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〜転生者達の傭兵国家〜  作者: あぱ
軍人少女
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「あ、エリス!」

「遅れてすみませんでした」


店に避難していた運営メンバーたちと合流したエリス。


「大丈夫よ。お疲れ様。元気にしてた?」

「はいっ。この日のために頑張って来ました!」


シロナ顔が近くなって、彼女は眼福に感謝する。この三日だけは誰にも邪魔されまいと仕事をして来たのだ。嬉しくて仕方ない。


「揃ったな。行こう」

「あの、アリスは?」

「後から直接屋敷に来る」

「そうでしたか」


天使の姿が見えないと思えば、そういう事だそうだ。


(それにしても……)


市井に下りるために変装している皆さんだが、全くオーラを隠せていない。眩しいぜ! と呑気に感想を言っている場合ではなく、護衛の問題など、迷惑をかけてしまったことだろう。


「わざわざ町で待ち合わせをさせてしまって、申し訳ございません」


もう少し上手く対応できたのではないかと、浮かれていたエリスは反省した。


「そんな! 気にしないで、エリス」

「しかし……」


申し訳ない顔をする彼女にカーナはそっと耳打ちする。


「ねぇなんでエリスってその事に気にするの?普通ならきにしないよ?」


(もしかして、私が軍人だと気づいてる?)


「いぇ、変装は、してるものの、オーラが隠せてないですし…」

「「…」」


(うわぁー!私もしかしてやらかした?)


「ふふ、エルスは、おもしいね。じゃあ気を取り直して行こうか」


一行は店の裏につけてもらった大きな馬車に乗り換えて山を越える。向かうのは、アラン殿下の――言い換えると皇上の別荘である。


「紫翠の宮に行くのは久しぶりだ」


ガイアスは行ったことがあるのかアランに言う。


「わたしも学園に入学してからは行っていない。あそこは魔法無しでも涼しくて過ごしやすい場所だ。きっとシロナも気に入ると思う」


すぐにシロナへ話を振るところから、溺愛ぶりが伺えてしまう。イチャイチャし過ぎて、作業が長引くなんてことは無いようにだけして頂きたいところである。

一度シロナには、その溺愛ぶりを第三者目線から見てもらいたい限りだ。



(——あぁ、まずい……)


移動になんて時間をかけない彼女は、馬車でのらりくらりと移動するのは久しぶり。寝不足に疲れも溜まっていたため、丁度いい揺れにうとうとし始めた。膝の上に作った握り拳に力を込めるが、一瞬でも気を抜いたら寝てしまう。

外には騎士がついているが、ここで寝てしまうのは無礼には当たらないだろうか。寝言なんて喋ってしまったり、間違ってもよだれを垂らす訳にはいかない……。

悶々と頭で考えていた彼女であるが、いつの間にか瞳は閉じていた。


エリスがびくりともせず俯いて眠りについていることに気がついたのは、斜め前に座っていたアルレンだった。

席はアルレン、アラン、シロナと座っている前に、エリス、ウレック、ケルヘラム、ガイアス。

執事として周りに気を配ることが必要とされるアルレンがいち早くそのことに気がついたのは当然なのかもしれない。


「アルレン?」


彼は徐に上着を脱ぐと、エリスにそれをかける。

それを見ていた他のメンバーは少し驚いた視線を向けていた。アラン以外、それも庶民を相手に気を遣うアルレンは珍しかったのだ。


「……今朝も仕事だったそうです」


アルレンはそれ以上は何も言わず、いつもの通りポーカーフェイスでアランの隣に座っている。居心地の良い静寂を馬車がまとうのは、彼が魔法をかけたから。

それは、自分と同じく知らないところで働いている彼女に表した些細な敬意だった。



「そろそろ着くな」


背中越しに外を見たアランが告げる。避暑地として有名な山にそびえ立つ紫翠の宮は、かつての皇上が愛妻のために設けたものだ。夜には星を眺められるようにと、縦に長い建築で、華奢ながらも可憐さを感じる美しい宮である。


「じゃあ、起こすか!」


ウレックが隣で熟睡しているエリスに手を伸ばす。


「エリスさん。もう着くぞ」

「っ!?」


彼が肩を揺らすと、まるでお化けでも見たような顔でエリスが飛び起きる。その弾みでアルレンがかけた上着が滑り落ちた。いつもの癖で相手と距離を取ろうと狭い空間で仰け反り、臨戦態勢に入りそうになった途中でそこがどこだか気がつく。


「え、あ、いつの間に……。すみません」


構えかけた手をはっとして下におろして上着を拾う。


「これは」

「わたしのです」


アルレンに言われてエリスは胸中安堵する。アルレンもお偉いサマの息子さんには変わりないが、その仕事柄この中では庶民でも関わり易い相手だ。


(確実に無いとは思うけれど、もし殿下のお召し物を落としていたらと考えると震えるわ)


彼女は簡単に風の魔法を起こして服を払いアルレンにそれを差し出す。


「すみません。ありがとうございました」

「いえ」


先ほどから世話になってしまって面目ない。

エリスは、そこで視界の端に見えてきた紫翠の宮に気がつく。これから三日間あの場所で庶民もどきである自分も生活することになる。シロナとアリスと一緒にいられることが嬉しくて忘れがちだったが、よく考えてみると凄いことだ。

今更だが、殿下の元でお世話になるという事実を理解した

エリスは一体どんな顔をして宮に居れば良いのかわからなかった。


「お待ちしておりました」


到着すると、ビシリと燕尾服に身を包んだ執事が丁寧に出迎えてくれる。夏でもその格好は暑く無いのかと問いたいところだが、魔法なんてものが存在するこの世界では気にする必要がない。


(まあ、見てる側からすると暑そうなんだけれど)


彼女は馬車から降りると彼らの一番後ろを着いて行く。


「綺麗な城……」


紫翠の宮には初めて来たエリス。お伽話のような世界観に感嘆の溜息が漏れる。ここに来た目的が学園祭の準備だということが夢のようであった。アリスが居てくれれば、「うわぁ、すごいね〜!」なんて話を弾ませてくれただろうに、

シロナしか頼れる友がシロナしかいないので少し気まずい。


「なに? 緊張してるの?」


大人しくしていた彼女に声をかけてきたのはガイアスだった。


「それは、まあ、少しは。私は平民ですから」

「ふーん。ここには俺たちしかいないから、気を張る必要は無いと思うけど?」


普段彼を避けているエリスだが、こういう時には女誑しも役に立つなと感動する。


「ありがとうございます」

「別に。事実を言ったまでだよ」


珍しく礼を言われた彼も素直にそう返した。


「今朝も仕事だったって聞いたけど、何やってるの?」

「主に(魔物の)清掃を。ああ、(ある意味では)調理もします。(研究などの)事務作業もたまに」

「へぇ。色々やってるんだ。だからそんなクマができるほど忙しいわけ?」

「え?」


ちゃんとメイクで隠したはずなのだが、言い当てられてドキリとする。


「なんで」

「いつもより化粧が濃い」

「……よくわかりましたね」

「女の子とは仲良くしてもらってるから」


エリス瞳が細くなる。ガイアスはそれを見逃さなかった。


——きっと心の中では、またこの男は……と文句を言っているのだろう。


本当は彼女の体も少し細くなったことも気がついていたガイアスだが、それについては何も言わないのであった。


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