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「こんなところが貴方の最後の場所でいいんですか?」
「人を沢山殺してきた私には結構似合はない?」
「そうですか?別に私はこんなところでなくてもいいのですが」
エリスは、ベルドルーク全土を滅ぼしたあとダンジョンの最終層で悪神と話していた。ボスの瘴気と魔力でここ一体は薄汚れていて空気が悪い。
「悪神であるあなたに似合ってますし」
「そう言われると傷ついちゃいますよ。シクシク」
悪神ルーナはわざとらしくなく真似をする。
「それよりも、あの時なんで殺したのですか?」
「人を蘇生させるなんて人のやっていいことでは無いですし彼女の場合時自体を操って直してしまうかもしれないですから」
「で、本音は?」
「はぁ本音ねぇー。魔女さんでは満足出来なかったので殺したくなりました。やっぱり平和の世界では退屈ですね」
「ふふ、それが本音ですか。それで私と着ますか?」
「拒否権なんて存在しないくせに」
「いやいや、一応ありますよ?その代わり力は無くなりますが」
「ほぼないと同じじゃないですか。」
可愛らしい2人のいる場所は、似合っていないからか、不気味がさらに不気味になっている。
「ふふ、そうですね。それよりもガイアスくんは、連れてこなくていいのですか?彼のこと私は気に入りました」
「ガイアスくんか。一応聞いてみようかな?」
そういうことでエリスは、転移をした。
……
…
「エリス君は本当に何ものなんだ?」
「私ですか?私は私でそれ以外でもありませんよ」
「そうか。はぁ……ん?ってうわぁ!」
エリスは、部屋で転移した先で立っていて悪神は居ない。転移した先でガイアスは酷く疲れた様子で今にも死にそうだった。いきなりエリスが転移し来てきたことにより思いっきり飛び上がった。
「君生きてたんだ……。あの事件以来学校に来なかったしもしかしたら前に言っていたことがあったのかと思ってたよ……。」
「ふふ、私のことを心配してくれたんですか?」
「あぁそうだよ。」
「……そうですかありがうございます。突然消えてすいません」
「まぁあんなことあった事だしね。しょうがないのかもしれない……。それで、どうして俺のところに?」
「何となく分かってるんじゃないですか?」
「あぁ分かってるんだと思う。…………フゥわかった。行こう」
「ふふ、そうこなくっちゃね」
「ねぇ、エリス。本当の君は今の姿なの?」
突然ガイアスに言われて近くにあった鏡で自分をみた。
髪は酷く荒れ魔物の血が付着し、顔は幼さが無くなりあるのは狂った顔。
「私の本質はこれでしょうね。あの時から酷く歪んでしまった。人は弱く脆いだから絶望したのを忘れために狂うのです 」
「そっか。ありがとう。じゃあ行こうか」
エリスはガイアスに手を差し出しガイアスは手を掴む。
エリス達は学園から消えた。1枚の手紙を置いて。
……
…
「お、帰ってきたねおかえり〜」
「もう行っていいよ」
「せっかちだなーエリスは。私〜自己紹介しなくちゃね。」
「あなたが神様ですか?」
「見えないでしょ?私は、悪神ルーナだよよろしくねー」
「悪神ルーナ様……。よろしくお願いします。俺の名前はガイアスと言います」
「うんうん、知ってるよ。君はこの世界でもエリスの次に気に入ってるよ。じゃあそろそろ行こうか。」
「どこに行くのですか?」
「まぁ着いたら教えてあげる。あ、そうだ。その前に2人には一旦死んでもらうよ」
悪神がそういい指を鳴らすと2人の意識は飛んだ。
……
…
「――え……?」
一週間ぶりに学生寮に戻ってきて、自分たちの部屋の扉を開けたアリスは息を飲んだ。今は姿が見えないが、遅れてやってくるのかと思っていたルームメイトの戻るべき場所が、空っぽになっている――。机の棚にも、小さめの本棚にも、あったはずのものがない。扉を開けたまま立ち尽くしていた彼女は我に返ると、自分の持ってきた鞄を放り投げて一目散に、エリスが使っていたクローゼットを開いた。
