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〜転生者達の傭兵国家〜  作者: あぱ
軍人少女
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時は戻り短期休みが終わった。


「団長〜今日〜学校じゃないんですか〜」

「おはようエット。そうだよ。三十分後に転移するから、それまでにはこれを終わらせるよ」


始業式当日にも関わらず、普通に仕事をしている上司

エットは目を瞬かせる。戻って来てから、休みなく働いている彼女は少し痩せた気がする。元から小さいのに、痩せてしまっては心許ない。


「ルナラ教授に深層の新種についての報告書を提出して行かないと、学園に乗り込まれる可能性が否定できないからね」


魔物を研究しているルナラ・フォーリア・アトランスは、魔物大好きな変態研究者だ。

エットは「白衣を着た狂人」と呼ばれる彼女を思い出して、ウッと顔を引きつらせる。


「やりかねませんね〜」

「でしょう?」


エリスは黙々と手を動かして、なるべく細かく報告書を書き上げた。


「よし。じゃあ、エット。私はまた席を空けるから、またしばらくお願いします。皆にもよろしくね!」

「ハイ」


本当に頼もしい部下だな、と彼女は微笑んで自宅に飛ぶ。エリスは、家に帰ると、部下がくれた新品の服に袖を通した。スカートは得意ではないのだが、大事な仲間に貰ったものはちゃんと着る。てきぱき着替えを終えると、鏡の前に立って身嗜みのチェックをした。


「バトルフェスタか。それが終わったらアリスには、少し落ち込んで貰うことになるけど大丈夫かな……」


これから、起こることは、国が騒ぐことになるだろう。

短期休みの間にクローディアがやっていることを全て調べたので陛下に許可を貰った。



「エリスちゃーん!」


転移して真っ先に声をかけて来たのは天使。

まるでそこだけ別の世界が広がるアリスの神聖さに目を細めながら、エリスは飛び込んできた彼女を受け止めた。


「久しぶりだね。元気にしてた?」

「うん!」


アリスに抱きしめられながら、エリスは学園に戻って来たのだと実感する。


「アリスさん。エリスが苦しそうよ」

「あ!シロナ!」

「ねぇエリスちゃん髪染めた?」


(あ…髪色変えるの忘れてたー!)


別に髪色の指定などないのでいいのだが、イメチェンしたのかとクラスメイトに見られるのはいい気分しないので最悪な気分に陥った。


「あ、うん。暗い色より、似合ってる?」

「うん可愛いよ!」

「そうよ!」


いつものサンコイチが集合し、エリスの両手には大輪の華が咲く。三人はまず寮に戻って制服に着替え、再びホールに集まる。始業式を終えて、バトルフェスタの説明を受けた。さすぎに5000人でやるには、多すぎるので上位A.B.C組の5学年全員でトーナメントが開始される。

5年生たちは進路直結の大事な大会なので、緊張感が違った。そして、出られない生徒は残念だがランクの高い役職には、付けなくなる可能性が高くなってしまう。

対戦表が発表されると、あちこちから声が上がる。


エリスの初戦の相手は、5年B組の男子生徒。

勝ち上がったら総帥の息子を負かしてやると思っていたのだが、ファルスとの話し合いでエリスは早々に負けて警備に当たることになっている。彼女が本気なんて出してしまえば、簡単に優勝できることはフォルスもご存知だったので、自粛してもらうことにしたのである。

それに、今回は保護者たちも観戦に来る。

彼女の仕事柄、存在はなるべく隠す必要があるので、ここでは目立たないようにするのが無難だった。


「うう、緊張するな……」


隣で青い顔をしているアリス。

ちゃっかり指輪をしているのを見つけたエリスは、我が子を見守る母親のような目つきで彼女を見た。


「大丈夫だよ。お守りもあるみたいだしね?」

「あっ、へへ。クローディア様がくれたの。お休みの後半は忙しそうであまり会えなかったんだけれど、『すぐに会える』って言われたんだ」


嬉しそうに微笑むフォリア。最後に会うことになるだろうから楽しんで欲しい。大会直前期は、授業も実技のみになる。だだっ広い訓練場には大勢の生徒たちが、それぞれ自主的に自分に必要な魔法の扱いが得意な先生に教えを乞う。

