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〜転生者達の傭兵国家〜  作者: あぱ
軍人少女
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宮の中に入ると泊まる部屋の案内を受ける。

それぞれ個室が用意され、庶民のエリスにも立派な部屋が与えられた。シロナがアランの隣の部屋になっていたのは想定内である。その後、客室で旅の疲れを癒すためにお茶を。


(なんて優雅な!)


移動のために休憩するなど軍生活からすると考えられない出来事に、エリスは内心驚きながらも小腹を満たすようにお菓子へ食指が動く。


「御学友さまもご到着したようです」


少しするとアリスが客室に顔を出し、エリスは彼女の元気そうな様子に安心して笑みを溢した。


「エリスちゃん! 元気にしてた?!」


抱きつかれながらシロナと同じことを聞かれて、エリスはうんと頷く。アリスは今日も可愛い。


「全員集まったな。そろそろ本題に移ろう」


客室から移動した場所は、どうやらこの集まりのために準備したらしい大部屋。そこには話し合いができるスペースと作業ができるスペースが。


「お城ってすごいね! まるでお伽話の世界みたい」

「それ、私も思った」

「やっぱり?」


アリスに同意すると、彼女は嬉しそうに笑ってくれる。


(ああ、これだよ。これ……)


自分の求めていた反応が得られて、とても安心できる。

シュヴァルツの称号が授与された時など、皇城にも足を運ぶことがあるエリスだが、前世から庶民である彼女には貴族の気品というものにどうしても目眩を覚えるのだ。


「では、始めましょうか」


席についたのを見計らい、委員長であるカーナが司会を務める。


第一回学園祭の全体テーマは「ミルキーウェイ」。

シロナの提案で付けられたこのテーマには、星のように個々人が輝いて活躍できる舞台になって欲しいという思いが込められている。運営委員会ではこのテーマに沿った装飾を作ることになっており、エリスはこの三日で軍の仕事に戻るが、他の運営メンバーが準備を進めてくれていた。


財も魔術もございますから、思うほど時間はかからずに完成する予定なのである。今回の集まりでは、学園祭最終日の夜に行われるイベントの用意をすることになっている。


彼らはまず、イベントの内容について持ち寄ったアイデアを発表することに。


前世の記憶があるシロナは、後夜祭といえばということでキャンプファイアを提案。他の皆さまは、内容はそれぞれだがひとくくりにするとパーティーだった。


「エリスは?」


最後にエリスの番が回ってくる。討伐、研究、開発とあれだけ忙しい日々だったが、エリスも勿論、この日のために案をこさえて来た。


「私が提案するのは、キャンドルナイトです」

「キャンドルナイト?」


ウレックが聴き慣れない言葉を繰り返す。


「はい。ひとりひとりがキャンドルに火を灯して、訓練場にそれを並べるんです。テーマのミルキーウェイにも見えるんじゃないかと。あ! 今思いつきましたが、透かしの紙をかぶせれば、願い事なんかもかけていいかもしれません」

「それ、素敵!」


シロナがエリスの提案に食いつく。


「最後は、魔術で空に飛ばしたらどうかしら?」

「いいと思います。あれ、やってみたかったんですよね」


「お願い事を書いて空に飛ばす……。すっごくいいと思う!」


アリスも目をキラキラさせて頷く。


「ミルキーウェイっていうテーマにも一番合っているな」


アランの言葉が決定打となり、エリスの案が採用されることになった。燈篭をイメージして話し合いを進め、具体的な方法について決めていく。


「雨の日にも、星が見えないからこそやりたいイベントだね」

「……それなら、僕の知ってる魔術で防水できると思う」

「本当?! そんなことまで知ってるなんてケル様、すごい!」

「これくらい、別に……」


(嫉妬しちゃうなー)


彼女がいるから、どんなところでもアットホームに温かい雰囲気が生まれる。イケメンたちの意外な一面も拝めて大変満足である。


「天燈篭をあげたあとに外でダンスをするのはどうかしら?」

「それなら、ダンスの間はランダムの高さで天燈篭を空に浮かべておいたほうがいいかもしれません。ダンスが終わったら、空に放つ。どうでしょうか」

「それがいいわ!」


アルレンは頷いて手元の紙に考えをまとめていく。


「綺麗に透ける紙を探したいね」


ガイアスの呟きにラゼがピンとする。


「それなら、ビーハムにいいお店があります」


彼女は自宅から紙を転移させ手に紙を持つ。

諜報活動中に見つけた工房で、主に包装紙を手掛けている。部下からもらったお菓子の包装紙が綺麗だったのを覚えていたのだ。


「〈ハピリフ〉というお店で、包装紙を主に作っていらっしゃいます。これは便箋ですが、よろしければご覧ください」


エリスはサンプルを渡す。


「透かしが入っていて素敵。この便箋、わたくしも欲しくなっちゃうわ」

「気に入って頂けたなら、差し上げますよ。私は持っていても使う機会があまり無くて。シロナに使って頂いた方が、仕舞っておくよりいいですから」

「いいの? ありがとう」


シロナの美しい笑みに、エリスはキュンとする。


(ビクターくん、お土産ありがとう!! とっても役に立ってるよ!!)