「嘘……」
そこにあったのは、自分のクローゼットには入りきらなかったアリスのドレスだけ。エリスのものは何一つ残されていなかった。どこを漁っても、彼女のものはどこにもない。
「ッ――」
アリスは顔色を変えると、部屋を飛び出て廊下を走り出す。向かった先は寮のロビー。そこには寮母がいて、常に生徒たちに対応してくれる。部屋に戻る他の生徒とは逆走するアリスは、途中途中人とぶつかりそうになりながら、必死に階段を降りた。まだ到着したばかりで、転移先のホールから移動してくる生徒たちの間を縫って、ロビーに駆け込んだ。
「すみませんッ。わたし、2103号室のアリス・フローリアです」
ものすごく慌てた様子で話し出した彼女に、寮母は驚いたようだったが、2103号室という部屋を聞いて思い当たる節があった。
「わたしと同室の子。名前は、エリス・フローリアさんなんですが、荷物が何もなくなっていて。彼女のことを知りませんかッ」
今にも泣き出しそうなアリスに、寮母は悲しそうに眉毛を垂らす。
「……2103号室のエリス・フローリアさんね。彼女はご家庭の事情で、もうこの学園にはいらっしゃらないわ」
ヴァンドール魔導学園に特待生として入学した庶民の女子生徒。退学の手続きをして、あの部屋を片付けることになった時は、寮母も驚いたものだった。惜しい人を失った。あまり関わりのない彼女でもそう思った。
「――どうして。そんな、急に……」
唐突に告げられた別れに、アリスは自分の足が今、地面についているのかよくわからなくなった。エリスがいなくなるなんて、全く想像もしていなかったのだ。これから一緒に学園祭2日目を楽しんで、一緒にまたテスト勉強をして、冬の大会にも出て、5年生になって――卒業までずっと一緒にいると思っていた。学校を辞める素振りなんてなかったはず……。最後に交わしたのは、どんな会話だっただろう。
「嫌だよ、エリクちゃん。せっかくお土産も買ってきたのに。なんで……」
納得なんて出来なかった。あまりにも唐突にいなくなって、一方的すぎる。お別れの挨拶すらさせてくれないのか……。
「すみません。エリスちゃんにお手紙を出すことはできますか? わたし、彼女の住んでるとこを知らなくて」
アリスは話を切り替える。このまま引き下がるわけにはいかなかった。
「できますよ。書いたお手紙を渡していただけたら、送っておきましょう」
「ありがとうございます!」
彼女はすぐにでも手紙を出さなければと、勢いよく後ろを振り返る。
「っ!」
「わっ」
すると、背後にいた人物とぶつかりそうになった。
「どうかしたの? そんなに慌てて」
相手は、シロンだった。隣にはアラン、さらに言えば彼の後ろにはアルレンとケルヘラムがいたが、アリスの視野にはシロンしか入らない。シロンは自分より先に部屋に戻っていたはずなので、きっと準備を終えて、校舎に行くところだったのだろう。アリスは思わず、シロンの腕を掴んだ。
「シロン様ッ……。エリスちゃんが。エリスちゃんが、学校を辞めたって」
悲痛な叫びをあげるアリス。
「え……?」
その言葉を理解して、シロンの顔から表情が抜け落ちた。
「何か事情があって、後から遅れてくるのかもしれないって待ってたのに来なくて。わたしたちの部屋を開けたら、エリスちゃんのものが何一つ残っていなくて――」
シロンの腕を握った手に、ぎゅっと力がこもる。
「どこにもいないんです」
アリスの目には涙が滲んだ。その場から動かなくなってしまったふたりの横を、すっとアランが通り過ぎる。
「エリス・フローリアは、休学ではなく退学したんですか?」
彼の声は冷静だった。
彼女たちを見守っていた寮母は、そうだと頷く。
「……そうですか。ありがとうございます」
重い沈黙が、その場の空気を支配した。
