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〜転生者達の傭兵国家〜  作者: あぱ
軍人少女
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「さあて、諸君。帝国民として、もちろん今日が何の日か知ってるよね?」


戦闘服に着替えたシュヴァルツが大隊の先頭に立ち、声を上げる。彼女のまとう覇気は軍の「団長」と呼ばれる者に相応しく、自分より倍以上体躯が良い男たちを前にしても存在感というものがあった。


「そう。昨日から三日間が星祭りのメイン。中日の今日は一番の盛り上がりを見せるというのに、私たちがいるのは魔物たちのパラダイス!」


いつも以上に気合いが入ったお言葉だなーと、小さな隊長を見つめる仲間たちだが、久々に彼女と一緒に仕事ができるので士気は上がっている。


「私はぁ! 先日までの任務で、軍に足りないものを見つけた!ノル! 何だと思う?!」

「え?! せ、青春でありますか?」


いきなり振られたノルは苦し紛れに答えた。


「……くさいこと言うねって、違う! むさ苦しい軍団に青春求めてどうする! 私たちに足りないのは、癒しだ!!」


そう断言する彼女は、最近三時間睡眠しか取れていないので疲れが一周半くらいしてテンションが高かった。


((これ言うのなんだけど私達団長に癒されてますよ…))


「天使や女神に囲まれて、美味しいご飯を毎日食べるだけで、人とは強く生きることができる! そう言うわけで、今回の任務はノルマ制にします! 各自ノルマを達成した者からオルディアナに帰って、星祭りに参加するべし! 奥さんやお子さん、恋人に癒されて来い!! 彼女がいない奴は、これを機に当たって砕けろ!もちろん、私が相手してあげてもかわないが捕まるからな!勇気あるやつは申し出てみろ!! それ以外は祭りを楽しむこと! 〈風月堂〉にお金は出してあるから、好きなだけ飲んで食べちゃってください! 以上!」


「「おおーー!! 団長ーー!!」」


羽振りの良い隊長に、団員が吠える。


「さすが団長!」

「よっしゃあ。早く帰るぜ!」

「奢りとか、最高かよ!」

「ヤッターでありますよ!」

「いぇーい!」


彼らは盛り上がった勢いのまま、ゴキゴキと関節を鳴らして戦闘態勢に入るが、パンパンと、エリスが手を叩くと一瞬でその場は静まった。


「呉々も怪我をしないように!」

「「応!!」」


それを合図に、大隊は魔境を駆け抜ける。


「やっぱり、代表はさすがだな!」


移動しながらフェータがノルに話しかけた。


「そうだな。みんな生き生きしてる」

「それはお前も含めて、な?」

「ああ」


ノルは口角を上げると、炎の魔術で魔物を焼き払う。


「団長がいると、好き勝手やれるからな」


フェータも楽しそうに笑った。エリスは自分の隊員たちに、マーキングを施しているので、危険を察知すればすぐに飛んできてくれるし、逆に安全地帯に送り返してくれる。

彼女のおかげで多少の無茶をしても、今まで生き延びてこれたのだ。経験値も他の隊の倍のスピードで積むことができるため、ひとりひとりが中隊長レベルの実力を持っている。


「帝国の怪物達」とは、まさしく彼らのことであった。



一方、アリスとシロナは、モルタの首都で開かれる星祭りに参加していた。沢山の屋台が並び、多くの人々で賑わう中、彼女たちも星祭り特有の衣装を着て祭りを楽しむ。 シロナの隣には変装したアランがくっつき、アリスに恋を抱いた少年たちもどこか浮き足だって、祭りの空気に酔っている。


アリサはというと、久しぶりに会ったクローディア・フォン・ライバックからネックレスを贈ってもらって上機嫌。

友達と星祭りに行くと言ったら、「男か?」など色々尋ねられてなかなか許可が出なかったのだが、クローディア様に沢山話しかけてもらって嬉しい。というピュアな思考回路でこちらも鈍感である。


