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〜転生者達の傭兵国家〜  作者: あぱ
軍人少女
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バトルフェスタは、5年A組の先輩が優勝して幕を閉じた。通常授業が始まって、ラゼは程々に勉強を頑張りながら学園生活を送っている。


ヴァンドールにも大分慣れたので、小説のイベント以外は特に変わり映えしない普通の毎日。授業が終わると、アリスとシロナ、又はどちらかと図書館か寮に戻るのがお決まりだ。ただ最近変わったことと言えば、


「エリスちゃん。礼拝堂に行ってくるね」

「いってらっしゃーい」


アリスが朝、手紙を書くことが無くなり、礼拝堂に足繁く通うようになったこと。彼女の弾んだ足取りを見送る。

その理由は簡単で、アリス大好きクローディアが、聖職者として礼拝堂に勤務することになったからだ。


これは、エリスがお願いしたのだ。理事長と話し合った結果、いくら軍人であっても学校から出るというのは、宜しくないので聖職者でクローディアをこの学校にある礼拝堂に移転させたのだ。いくら不当なことをしてるからと言っても国王の命令は、絶対だから移動しないわけには、行かない。

もう少ししたら殺害するのでアリスには、存分に話してもらいたい。


シロナは殿下とラブラブデートなので、ひとりになったエリスは廊下を進みながら、ハァとひとつため息をついた。


ひとりで寮に向かいながら、チラチラと降る雪を見あげた。そこでふと訓練場で剣を振っている男子生徒がひとり、視界に入る。


「あれは、ウレック様? 雪降ってるのに感心だなあ」


ウレックが素振りをしているところを見つけたエリス。どこか差し迫った雰囲気を感じ、足を止めた。あっという間に季節は冬。一ヶ月後には、もう冬のトーナメント戦が控えている。ウレックもきっとそれに向けて鍛えているところなのだろう。楽しい学園生活も一年が終わろうとしていた。

少しそれが寂しくて、エリスはしんみりしながら再び廊下を進む。


「ちょっと、あなた」

「はい?」


とぼとぼ歩いていたところを気の強そうな声に呼ばれてエリスは顔を上げる。そこにいたのは、制服のカスタムを最大限にドレス風になさったキラキラお嬢様。後ろにも女子数名が控え、まるでどこかの悪役令嬢みたいだ。


(ん? 悪役令嬢?)


エリスは嫌な予感がする。


「もう我慢できません。特待生だからって、庶民が調子に乗ってるんじゃないわよ? シロナ様が優しくして下さっているのは、彼女があなたを可哀想だと思って同情なさっているから。頭が良いのなら、それくらい分かったらどうなの?」


(…………ウワァオ)


彼女は目の前の出来事に、開いた口が塞がらない。

まさか自分がこういう事に巻き込まれるとは。漫画の中だけの話だと思っていた。

もしかして、私はヒロインポジションに昇格したのか?!と心の中でちょっと喜んでみたり。


「ここは貴族の学園、ヴァンドールなの。身の程を弁えるのもお勉強じゃない? 庶民さん」


ごめんなさい。隠してはいますが、名誉貴族です。という言葉は飲み込んで、エリスは大人しく話を聞く。

これは果たして、乙女ゲームのしわ寄せなのだろうか——。


「聞いていますの?」

「……ハイ。確かに私は心のお広いシロナ様に甘えていたのかもしれません。が、彼女が私を友人と認めてくださっている以上、関わらないことはできません。後ですねこの国では、実力が全てですよ?私に1つでも勝ってから言ってみたらどうです?」

「なっ! 生意気な!」


(これだから温室育ちのお嬢サマは苦手なんだよなぁ)


標的が自分以外に向かないよう、エリスはわざと挑発ぎみな言葉を返す。これがもし、本来ならアリスに起こるイベントであったのならば、自分が肩代わりする義務があった。

アリスには、辛い役回りがこれからあるのでそこまでは、メンタルは、やられて欲しくないのだ。


「身分の差というものを教えてあげるわ!」


令嬢はその言葉を残して退散していく。寒いのにわざわざ待っていたなんてご苦労なことだ。


これを機に一年C組のベータ・ヤコック を筆頭に、エリスは嫌がらせを受けることになるのだが、どれも笑ってしまうような可愛い手ばかり。定番の持ち物を傷つける系の嫌がらせは、転移魔法で荷物を持ち歩かないのでできないし、ぶつかって倒そうとしても軍人相手なのでびくともしない。


「なんなのよ! もう!下民風情が!」


今日も今日とてエリスが嫌がらせスルーをしていると、後ろにベータの嘆きが聞こえた。

頑張っているのに、何だか不憫である。


「特待生」


歩いていると、エリスを見つけたガイアスが声をかけてきた。彼女のことを「特待生」と呼ぶのは彼くらいだ。


「なんでしょうか」

「殿下が探してた。またシナリオについて聞きたいみたい」

「わかりました。わざわざ連絡ありがとうございます」


殿下と和解し、エリスは情報を提供するようになった。彼は得た情報を利用してシロナとイチャイチャする悪なので、シロナも(嬉しい)苦労をしていることだろう。


「で、彼女たちは?」


ガイアスは彼女の後ろに見えベータを目で指した。


「ああ。私に実力が及ばなくて惨めな令嬢方ですよ」


エリス笑顔でガイアスに答える。


「では」とエリスはその場を後にすると、ガイアスは物言いたげな顔をしていた。


「この学園に慣れたのか?あんな顔今まで見たことないや」





(やっぱり可愛くないよな。あいつ)


つまり訳すと嫌がらせを受けているということだ。

最近、エリスの周りをC組の女子がうろうろしていると思えば、そういうことだったらしい。ガイアスはつい先ほどの会話を耳にするまで、エリスが嫌がらせを受けている可能性すら気がつかなかった。彼女の言い回しからすると、もっと前から気分がいいとは言えない言葉を浴びせられてきたのかもしれない。もしかすると、それ以上のことも……。


一番の問題は、エリスが決して強がりで気にするなと言っていないことだ。きっと彼女はなんでもない顔をして、知らないうちになんとかしてしまうのだろう。ガイアスにはそれがわかる。だから、可愛くない。面白くない。


——じゃあ、自分はどうする?


気にするなと言った、どこか食えない彼女を思い浮かべてガイアスは考える。それは一目置いているエリスに対してのちょっとした対抗心から来るものだったと思う。

嫌がらせを受けていることを気付かせない彼女も嫌だが、それに気が付けなかった自分はもっと嫌だった。


彼は踵を返すと、ベータたちが消えたのと同じ方向に歩き出したのだった——。


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