水も滴るいい男、ということで一部女子生徒が騒いでいるのにはもう慣れた。

彼女たちは玉の輿狙いなのだろうとエリスは断定する。

そうでなくては、呑気に黄色い歓声を上げていられないのだ。


「はぁっ!!」


そこで逞しい女性の声が聞こえて、人だかりができた場所にエリスは足を運ぶ。

その中心には、三年生の男子生徒相手に鉄拳を食らわす見覚えのある赤毛の女子が。


「ルナ先輩?」


うずくまる男子生徒の前で、フゥーと息を吐く彼女にエリスは目を丸くした。


「さ、さすが、3年でのシード。喧嘩なんて売るもんじゃねぇな」

「あいつも馬鹿だよな。相手が庶民の後輩だからって甘く見過ぎだろ?」

「自信をつけたかったみたいだけど、逆にプライド木っ端微塵にされたね……」


観客の言葉を拾ったエリスは、いつも優しいルナのもうひとつの一面に面食らった。どうやら、彼女と親しくしてくれる先輩方は只者ではないらしい。


「あれ?フローリアさん?」


声をかけられてエリスは後ろを振り向く。


「ブロッサム先輩」

「ユーラシアでいいよ。僕もエリスって呼ばせてもらうから」


そこにいたのは、殿下の誕生日会に招待状を譲ったユーラシアだった。


「どうしてこっちに? あ、君もフェーバーの騒ぎを見に来たのか」

「はい。気になっちゃって」

「この時期、庶民組は結構苦労するよ。普段は手を出してこない貴族の人たちが、溜まった鬱憤を正攻法で晴らしてくるからね。エリスも気をつけた方がいい。Dクラス以下がああやって上のクラスに勝ったら出れる裏ルールがあるからね。」


ユーラシアは肩を竦める。


「ま。逆も然りだから。僕たちが遠慮なくやっちゃっても平気だよ」


僕はあまり戦闘は得意じゃないんだけれどね、と彼は笑った。


「私もです。痛いのは嫌だな」

「観客と先生たちの目もあるから、酷いことはされないよ」

「それを聞いて安心しました」


ふたりが談笑していると、エリスは必ず視界に入れていたシロナの背後で模擬戦をしていた生徒の攻撃が飛んでいくのを見てしまった。彼女はすぐに魔法を起動する。


「っ、シロナ!」


それに気がついたアランが駆け出すが、あなたが傷つくのも問題だ。ということで、エリスは土で出来た玉を風魔術で地面に叩き起す。少し不自然だったが、その場に残るのは、アランがシロナを庇う美味しい展開だけである。


(ただの事故、か?)


エリスはじっと状況を把握するが、不審な点は見当たらない。こんなイベントは予言の書にも無かったので、ただのハプニングだと思いたいところだ。


「エリス?」

「あ、はい」

「帰省したら、うちにいい商品が入ってたんだ。化粧品。女の子、そういうの好きだと思ったんだけど、お近づきの印にもらってくれないかな? 今度渡すから」

「いいんですか?」

「うん。エリスは将来大物になりそうな予感がするからね」


さすが商人の息子。わかってるじゃないか。

エリスは自分の身分を気にせず買い物ができるようになったら、ぜひともユーラシアの店に行こうと決めた。

彼と別れた後は、一応エリスも大会に向けて身体を鍛える。

ひとりだけ魔法を使うこともせず腕立て、スクワット、ランニング、素振りをしていると、担任のヒューガンに声をかけられた。


「フローリア。お前だけ保護者の参加について申請が無かったが平気か?」

「はい。お世話になっている方たちは忙しくて来れないんです」

「……そうか。わかった。その、オレはちゃんと観てるからな。頑張れよ」

「ありがとうございます」


あのグレイス先生に気を遣わせるとは申し訳ないな、と思いながらエリスは素振りに戻る。

アリスとシロナからもたくさんお土産をもらってしまったし、いつかちゃんとお返しがしたいものだ。


「暑いな」


彼女は眩しい日差しに目を細め、魔法で取り出したタオルで汗を拭った。


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