「ん〜! おいひい!」


屋台の料理に舌鼓を打っては買い物をして、一行は祭りを満喫していた。


「アリス、あれ見て」

「わぁ。可愛いですね!」


可愛らしいキーホルダーを見つけて目を輝かせる。


「三つ買ってお揃いにしない?」

「いいですね! あ、さっきエリスちゃんに似合いそうなお洋服も見つけたんですよ!」

「わたくしもバッグと靴を見つけたわ。今度買いにこようと思って」


ここにはいないもうひとりの大事な友を思い浮かべて、ふたりの話は盛り上がった。


「そういえば、エリスちゃんの誕生日っていつなんでしょう?」

「わたくしも知らないわ。学校が始まったら聞いてみましょう」

「うん!」


エリスにあまりいいイメージがない男子たちは、彼女を思ってはしゃいでいるアリスとシロナを見て、顔を見合わせる。


「フローリアって、どんな奴?」


ウレックはアリスに尋ねた。


「えっ。エリスちゃんはね、凄く頭が良くて、周りがよく見えていて、いつも頼りになる凄くカッコいい友達だよ!」

「そうね。そこら辺にいる男性より、よっぽど頼りになる女の子。甘いものが大好きで、美味しそうにご飯を頬張るのはリスみたいで可愛いの」

「あ! それ、わかります〜! お土産、何を買っても喜んでくれそうだなぁ〜」


どうしてだか、敗北感を覚えた攻略対象者の方々。

後期が始まったら、もう少し彼女の評価を変えていく必要がありそうだ。


一足先にエリスに敵対心と好奇心を向けていた総帥の息子、すなわちガイアスは「女の子たちと星祭りに行く」と口では言っていたものの、実際には星祭り当日、自宅にいた。


「さあ。ガイアス。まだ行けるわよね?」


豪邸の庭に膝を着く彼は、目の前に立ちはだかる女性を鋭い目で見上げる。


「女の子に負けてちゃ、男としての威厳ってものがねぇ? 立ちなさいな」


ガイアスの身体は既にボロボロだったが、とある庶民の娘に本気を出して負けたことを思い出して立ち上がった。


「お願いします」

「よろしい」


剣を構えた息子に、彼女の唇が弧を描く。

彼女こそソルト王国の姫様で、「不滅の剣聖」と恐れられたアルトリア・ラ・フェライト、その人である。

夫から息子の学園生活について聞き出していたアルトリアは、潜入中の軍人少女にガイアスが負かされていたことを知っていた。


自分に似て負けず嫌いなことは知っていたが、夫に似て無駄な争いを嫌うガイアスはなかなか力を発揮しようとしなかったので、これはいい経験をしたのではないかと思っている。まさか、自ら稽古をつけてくれと頼んでくれる日が来てくれるとは。アルトリアは息子の成長が嬉しくて、ついつい剣に力がこもる。


「ガイアスは、その女の子のことが好きなの?」

「っ! 違います!」


一体何を言い出すんだ、とガイアスは剣を捌きながら反論する。


「え。そうなの? お母さん、強い女の子は歓迎するわよ」


それはご自分が、乙女とは言えないほどお強いからですか?ガイアスは言葉をぐっと飲み込む。

おしゃべりしながら余裕で剣を振るう母は、まだまだ現役で戦えそうだ。


「俺はっ。次当たった時に、またあいつに負けたくないだけですっ」


「そうなの〜? それじゃあ、お母さんを倒せるくらい強くなったほうがいいわ! そうしたら大抵の敵には勝てるから!」


「クッ!」


ガイアスは何とかアルトリアの攻撃を受け止める。

言ってることは無茶苦茶な気がするが、事実なので何も言い返せない。次に、横から水の弾丸が襲ってきて、ガイアスは辛うじてそれを避ける。


「そんなんじゃ、騎士団に入っても苦労するわよ〜」


アルトリアのスパルタ稽古は、始業式ぎりぎりまで続くのであった。



「隊長、お先に失礼します!」

「うん。お疲れ様です! 楽しんで!」

「はい!」


ひとり、またひとりとノルマをクリアして帰宅する中、エリスは全員が任務を終えるまで彼らを見守っていた。

それが終わったら、今度はひとりで深層まで行き、どんな地形でどんな魔物が生息しているかを調査する。

それは今のところ、エリスだけが許された仕事であり、彼女のおかげで安全に魔物討伐が行われていると言っても過言ではなかった。


「団長。終わりました!」

「よし。お疲れ。怪我はしてないね?」

「はい」

「じゃあ、ちゃんとシャワー浴びてからデートに行くように」

「おっす!」


最後のひとりを送り出し、彼女は自分の仕事に取り掛かる。


「今日は深層から2.3層までを調べるか。早く終わらせて、今日は寝たい」


エリスも自分にノルマを設けて、深層まで一気に移動した。ここには、地上にはいない、馬鹿みたいに強い魔物がうじゃうじゃいるのだが、彼女はそれをまるで肉を捌くようなノリで倒して前に進んでいく。新種らしきものは、研究所にテレポートさせて、未知の地域は地図を作成する。

他の国もダンジョンに進出しているが、ここまで中に入っているのは彼女くらい。人に会うはずもなく、移動のプロなので正体を知られることなく探索を進めることができている。


「んー。帰ったら地図を書き直さないと駄目だなー。いっつもアバウトで申し訳ないと思ってたんだけど、せっかくだから学園で地図の書き方覚えよう」


エリスはだいたい作業を終えて、地上に帰省した。

仕事を片付けて、自宅に帰ると彼女は倒れ込むようにしてベッドにダイブ。まだバトルフェスタの警備について話せていないし、〈国の眼〉のミッションが重なってしまったので、仕事が減らない。


「シロナたち、大丈夫か、な……」


エリスはそのまま眠りに誘われていった。


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