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〜転生者達の傭兵国家〜  作者: あぱ
軍人少女
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3の17

ヴァンドール魔導学園に集まるのは、貴族のご令息ご令嬢に加えて、庶民といえど商家や高官の御子様たちだ。

それぞれが各家庭でどんな教育を受けていたのかは知ったことでは無いが、同じ歳の子どもに比べれば皆大人びている。

それもそのはず。モルタで成人は15歳。

あと3年もすれば大人としての振る舞いを余儀なくされ、お偉い様の御子様たちはより一層己の言動、行動には気を付けなくては品位を損ねることになる。


今年で12歳になる子たちが入学しているはずなのだが、前世の記憶では少年と表現するより青年、女子というより女性と言うべき子たちが多い。丁度、高校でひとりかふたりくらいしかお目にかかることができないような、他生徒と比べるとひとつ頭が抜けているヒーロー、ヒロイン的存在が集合している状態だ。


「おはようございます。シロン」

「ご機嫌よう、エリスさん」


エリスは教室に着き、先にいたシロンに挨拶してからアリスと別れて席につく。


(ご機嫌ようって言われちゃったわ……)


——流石、貴族。

凄いところに来てしまったなーと思いながら、彼女は授業が始まるのを待っていると、何やら扉の向こうが騒がしい。

いち早く情報を飲み込んだ女子生徒たちは、鏡で身嗜みをチェックし始める。


(何だろ?)


エリスは教室の外に数名の気配を把握する。注目していると、現れたのは女子を侍らす総帥の息子だった。


「ご機嫌よう、ガイアス様! 昨日はわたくしと踊って下さり、ありがとうございます。とても楽しかったですわ」

「おはよう。ラウレ嬢。俺も楽しかったよ」


彼は悠然と通路を進み、エリスのすぐそこに。


「おはよう、エリスさん」

「おはようございます」


エリスは着席するガイアスから目を離し、入室してきたアレクとアルレンを見た。


(流石にシロンと婚約している殿下に色目を使う人はいないか)


将来有望な人材が集まる場所。生涯のパートナーを見つけるのにも、打ってつけの場だ。まさに、華の園。軍大学と比較すれば雲泥の差だ。


(まあ、泥沼の青春だけはお断りだよ……)


「揃ってるかー?」


授業の始まりだ。先生が教卓の前に現れる。


「おし。みんないるみたいだな。今からA組の時間割配るから」


教卓に置かれていた資料がフワリと浮かんだと思えば、生徒の元へとひらひら舞い降りてくる。無駄のない魔石起動から、先生のスキルは風だろうな、とエリスは判断した。


手元に届いた紙を確認すると、上級免許取得のために必要な授業がカリキュラムされているのがよくわかる。座学4に対し、実技が6とアクティブな編成だ。


「これが今年の授業だ。知ってると思うが、1年に1回の夏には全校生徒によるトーナメント戦『バトルフェスタ』がある。その時は親御さんも学園に来ることが可能だし、成長した姿を見せれるように頑張れよー」


この世界に長期休みは、ない。その分と言っては何だが、ヴァンドールではバトルフェスタなんてものが開催され、生徒たちがしのぎを削る。冬にも、今度は学年別での模擬戦が行われ、5年生になるとその成績が就職に大きく影響するので、非常に重要な行事たちだ。そして来年は、5年に1度全世界の学園があつまる大会『魔導カップ』という大きな大会がある。


「夏は一年が勝つのは結構難しいんだがな。今年は優秀なのが揃ってるし上位を狙っていけよ。早く負けたとしてもいい試合をすればちゃんと評価される。取り敢えずは夏を目標にして習得していくといい。まあ、その前に定期考査もあるけどな。そして2年になったら、魔導カップも開催される予定だから楽しみにしとけよー」


資料を読み終えたのを見計らい、先生は話を移す。


「最初だから優しく言っておくが、技術が上達したからって使い方を間違えるなよ? 場合に依れば即刻退学してもらう」


シーンと教室が静まった。これで「優しく」とは彼を怒らせたらどうなることか。


「過去にはいたからな。調子に乗った貴族の小僧が庶民に大怪我負わせて、退学。その逆もまた然りって感じで退学。

ま! そんな野蛮な奴はこの教室にいないことを願う!」


軽い口調だが内容は重い。エリスにとっても恐ろしい話なので、全く笑えない。


(これが国の風潮なのかな)


使えるものは、何でも使うが使えないと判断したもの、危険と判断したものは即刻 処分だ。


「はい。じゃあこの話はここまでにして、早速授業に入るぞー。他のクラスだと、スキルの選定からやるんだけど、お前ら揃いも揃ってスキル分かってるし。小手調べと行こうか。一人ずつ前に出て、得意な魔法を何でもいいから見せてくれ。


今日は昨日の自己紹介とは逆から行くか、と言うことで、一番手はエリスだ。


「フローリア」

「はい」


返事をして階段を降りて前に出るが、何を見せれば良いかわからない。

ふと教室を見渡すと、アリスが「頑張って!」と小さく拳を作ってくれるのが可愛い過ぎる。


「一応、もう一度スキルを言ってからやってくれ」

「移動系が得意です」

「おん。じゃあ、どうぞ」

「『サークル』」


エリスが呟きながら手を広げると薄い黒のサークルが教室が多い閉じた。


「えっ?!」


いつの間にかアリスが教壇の前に立っていた。


「は?なぜアリスがここに?フローリアはどこいった?」


「あのいますよ?」


エリスは当然のように自席に当然のように座っていた。


「……は?」


グレイスは目を丸くして手を挙げているエリスを見つめる。


(こいつ、いつの間にアリスを移動させ自分の席に座った?)


