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〜転生者達の傭兵国家〜  作者: あぱ
軍人少女
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「アリス。重いでしょ? 代わるよ」


エリスは重たそうな資料を抱えるアリスから、ヒョイと荷物を取り上げた。


「え、でも、エリスちゃんも」

「私、身体強化はスキルの次に覚えがいいから、平気だよ」


本当は身体強化などしなくても、このくらいの荷物であれば鍛え上げた筋力が支えるので問題ない。

エリスは、軽めの乙女ゲームイベントを代わりにこなしながら、学園祭の準備をしていた。彼女は先日の出来事を思い出して、隣を歩くアリスを横目に見る。


「そうだ。エリスちゃん」

「ん?」

「日曜日って空いてる?」

「空いてるよ」

「良かった! じゃあ、遊びに行こう!」


エリスは隣の天使のためならば、これくらいの心の痛みは何とも無い。


「礼拝堂はいいの?」

「昨日から行く回数減らしたの。あんなことあったしね」

「確かにね。ごめん」


運営委員会の教室に入ると、机の上で何かを広げていたシロナがパッとそれを隠した。


(何だろ?)


気になりはしたが、アリスにでも見せたら不味いものなのかと考えて、エリスはそれに触れない。


そんな様子のエリスを見て、シロナはホッと息を漏らした。彼女はアリスの元に行くと、小さな声で耳打ちする。


「どうでしたの?」

「空いてるそうです。遊びに行く約束をしましたから、ばっちりですよ!」

「わかったわ。こちらも準備はいい感じですわ」


ふたりは顔を合わせて、確認するようにうんと頷く。


「私、この資料をグレイス先生に提出してきますね」

「ありがとう、エリス」

「はい。いってきます」


部屋を出て行ったのを見計らい、シロナは先ほど隠した紙を表に返した。


「さて。今年はちゃんとエリスの誕生日を祝うわよ!」

「はいっ!」


そこにはエリスの誕生日会の計画が。偽造しているので本人は忘れているが、日曜日はエリス・フローリアの誕生日なのである。


「サプライズパーティーとは、手が込んでいますね?」


アルレンが計画表を覗き込んで、そう尋ねる。


「うん。二回分の誕生日会だからね。びっくりさせたいんだ!」

「去年はまさか誕生日が過ぎていたなんて思わなかったわ」


シロナは不覚だとため息を吐く。星祭り休みが明けて誕生日を聞けば、とっくに過ぎていたことには驚かされた。


「エリスちゃん、自分のことについては無頓着だよね」

「あ、それ、わかるわ。きっと自分が一部の男の子たちから人気があることも知らないわよ?」


アリスはそれを聞いて小首を傾げる。


「うーん。それはそれで、視線を集めていることには気がついているみたい」

「あら、そうなの? 意外」

「でも、エリスちゃん『庶民の特待生だから、手綱を握って置けば将来役に立つかもしれないと思われてるんだよ』って言ってました」

「…………そうなの」


たちの悪い無自覚だ。シロナはいつも飄々としているエリスを思い浮かべ、そのことに納得してしまう。


「案外、その通りなんじゃないの?」


いつから居たのか、扉を開けて入って来たのはガイアスだった。シロナは少しムッとして彼に言い返す。


「きっかけはそうかもしれないけれど、エリスは可愛いのよ?」

「……ヘェ」


何人ものお嬢様を相手しているガイアスからすると、可愛くないとは言わないが、エリス以外に美人はたくさんいる。


「頑張り屋さんで成績はいつもトップだけれど、戦闘はちょっと苦手で、あの小さな体で剣を構えてるギャップがいいって言う人がいるの!」


ガイアスはふーんと鼻を鳴らして、興味が無さそうに席に着く。一見チャラチャラしているが、仕事はちゃんとこなすタイプなので、今日も手際良くやることをやるガイアスである。


「もう……。エリスも、もう少しお粧しすれば、凄く可愛くなると思うんだけれど」

「わたしのお化粧は、毎回エリスちゃんがやってくれてるよ? メイクが苦手ってことも無いと思います」

「じゃあ、やっぱり自分のことには無頓着ってことね」


シロナは少し考えてから、計画表にあることを書き加える。


「日曜日の主役はエリスなんだから」


楽しそうに笑うシロナを見て、教室には和やかな空気が流れるのだった。

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