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ヴァンドール魔導学園都市。
それは山や川、湖、草原。広大な自然のなかに要塞のごとくそびえ立つ。小国と同等の広さを持つと言われている。
この大きな学園には校舎と訓練場、に、商店街まである。
そして、ランクの高い生徒が住む一軒家など、学生寮などもある。
都市の敷地には全て結界と幻術がかけられており、その姿を見ることができるのは学園関係者のみだ。この装置を起動するためには膨大な量の魔素 魔力が必要だが、ここは元々国が立っていた事もあり、魔力溜りがあるので、それを用いて魔導具を起動させている。
5年間、この学園で同志たちと寝食をともにする。
そして、退学する事以外、短期休み以外、出ることはないため、見方によれば「楽園」にも「牢獄」にもなるこの学園。
特に貴族サマは己のステータスのためにこの学園に入る者も少なくないので、エリスにとっては平和な場所でも、彼らにとっては将来を左右する試練の場だったりする。
『ここはモルタ帝国の随一学び舎にして、世界最高の学び舎でもある。最高の教師がいる。そして難問中の難問にして多くの入学希望者をふるいにかける、あの入学試験を突破してきた君たちもまた、最高の新入生だ。——恵に感謝を、親に感謝をそして、才に敬意を!』
魔道具を利用した道具によって、声は朗々と大きく響いている。
ここは舞台を中心に半円形の学生講堂であり、2階席、3階席、4階席まですべて生徒たちで埋まっている——色とりどりの制服に身を包んだ生徒たち。
1階にいるのは「新入生」——つまり、蒼穹の年生まれである私たち1年生がずらりと並んでいる。
『君たちはこれから多くの困難に出会い、仲間の助けを必要とするだろう』
『私も数十年前にこの学園に入学し、多くの仲間を得た
…』
この話をしているのは理事長であり、この国の皇帝の叔父であるであるファルス・リチャード・ザッハである。
『改めて入学おめでとう、金の卵たちよ。君たちはこれからこの学園で多くを学び、仲間と共にしか味わえない経験をするだろう。5年という時間は長いようで短い。5年という長い歳月を、長く感じるかそれとも短く感じるかは君たち次第だ。仲間と励み上を目指しなさい——』
圧倒されるようなオーラを放つ理事長の、長くも短くも感じるような話が終わり。どうやら次は、クラス発表らしい。
そうして入学式は幕を閉じて、次に待つのはクラス発表。
ひとクラス20人が、50組み。記憶を辿ってもこんな大人数の学園はないと思っていたがまさかここまで大きいと思わなかった。だが、卒業前には大体5.6クラスしか残らないことは確認済みだ。私だって例外ではない、無能は即座に落とされるのだ。
何より恐ろしいことに、最初っから能力順の編成になっている。
記憶では有り得ない編成ようだが、それぞれの能力に見合った授業を受けさせるということで、この形が推奨されている。
正直なところ、この学園に入れただけでも十分社会に通用するので、クラスのランクを気にすることはないとえりすは思う。
(まあ、貴族サマには貴族サマで、色々あるだろうから大変なんだろうけど)
彼らの努力を否定したい訳ではないので、エリスは静かに発表を待つ。
「ただいまより、先生方のご紹介を始めます」
司会者の言葉で、壇上に50人の先生が現れる。生徒も多ければ教職員の数も多く、圧倒される。
「左から順に、
A組 グレイス・ミルチア・ルスレック先生。
B組 アゲロ・ビーチ・エドアン先生。
C組 ギルティ・ホーン先生。
D組 アリエ・ラウレ・グルトアン先生。
E組 ロー・ポー・バンジェンス先生。
F組 アルトリア・ビアンか先生
G組 ビオレ・ヴァイオレンス・ドラグニティ先生
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50人の先生をスラスラと読み上げていくのにエリスは感心していた。
長い名前に多いい人数なのに1回も噛まずに読めるのだ普通の人では到底無理だ、匠の技と言ってもいいかもしれない。最後にルチナル・フェライト・アルドリッチ先生。彼女は医務室の先生ですので、体調が悪いと感じたら無理せず彼女を頼るようにしてください。
「では。クラス発表に入ります。今から皆さんの前には各クラスのブレスレットが現れます。何組か確認してから、腕に付けるようにしてください。その後、教室に移動し、ホームルームがあります。それ以降のことについては教師に質問するように。……それでは、皆さん良い学園生活を」
司会の人が言い終わると同時に目の前にライム色ののブレスレットが転移され、そこのブレスレットにはAと書かれた文字があった。
「最初にA組から移動する!私についてくるように!」
グレイス先生が指示する声が響き、エリスは慌ててブレスレットを付けると立ち上がる。
エリスは新しく買った黒のローファーの綺麗な音を鳴らしながら、丁度殿下の後ろに出た。
「あっ!」
その途中、通路に出ようとした女の子が、緊張しているせいか躓いて倒れてくる。
気がついた殿下も振り向いたが、その前にエリスが反射的に彼女を受け止めた。
「大丈夫ですか?」
「は、はい! すみません。ありがとうございますっ、」
「!?」
エリスは思わず息を飲む。
顔をみた瞬間エリスは、全てを悟った顔をした。
(この子は小説の私!?これが、本来の私なの?でも、どうして
…)
「あのっ、お怪我はありませんか? 本当にすみませんっ!」
彼女の瞳の向こうに怯えを感じとっている間に、エリスは脳をフル回転させる。
(確か悪神が言っていた歪みって私が2人いるってこと?…小説どうりなら、殿下が助ける所なのか。はぁでも、かわいぃな。こんなかわいぃ人生も良かったのかな?)
