだ。

増援によって門が壊され奴らが町を攻めていこうとし、そこに現れたソフィに止められて妖術師の力が発動していた。


妖術師は術を用い、山賊の理性を支配することでその攻撃性あげていた。いや、むしろそう見えたからこそソフィは妖術師が絡んでいると推測したんだ。


きっと妖術師はその力を用いてソフィを倒そうとしたのだろう。ただその作戦は破れ、結局は完璧に止められてしまっている。元々山賊らは増援とで一気に町を落とそうとしたと思ったのだろうけど、それはソフィのせいで破綻したんだ。


だから妖術師はソフィを足止めできる数だけ山賊を残し、南門から町を制圧しようと考えている。

十分にあり得る。いや、そうでもしないとあっちは勝てないだろう。


ただこれはこっちの圧倒的不利を予想した上での判断――――ソフィさえ足止めできれば簡単に町を陥落させられる。という考えだ。


北門にいた山賊はその勢力のほとんど。足止めできるのはソフィしかいない。

残った少数の町の騎士くらいなら簡単に倒せるという予想――――だがそこには俺がいる。


つまり、この勝敗は俺の手にかかっている。ソフィはここまでわかった上で俺に託したんだ。


嘘みたいだ。ソフィに期待されるなんて。

そしてこの重い責任からくる緊張や恐怖よりも、楽しみのほうが圧倒的に上回っていることが。足は竦むどころか奮い立っている。


「シユウ!」


崩れた家や屋台などに荒れた通りを走っていると、真っ向からロイバとリュードと遭遇した。なんだかんだで助けに来ようとしてくれたのか。

二人は何があったのかと汗を垂らし、説明を求めている。けど今は時間がない。


「とにかく南門に向かうぞ!」

「ええ?」

「こんな走らせて戻るというのか!」


二人を連れて俺は通りを走っていた。満身創痍な体で走りながら説明するなんて余裕もなく、何も話さずその文句を聞いているしかなかった。

それでも途中、脱出用の経路から町の城壁を登って門まで行った方が早いとリュードは提案し、向かっていた。

説明なんかしなくてもなんだかんだ協力してくれている。


「お前らってチョロいな」

「そんなこと言うなら説明してよ!」

「その必要はない。あれを見てわかった」


城壁から南門付近を見下ろすと蠢く町人があった。逃げようと互いに押し付け合い、貶しあっている。

だがこれは町の外に逃げようとしているのではない。中へ逃げようとしていた。


なぜならば門には大きなヒビが、外からは山賊らの叫び声が聞こえていたからだ。

少ない騎士たちは混乱する町人のせいで山賊に対応できない。城壁から放つ矢もごくわずかだ。


そして町の外、壊れかけた門の少し後ろ、薄気味悪い青肌と破れかけた衣を着た男が佇んでいた。あれが妖術師だろう。


ずっと前に見た奴とは風格が違う。山賊らが丁寧に妖術師に接しているし、妖術師もずっと厳しい顔つきだ。あの青肌の妖術師は厳格さを感じる。


「僕にも遠眼鏡貸してよ」

「わかったから揺さぶるな」


山賊の数はおよそ60。妖術師一人が束ねている。武器はサーベル、金槌、弓。妖術師は手ぶらだ。

こっち側は俺とロイバとリュード。あっちにいる騎士は10人くらいか。

まずは騎士と話をつけるべきだな。


「おい、時間がないぞ」

「え?」


バギッと鳴り響くと門の亀裂が大きく広がっていた。

町人らはさらに混乱し、混沌としている。

門が壊れるのも時間の問題。奴らが町に入る前に決着をつけないと。


でもどうする。

まずは山賊をどうにかしないと町が。

ただ相手は60近く、とても対応できない。しかも狂いだしたら余計に―――――――、


「僕とシユウで親玉を叩く。リュードは魔法で騎士を支援、町に山賊を入れないようにする。これでいいんじゃないかい?」

「そ、そうだな」

「わかった」


ロイバの頭の回転の速さは助かる。さすが元船長。こういうときの策はすぐ浮かんでくるみたいだ。

だけど手を掴むのは何故だ。俺はまだ理解して――――――――!?


突然ロイバは俺を抱え、城壁から飛び降りた。

どうやって降りるのかとは思っていたが、こんな強引に――――落下に伴う風に血の気が引けて身体が冷えていく、なのに心臓はバクバク。

ロイバは純粋に目を輝かせて笑顔。楽しいのお前だけだって。



~~~あとがき~~~

シリアスになってしまうよ。

ああ、ギャグをやりたかったのに。

シリアスになってしまうよ。

ああ、書きすぎた。



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