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いつの間にか白い空間でエリスは、浮遊していた。
「まさかー神が介入してくるなんてーねー」
「悪神?私死んだの?」
「君は、死んでないよ。お仲間が助けてくれてるんじゃない?貴方には、私の権能があるから死ぬことはないけど」
「権能?まさか天理眼のこと!?」
天理眼は、この悪神を直接目にしてから発現したので何となく分かっていたが事実を知ると頭の中がスッキリした。
「そうだよ。人間が高次元の存在である神をみたから発現したのよ。普通なら使った瞬間失明するけど貴方には、扱うだけの才能があったみたいね」
「へー。それで他は、どうなってるんですか?」
「時間は、止まってるわよ。あと、この物語に介入してきた神々は、ここ。」
「え?」
悪神が胸からビンを取り出すとさっき会った神とほか数人が小さくなって捕まっていた。
「これが神ですか?あなたが捕まえたんですか?」
「そうだよ。神とはいえ力の差がありすぎて相手にならなかったわ」
その言葉を聞きエリスは、冷や汗をかく。まさか私が手も足も出なかった相手を雑魚と評したのだから。
「そうだ。この神の力を貴方に授けて将来この世界を見守って貰おうかしら。神になったら自分の分身なんて何個も作れるし」
「見守るですか?」
「そうよ。この世界は、突然できたから色んな神や邪神、悪神が狙ってきて奪われてしまうかもだし」
「分かりました。では、力を下さい」
「ふふ、図太いっていうかなんていうか。まぁいいわ。起きた時には、力を得てるはずよ。後、そろそろ起きた方がいいんじゃないかしら?」
そう言われると意識が覚醒していく。
「っつー!」
ガバリと起き上がったエリスは、その勢いのままいきなり文句を飛ばす。すぐに服をめくり上げ、刺された腹の傷を回復魔術で塞いでもらったことを確認する。腹を刺されて起きたら開口一番がこれだ。ちょうど彼女の様子を見に来た
ファルスが目を瞬かせる。
事件から二十分後。
あまりにも早いご起床である。
「目が覚めたか」
「っ!理事長! これはご無礼を!」
こんな情けない格好で理事長を迎えてしまい、エリスは慌ててベッドの上で正座する。
「……元気そうだな」
「ハイッ。すぐにでも任務に戻ります!」
「まて」
「は、はい…」
「任務は、いいから休みなさい」
「でも…」
ファルスはぴんぴんしているエリスを見て、安堵のため息を漏らした。
「一体何があった? 彼女は、数日の記憶がない状態で寮の部屋で発見された」
彼はベッドの横にあった椅子を引き出して座る。
エリスはどう説明したものかと悩んだが、シロナの予言を立証することはできるので、そろそろ報告しなければならないと腹を括った。
わかりやすく、物語のようにし説明し、シロナが未来を予言することができることを伝え、その中に出てこないはずの自分が邪魔だから世界の秩序を守るために殺されかけたことを告白すると、ファルスが唸った。
「……確かにそれは、報告が遅れるのも仕方ない。が、君はそれで死にかけたんだぞ? 困った時には頼れと言ったはずだよな?」
「も、申し訳ありません」
「まさか、神が接触してくるとは…良く生き残ってくれた…」
「それは、また別の神に助けられまして。これは、また今度お話します」
彼から初めてお叱りを受けたエリスは、思わずそのまま土下座する。
「ハァ。頭を上げなさい。君にはもっと自分の身を大事にすることを学んでもらわないとな……」
顔をあげると、ファルスの困った顔が目に入った。
「しかし神々か。また狙われたらどうする?」
「ああ。それなら1回食らったら私には、聞きませんからご安心を」
「そんなこともできるのか」
「……何というか、流石だな」
「はい。凄いですよね。」
「……」
とりあえずは、シロナの破滅イベントがどうなるか分からない以上、ひとりで対応するのはリスクが高すぎる。
殿下に事情を説明してガッツリとシロナを囲って欲しいところだが、それはカーナ次第だろう。
「理事長先生」
「どうした?」
先生と呼ばれたファルスは、生徒のシロナと向き合う。
「その。差し出がましいことは承知の上で申し上げますが、できることならシロナや殿下たちが自然な学園生活を送れるよう、なるべく介入は少なくして頂くことはできませんか?」
ファルスはその言葉を聞いて舌を巻く。
彼女も一生徒だというのに、大人がやれば良いことにまで気を回して、疲れはしないのだろうか?