グレイスは、思考をする。移動系には、種類が何種類かあるが他人と位置を変え更には、自身の場所を同時に変えるなんてありえないと脳が判断した。


「あ、あの私は、どうすれば」

「ごめん!アリス」


アリスは、驚きながらも自身の席へ戻り、エリスをほめた


「いいの!でも、すごいね!驚いちゃった」


2人で少し雑談すると次の人がやるようだ。


「きゃあ〜! 凄ーい!」

「すげぇ……」


ぶわぁーーと、彼の周りに風の渦とが巻き起こり雷が風の中を泳ぐ。ガイアスの魔法に教室が騒めいた。

2つのスキルを完璧に制御していた。


(さすが総帥の息子ね。才能があるのは、羨ましいかぎり。)


·····


「……」


ひとりだけ焦点が違うのは、下から見ているとよくわかるものだ。


(またあの子ね)


ガイアスは昨日から、他の生徒には感じられない雰囲気を持つラゼが良くも悪くも気にかかっていた。総帥である父と同じ雰囲気を晒す彼女に。他の女子なら自分の顔とステータスで、友達(その後、あわよくば恋人に)という交流に持っていくのだが、彼女からは下心なんてものは微塵も感じられない。


「よし。そこまででいいぞ」

「はい」

「流石だな。2個同時にスキルを使えるのはいいな」


ガイアスは席に着く前に、チラリとエリスを覗いてみるが、彼女はすでに次の生徒に注目していた。


(ハハっ学校生活がたのしくなりそうだな……)


これから起こる色々なことを考えるとガイアスは、楽しくなりそうだと考え授業に集中した。


·····


「次、アラン。スキルも一緒にお願いな」

「はい。天眼と魔眼です」

「流石だな。2つ持ちで貴重スキル2個持ちわ。じゃやってくれ」


アランは、金色の瞳を輝せた。


「そうですね·····この目は、全てを見通せる力があります。なので先生の過去を見させてもらっても?」

「おぅいいぞ」


そして、アラン殿下は、グレイスのこの前の事をはなす。

幼少期に好きだった幼馴染に告白したが振られた事などを…


「おぃ、俺の1番恥ずかしい過去をみたな」

「ハハっ先生の過去は、面白いですね。魔眼は、いずれ見せましょう」


「「ハハハッ」」


教室中で笑いが起こった。真面目そうな先生にもこんな過去があるとは、誰も考えなかった。


「ごほん。次、アリス」

「は、はい」


彼女はグレイスの前で困った表情だ。回復を見せると言ったら、傷ついたものが必要になる。


「あの、先生……。どうしても回復魔術を使わないといけませんか?」


は悲しい顔をするアリスの気持ちを察せない女子が、ヒソヒソと囁き出す。本当は大した回復魔術なんて使えないんじゃ無いのか? と。攻撃、防御、回復の通常の魔導は習得必須の分野だ。スキル(魔術)であっても使いこなせなければ、熟練した魔導に劣るので、スキルだからと吹聴するのは頭の悪いものがすることだ。そういう事を暗に言っている。


「はい、先生」

「なんだフローリア」


エリスは見過ごせずに手を挙げた。


「腕に痣ができてしまったので、フローリアさんに治して貰いたいです」

「そうか。丁度いいな。それでいいか?フローリア」

「はい」


彼女は天衣で教壇へ。


「お願いね」


左腕をまくると、そこには大きな痣が。


「どうしたんだ、これ?」

「今朝、ランニングしてたらぶつけちゃって」


(……言えない。今天衣で寮の部屋に戻って痣を作って来たなんて)


彼女が日常生活で怪我をすることなど少ないし、多少の怪我であれば自分で治せる。わざわざアリスのために、一瞬でこさえてきたものだ。


「す、すぐに治すね!」


アリスが手を当てると、エリスの腕に暖かい光が。みるみるうちに怪我が癒えていく。


「もう大丈夫だよ!」

「ありがとう」

「よし。これから鍛えて、もっと早く治せるようになろうな。次!」


今度は普通に歩いて席に戻ると、エリスは全く痛みがなくなった腕に視線を落とした。


「?」


彼女を見ていたガイアスだけは、エリスのその哀しげな表情を見逃していなかった——。


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