彼女を見ることコンマ0.1秒エリスの脳では色々な考えが導き出されていた。
1.ホンモノの私とはかかわらないで、無関心をつきとうす。
2.彼女を殺す。
3.彼女を私の手の内に入れる。
4.彼女と結婚する。
5.彼女を仲間にする。
(って、女である、私が見惚れるなんて…)
ずっと見ておくのもあれなので、私はすぐに返事を返した。
「平気だよ。そっちは怪我はない?」
「あ、私は、だ大丈夫です!」
私がわずか数秒で導出された答えは仲良くして見極めることにした。
怯えているということは私を貴族だと思っていと思うので「私も平民だよ」と耳打ちして微笑むと彼女はぱああっと顔を輝かせる。一緒に隣を歩き会場を抜けると、声をかけられた。
「さっきはありがとうございました。わたしアリス・ペン・ドラゴンと言います」
どうしよう、私にアプローチされている。エリスのはすっかり頬を緩ませた。軍にいたら滅多にないシチュエーションである。テンションが上がってしまうのは仕方ない。
「私はエリス。よろしくねアリス」
アリスは花が咲いたように笑って、「うん!」と首を縦に振った。まさか最初の友達が「私」だとは、思わなかったがコレはこれで、面白い学校生活が遅れそうだ。
大きな部屋につきこれまた豪華な部屋だった。
椅子すら高級品のようなもので後ろには魔道具のマッサージチェアや小さなキッチンまで完備されていた。
「座席は指定だ。ボードを見て座れ」
グレイス先生が指示をだ出す。貴族がいるのにタメ口だが、ここは実力主義なのだ、貴族であっても平民であっても関係ない。そのため、1部の生徒は先生に対し、睨みをきかせるが先生は無視だ。
そして、エリスは嬉しいことに右後ろだった。皆を見渡せるので良い位置である。この考えに及ぶのは職業病なのかもしれない。アリスは彼女の左前だった。
その隣には殿下がいらっしゃって、緊張していることがよくわかる。隣との間がかなり広く空いているので、そんなに緊張することは無いと思うのだが、流石に殿下相手ではその距離では足りないか。
まるで子犬のようなあどけなさが可愛らしく、エリスはクスリと笑って心の中でアリスを応援した。
少し時間を置いたことでエリスは自分の中でアリスと自分との関係を改めた。
(これで、世界の運命は変えられることは分かった。
私は私、彼女は彼女。もし、彼女は将来どのような選択をするのか気になるな)
小説どうりに、行けば彼女は男達を魅了し逆ハーレムの道を進むだろう。
エリスは、VIPとアリスだけは何としても守ると心に誓った。
そう考えていたが、次の瞬間、エリスの表情は一気に固まる事になる。
小さな段差を登ってくる男子を見てしまったからだ。
彼と会ったことは無い。だがしかし、その顔にはよぉく見覚えがある。
(まさか、あの人の息子!?)
あの総帥の息子だったのだ!見た瞬間、脳にイナズマが走った。銀髪にあの人より濃い灰色の瞳何より爽やかな顔、まさに美少年。
「よろしく」
「よ、よろしくね。」
無愛想になってしまった気がするが仕方がない事だろう。
まさかあの人の息子と同じ年代だとは思わなかったのだ。
はぁ、と息を吐き入学早々、頭を抱えるエリスの姿は、アリスからみたらクスっと笑ってしまっていた。