「わかっているよ。だから、君の入学許可も下りたんだ。
これも天が与えた試練なんだろう。あの子たちならきっと乗り越えられるさ」
「ハイ」
エリスは力強く肯いた。
「平気なら友人たちに顔を出しておいで。君が狙われて倒れた以上、ここに彼女たちを入れるのは危険だったから心配させている。
幸い、彼女は幻術使いで君も移動系スキルの使い手。見えない戦闘があったことになっている。君は腹部に軽傷を負って、ここに運ばれたことになったから、そのつもりで」
「はい。……この度はご迷惑を」
「気にするな。混乱を避け、相手を泳がせるためにバトルフェスタは続行する。君には頑張ってもらわないとね」
「かしこまりました」
ファルスが部屋から出て行く。
エリスも服を着替えて、医務室長に挨拶してから救護室を出た。
「もらった服じゃなくて良かったな〜」
観客席に着くために走っていると、途中ガイアスとすれ違った。なんでそんな人気のない暗い場所にいるのかなーと疑問に思ったが、スルーして走り去ることに。
「はっ?」
彼はあり得ないものを見た顔で二度見する。
何事もなかったように走り去ろうとするエリスの腕を咄嗟に掴んだ。
「わぉっ」
全く女子らしくない声が上がって、エリスの体が後ろに傾く。ガイアスはそれを受け止めた。
「な、なんでしょうか?」
「君、こんなところで何してるの? 怪我は?」
そんなに動いて、まさか抜け出してきたんじゃないか? と目線が言っていて、疑われてムッとしたエリスは向き直ってシャツをめくる。
「この通り完治したので平気です」
「っ! 何してんの?!」
ガイアスは顕になったエリスの腹を見てギョッとし、すぐに服を下げさせた。
「かすり傷みたいなものですから、ご心配には及びません。あ、二回戦進出おめでとうございます。相手は三年生だったのに流石ですね。私なんて戦闘不能になってしまったので、一回戦負けです」
彼女はアハハ〜と笑った。偉い人は自分は卑下して、持ち上げるべし。そんなエリスの言葉を聞いて、ガイアスが被さるようにして彼女を壁際に押し付ける。
「え。あ、あの。ガイアス様?」
さらさらの銀髪に隠れて表情が読み取れず、エリスは焦った。何も言わないで、カツアゲされるのは妙に迫力があって怖い。
「……何勝手に、俺以外の奴に負けてんの?」
間近に整ったお顔がいらっしゃり、エリスの呼吸がヒュッと音を立てて止まる。拝見したご尊顔は、全く笑っていなかった。
(お、怒ってる。怒ってるよ、総帥の息子さんがっ! そして近い!)
シルバーの瞳に射抜かれて、彼女はカチコチに固まる。
握られたままの腕が痛いし、目線も怖いし、今すぐここから逃げ出したい。
「す、すみま——ムグッ」
取り敢えず、どうやら彼を怒らせるようなことをしてしまったようなので、エリスが謝罪を口にしようとすると、片手で頬を挟み込まれる。
「全然、謝る気なんてないでしょ?」
「……」
今、だいぶ酷い顔をしていると思う。
エリスはじとーっと目線で「離せ」と合図を送ると、ガイアスはついに吹き出す。
「ははっ。ほんっと、かわいくないね」
「そんなの自分が一番よく分かってますよ。美形なガイアス様は沢山応援してくれる方がいらっしゃって、羨ましいです」
「あの1つ勘違いしてない?別に君の容姿なんかどうでもいいんだけど。可愛くないのっていったのは、君の性格だよ」
「えっ?」
(性格が可愛くない?そっか私今まで人や魔物しかころしてなかったもんね。小さい頃から軍人として生きた代償かな…)
「まぁいいや。そのままの性格だとこの先彼氏できないよ?」
「アドバイスありがとうございます」
「はぁ…ダメだこりゃ」
腕を離して貰えたので、エリスはさっさと彼から抜け出し会場に歩き出した。はその後ろ姿を見て、一瞬だけ真剣な眼差しに変わったが、すぐにいつもの表情に戻って彼女のあとを追う。エリスは彼がついて来るのに気が付いていたが、気にしたら負けだと思い、そのまま無言で観客席に戻った。




