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〜転生者達の傭兵国家〜  作者: あぱ
軍人少女
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3の10

「そろそろ寮に行くぞ」


先生が呆れた声で、小さな集団に向けて声をかける。

するとお嬢様方は切り替えも早く、早く寮に戻ってパーティに向けて準備をしなくてはいけないからと解散していく。

エリスはその様子に軽く驚いた。


(なんか、流石だな。貴族の学校……)


「シロン嬢。君もよかったら次の休み、商店街でお茶でもどうかな? 君が来てくれれば、殿下も来てくれると思うんだけど」


歩いていると、輪の中心にいた外明日がいつの間にかシロンの隣に来ていた。シロンは眉をしかめる。


「先約があるの。それに、わたくしが行っても、殿下が来てくださるとは限らないわ」

「そうかな? 残念。でもカーナ嬢せっかく学園に入ったんだから、たまには婚約者殿とデートでもしたら?」

「デ、デート?!」


顔を真っ赤にさせてあたふたする白んに、ガイアスがフッと笑みを溢す。アリスはは目を丸くしてそんなカーナを見ていたので、どうやらアラン殿下とシロンお嬢様が婚約していることを知らなかったみたいだ。


どうやら政略結婚でも、なんでもなくただ好きなようなだ。そういうことになると、シロンは、何がなんでも守らなくてはいけない、1人になるらしい。


(転生者だから、あの女と同じで、アラン殿下に憧れたんだろーな。私がもし、記憶がなかったら仲良くなれなかったかもなー)


もし、『私』が女の記憶を持っていなければ私とアリスは、同じ人物だったのでシロンとは、仲良くなることはなかったかもしれない。そして、小説の主人公である、アリスは、殿下と婚約するまでの話なので、シロンは叶わない恋だったのかもしれない。


「シロン、これからたくさん機会はありますし、私たちとはまた違う日に遊びに行けばいいと思いますよ? ね、アリスは」

「うん。わたしもそう思います」


頬に手を当てて恥ずかしがっていたシロンは、ハッとしてアリスのほうを見たかと思えば視線を逸らす。

そして先ほどまで恋する乙女モードだったのが嘘のように、悲しい顔をして呟いた。


「……いいえ、いいの。彼にはわたくしなんかより相応しい人がいるから」

「え?」


驚いてエリスは表情を険しくする。

幼い時の婚約とはいえ、シロンは確実に殿下を想っている。それなのに、今の言葉は聞き捨てならない。

どういうことだ、とチラリと総帥の息子を見たが、彼も目を丸くしているだけ。何かを知っているようには思えなかった。


「い、今のは忘れて頂戴。何でも無いの。殿下は何も悪くなくて、わたくしが至らないから……」


これ以上は何も聞かないでくれと、困ったように微笑まれ、エリスはそれを受け入れた。まだ出会って数時間。

悩みを打ち明けてもらうには、あまりにも絆が浅い。


「じゃあ、やっぱり私たちと一緒に商店街に行きましょう! これでも色々お店は知っているので、きっと案内できますよ」

「そうなの? わたくし町に降りたことがあまりなくて」

「では、楽しみにしていてください。私もバッチリ予習しておきますから」

「ええ、楽しみにしてるわ」


代わりに商店街に遊びに行く話をすれば、彼女の笑顔も戻ってくる。エリスはホッとして話を続けた。


「シロンは甘いものはお好きですか?アリスも」

「ええ。好きよ」

「わたしも大好き!」

「それは良かった。私も食べることが好きで、特に甘いものには目がないんです。パンケーキとか食べたいですね」

「いいと思うわ」


可愛い女の子たちと一緒におしゃべりをして、甘いお菓子を食べる——。これぞ、彼女が学園に求めていたことのひとつ。

夢見た学生の当たり前の日常に手が届くことが、エリスはとても嬉しかった。


「なんだか変わった組み合わせに見えるけれど、君たちいつの間に仲良くなったの? 確か回復魔術のアリスさんと、特待生の…」


やはりアリスは回復魔術ということで、ちゃんと覚えられているみたいだ。


「私みたいな、庶民な名前は覚える必要は、ないですよ。でも、クラスメイトとして名前を名乗られせて頂きます。

エリス・フローリアです。どうぞ、お見知り良きよ」


「ああ、ごめんね。エリスさん。人の名前を覚えるの苦手なんだ」


確かに、あんなに女が一気に押し寄せて来たら覚えられるはずがないのかもしれない。


「いえ。お気になさらず。ガイアス様のお陰でシロンがお声をかけてくださり、早速遊びに行くことになりました。ありがとうございます」


エリスも閣下の笑みを真似して、ガイアスに対抗した。

何となくガイアスの表情が崩れたがエリスはもう、興味を失ったかのようにガイアスから視線を外していた。


「ガイアスは相変わらずですわね。いつまでもそんなことでは、本当に好きな人ができた時に苦労いたしますわよ?」

「ご忠告ありがとう。肝に銘じておくよ」


じゃあ、と軽く手を振って、ガイアスは前にいた殿下とアルレンの元へ。

何を考えているのだか、いまいち読めない人だ。いつか上司になると思うと憂鬱な気分になる。


「あ、あの。シロン様はアラン殿下とご婚約を? わ、わたしそういった話は良く知らなくて……」


アリスが申し訳なさそうにシロンに尋ねる。シロンは一度口を開いてまた閉じたが、すぐに笑顔を作ってアリスに答える。


「昔ね……」


エリスはこの様子を見て、やはりシロンの殿下に対する気持ちが気になる。


(もしかして、本当に転生者なの?それとも、前世の記憶があって、何回もこの世界を繰り返しているとか?あの女のが小説の中の記憶は穴が空いているので、正直いってシロンについて詳しくはない。)


(とりあえず、殿下の周囲は要注意だな。王族のスキャンダルとか、下手したら国が崩れる)


そう胸中呟いて、エリスは足を止めた。


「エリスちゃん?」

「エリスさん、どうかしまたのですの?」


いきなり立ち止まったエリスを呼ぶ声は遠く。彼女は自分の言葉に顔を青くする。


(え? それって不味くないか? 私がついていながら殿下に黒い歴史を作らせてしまうようなことがあれば、さすがに「お前、何してたんだ?」ってなるよな?!)


とんでもない事に気がついてしまった。殿下に何かあれば、それは国を揺るがしかねない事件になるかもしれない。それはやんごとなき事態であるからして、自分の出番である。


(そうか……。総帥はこういった事を危惧されて、私を学園に送り込んだのか)


あの人の凄さを評価するべきか、私の判断の甘さに恨むか悩むところだがもうどうしようもないため任された仕事はしっかりとやろうと心に誓った。


「だ、大丈夫? エリスちゃん」

「忘れ物でもしましたの?」

「う、ううん。何でもないんです。ちょっと面倒な事を思い出してしまっただけで」


彼女はやるせない気持ちをグッと腹の底に押し込んで、こうなったら意地でも学園生活を楽しんでやると決意を改めたのだった。

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