この紙に出会うきっかけをくれた部下に、心の中で頭を下げた。


「私、明日そのお店に行って頼んでみましょうか」

「そうね! 紙にこだわるなら、キャンドルにもこだわりたいわ。明日は紙、キャンドル、防水対策などの魔術開発の三つのチームに分かれて行動しましょう」


そうして別れた班は、

紙—エリス、ガイアス、アルレン

キャンドル— シロナ アラン

魔法開発—アリス ケルヘラム ウレック

となった。


キャンドルの班については、もう何も触れないでおこう。

強いて言うなら、シロナ頑張れ——。魔術開発に治癒魔術がいるのは、万が一失敗して怪我をしたときに対応できるようにだ。


(まあ、納得の班編成かな。あと、時間魔術はなるべく使わせたくないしね)


紙を手配するのに、アルレンが居てくれるのはとても頼りになる。ガイアスについては、出先での行動に不安はあるが、やることはやってくれるだろうから、目を瞑ることにする。


「ビーハムはここからだとかなりかかるわね……」

「それなら大丈夫です。ふたりくらいなら(余裕で)飛べますから」

「えっ、あれだけの距離を?!」


魔法がお得意のルカが驚きの声を上げた。


(あれ? これって難しいことだっけ?)


転移装置以上に転移をくらい一気に移動させることができるモルタのエース。感覚が麻痺しているが、例えスキルでも国を横断するような距離を飛ぶのは至難の技である。


「え。近くにマーキングは済ませてあるので、問題ありませんが……」

「本当に言ってるの、君?」


ケルヘラムは席を立つとエリスのチャーム(ピアス)に手を伸ばす。魔石に触れると、彼は石を鑑定する魔術を起動する。


バチッ


「なっ、弾かれた?」


魔石に累積した情報を探ろうとしたところ、魔術が弾かれてケルヘラムが唖然とした。それが意味するところは、彼女の魔石起動能力が自分より高いということ。


「だ、大丈夫ですか、ケル様」


驚いたアリスが慌てて駆けつける。ケルヘラムの魔術は学園でも一位二位を争う腕だ。それを弾いたエリスに視線が集まる。


「え、えっと……」


エリスは何と説明したものかと、冷や汗が止まらない。


「さすが理事長が見つけて来た特待生。気になってたんだけど、君、学園に入る前は何やってたの?」


ガイアスに尋ねられ、エリスは、目を伏せる。


(や、やらかしたぁ……)


まさか庶民嫌いのケルヘラムから自分に手を伸ばしてくるとは思わなかった。完全に油断をしていた……。

三連休に気が緩んでいたのかもしれない。


「ガイアス、それは……。エリス、無理して言わなくていいわ」


シロナがフォローに回ってくれるが、本当は彼女も知りたがっているだろう。エリスは能力がバレた時の言い訳を発動する。


「いいんです。隠すつもりはありませんでしたから。私は各地を転々としながら、冒険者をやっていました」


エリス・フローリアの経歴にも、ちゃんと冒険者としての活動が偽装されている。能力が隠しきれなかった時に、冒険者という職はいい隠れ蓑になるのだ。


「場数だけは踏んでいるので、少しは戦えます」


優秀な金の卵たちに囲まれながら、学園生活二年目までこの言い訳を使わなかったことを寧ろ評価するべきだと思いたい。


「やっぱり、大会では手を抜いてたんだ」


ガイアスの確信的な言葉にエリスは少しムッとして答える。


「……ガイアス様には言われたくありません。平民が出しゃばって良いことは無いですし、私は学園で勉強ができればそれでいいんです」


だいたいこれで自分の身分は確定した。

ここから軍人だと疑われる可能性はかなり低いだろう。


「冒険者……。いつからやってたの?」


アルレンが心配そうに訊く。


「ひとりになってからだから、6歳の時からかな-」

「「6歳!?」」

「嘘でしょ…大丈夫だったの?」

「それはまあ、冒険者だから色々と。でも、助けてくれる人もいたし、この魔石も貰えたから。気にすることないよ。おかげで今はこうやってすごく充実してるし」


この前ぶり悲しい顔をみたエリスは、そう微笑んで彼女の頭を撫でる。すると、ちょうどそこで扉を叩く音が。


「失礼いたします。お食事の用意が整いました」

「わかった」


アランが執事に返事をする。


「切りもいいから、ここまでにしよう」

「はい。食事の後、明日の時間だけ決めて、あとはみんなでゆっくり過ごしましょう。せっかくのお休みですし」

「そうだな」


そういうことで、一同は夕食を摂ることになった。

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