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〜転生者達の傭兵国家〜  作者: あぱ
軍人少女
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「ああ、もう! 何で私はヴァンドールに通えないの?!」


そう声を荒げる少女に、控えていたメイドたちがびくりと肩を震わせる。


「落ち着けライア。学園なんて通わなくても、お前の望みはもうすぐ叶う」


彼女を諫めた男は、優艶な笑みを浮かべてそう囁く。

そこは魔国またの名をベルドルーク王国の城一室。

なぜ魔国とよばれているかは、魔大陸最強の国であるから、魔国と呼ばれている。だが、本当の名はベルドルーク王国と言う名だ。


支配下に置いた国々から富という富が収斂される豪華絢爛な城で、彼女は何不自由なく暮らしていた。


「それは本当ですか?エルドレッド様?」


ライアはまるで肉食の獣のように危険な野心を覗かせる瞳をする男に、そう尋ねる。その男こそ、この城の主—ベルドルーク王国 国王 ラインハルト・フォン・エルドレッドである。


「ああ。お前のお陰で順調に準備は進んでいる」

「それなら! もうすぐアラン様も手に入るということですか!」

「そうだ。モルタの皇子だけじゃない。あの国の全てがわたしのものになる」


エルドレッドは美酒の入ったグラスを仰ぎ、喉を鳴らしてそれを飲む。ライアは夢にも踊るような心地で、彼を見上げた。


彼女もこの世界の小説と類似した場所だと知る転生者だ。

十二歳になった時、記憶を取り戻した彼女は自分も学園に入学して小説の世界の一員となろうと動き出した。


モルタの田舎にある庶民の家に生まれたライア。例え転生者であろうと、努力しなければヴァンドールには到底入ることはできない。彼女なりに努力して学園を目指したが、庶民の身にはとても難しい門だった。


——それなら何で、私はこの世界に転生したの?!


追い詰められた彼女は苦しんだ。

この世界が何度もプレイした小説の世界だと知っているのに、何もできない無力さに打ちひしがれる。


「何のための記憶なの? どうすれば、この力を……」


そうしてたどり着いた答えが、モルタの敵国である魔国に先読みとも呼べるこの能力を認めさせることだった。

冷静に考えれば、どうしてそんな事を思い立ったのか不思議なのだが、まるで運命にでも導かれたかのように、彼女はいつの間にかこの道を進んでいた。


魔国に渡ったライアの先読みは、モルタに潜入している諜報員によって証明され、皇帝に重用されるように。

今では「先読みの巫女」と呼ばれる存在にまで成り上がった。


(私にだってなれるの、この世界の主人公に)


かつてとは異なり、ライアの瞳は希望に満ち溢れている。


エルドレッドはライアの部屋から出ると、自分の部屋に戻る。


「先読み様の言う通り、秋に学園祭が行われるようです」

「ああ。あの学園が始まって初めての試みだな。必ず穴ができる。あいつの言うシナリオ通りに話を修正し、最後の大舞台であの学園を破壊してやる」


報告を聞いたエルドレッドは楽しそうに口角を上げた。

長年、シアンとは決着のつかない争いばかりしている。

だが、それもここまでだ。


「金の卵も、孵らなければただの卵だ」


何年もこの時を待っていた。

モルタに存在する学園に集まる敵の卵たちを一掃してしまえば、自ずと勝機はやってくる。ずっと前に学園へ放った密偵も、ずっと息を潜め、獲物の首元を静かに狙っている。

外から崩せないのならば、内側から崩壊させればいい。

ヴァンドールは、絶好の場所だった。


「あいつの言う “モブ” 、危険因子はどうなった?」

「……未だに未来を曲げているようです」


手下の男は冷や汗を流しながら、何とか告げる。


「ほぉ? 面白い。小娘ひとりに先読みを変える力があるのならば、わたしにも未来を変えることができるだろうな」


クツクツと笑うエルドレッド。

今の報告で機嫌を損なうことは無かったようだ。男は首の皮が一枚で繋がった気分である。


「下がっていい。奴にうまくやらせろ」

「ハッ。帝国に栄光を」


小説の舞台裏では、大きな歯車がすでに回り出していた。



だが、エルドレッドやライアに関係する人物は、知らない。どの人物の邪魔をしようしとしてるのかを。


彼女は、人の域に留まっているだけで、神と同質な存在であると。


後に知ることである、帝国にこの少女がいる限り王国は、何をしても無駄だということを…




***



「お疲れさまです。少し休憩にしましょう」


恒例となってきたシロナの手作りお菓子でひと休憩。

なんてホワイトな! とエリスは感動しながらいつも人一倍お菓子を頬張っている。そうそう。今の彼女は、前髪を編み込んで部下からもらった髪留めでまとめるという当初のスタイルを維持している。シロナとアリスには残念がられたが、誕生日会の格好は気疲れするので、特別な日にでも使わせてもらうつもりだ。


「だんだん見えてきましたね、学園祭!」

「そうだね」


アリスにケルヘラムが頷く。


「そろそろ定期考査と短期休みになるけれど、どうするの?」


意外に真面目くんなガイアスがシロナに問う。


「各自、無理をしない範囲で進めていきましょう。でも、お休みに入ったら、一度集まりたい気もしますね。学園祭全体のテーマに沿った装飾をわたくしたちが手掛けたいと思っていますから」


「了解。俺は女の子とのデートが被らなければ、別に構わないよ」


もともと大人びているのに、二年生になって更に女誑しに磨きがかかっている気がするのは気のせいなのだろうか。

エリスは恥ずかしげもなくそんなことを公言できる彼に、ある種の尊敬を抱く。マドレーヌを食べながら、ことの成り行きを見守っているとシロナの視線が自分に向いた。


「その、ラゼは来れそう?」


少し躊躇ったところを見て、またまた気を遣わせていることに気がつく。


「来てくれると、すごく助かるんだけれど……」


(そんな可愛いお願いの仕方は反則です)


今回の休みには、学生らしく短期休みに遊んでやるんだ! と決めていたエリスは強く頭を縦に振る。


「行きます! 今回は絶対に予定を開けますから!」


「「本当!?」」


2人に花が咲いた。こんな顔をさせるまで、お休みに遊べなかったなんて罪だ!エリスは何がなんでも彼女たちと会う時間を作ろうと誓う。


「エリスちゃんの家に近い方がいいよね!」

「そう言えば、エリスってどこに住んでいるの?」


(そんな私ファーストでいいの?!)


エリスは感動を隠せない。


「首都に近いので、場所はあまり気にしないでください。移動魔法で駆けつけますし」

「そう? なら、わたくしの家でいいかしら?」


言い出したのはわたくしですし、と言うシロナにすぐさま口を開いたのはアランだった。


「いや。わたしが場所を準備しておく」

「よろしいのですか?」

「ああ。シロナにばかり負担をかける訳にはいかないから。これくらいわたしの方で簡単に手配できる」


御坊ちゃまは言うことが違う。

シロナの家に自分以外の男なぞあげて堪るか、という魂胆が見え隠れしているが、知らないフリをしておこう。


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