授業の時間になって、彼らはなぜか2人足りない教室でグレイスを見つめる。グレイスは自分に集まる数人の視線が、何を言いたいのか察していた。
「全員揃ってるな。と言いたいところだが……。どうやら知ってるやつもいるみたいだな」
彼はやるせない面持ちで小さく息を吐く。
「おかしな誤解がないように言っておくが、エリス・フローリアは家庭の事情で学校を辞めた。オレも急なことで驚いたが、そうしなければならなかった理由があることもわかってやらなくちゃいけない。フローリアが充実した学園生活を送っていたことは、お前らも知ってるだろ?ガイアス・ガイアス・ラ・フェライトも学校を退学した。」
クラス中が沈黙する。クラスのムードメーカー的な存在だったエリスと誰もが惚れて優しいガイアス2人がいなくなったからだ。
「フェライトの部屋に手紙が書き残されていたらしいから
家の人から持ってきてもらった」
『突然いなくなったことは申し訳ない。
これをグレイス先生が読んでいるってのとは俺やエリスは居ないだろう。俺は、あの事件以降エリスという予言の子と世界を見て回ることにした。
みんな今までありがとう。たのしかった』
「ん?裏に何か書いてあるな。読むから静かにしてろよ……うぉっ」
グレイスが裏に書いてある文を読もうとしたら紙が光り
何かが映る。
「エリスちゃん!とガイアス様!?」
「エリス!ガイアスくん!」
突然2人の姿が映ったことによりクラスは騒がしくなる。
『これが見れたってことは表に書いてある文を読んでくれたのかな?ありがとグレイス先生』
「お、おう。エリスこれはそちらにも聞こえてるのか?」
『いや、聞こえてないよ。前に撮ったやつを私がこの手紙を読んだら発動するようにしてたからね。何となく言われそうなことを事前に言ってるから喋れてる感じになると思うよ』
そんなことを簡単にいうエリスをみてケルヘラムでさえ頭の上にはてなマークがうかんでいた。
明らかにこの魔術は1人でできるようなものでないからだ。何となく光魔術を使ってるのが分かるがそれ以外は全くもって分からないのだから。
『まぁ分からなくてもあんまり気にしなくていいよね。
それじゃ本題に入ろうか。みんな急にいなくなってごめんね。私は家の事情と先生たちに言っているけど本当は違くて私達は、もうすぐこの世界から消える。いや、他の世界に転生することになるらしい。ガイアスは、神が気に入ったらしくて一緒に行くことになったんだ。』
『そういうことだ。本当にすまない。
最初は、正直あまり楽しくなかったが最近は色々なイベントがあったりして本当に楽しかった。これから会えなくなると思うと悲しくなるが思い出はみんなの胸の中にあると思う。遠く離れてもずっと友達だ。』
明るく振る舞う2人にクラスの皆は、涙を流しながら2人の話をしっかりと聞く。
『私も最初は平民だったし貴族様たちとは仲良くなれないと思ったけど同じ平民のアリスから貴族のシロンに出会えて更に色々な人と出会えて本当に面白かった。アリスこの前は貴方の言うことを聞けなくてごめんね。シロンあなたは、もう呪縛から解き放たれた、殿下と幸せになるのよ?
マータは冒険者登録して1人で暮らすことになったからもし良かったら遊んで上げて?マータシロンのことだいぶ気に入ってたみたいだから。
そして、みんな騙しててごめんね。私は、本当はあなた達金の卵 を、守るために軍から派遣されたたんだ。私の本当の名前はシュヴァルツ。名前っていってもコードネームみたいなものだけどね』
そんな事実を知りクラスは驚愕に満ちた。それは、そうだろう。モルタ帝国の伝説とされている ネームドの、一つである『シュヴァルツ』なのだから。ネームドは貰った人はだいたい戦死しておりその後英雄として称えられるのだから。それなのに彼女は生きる伝説となっている。
それでも十分なのに自分たちと同じ歳だとは思えなかった。
『そろそろ魔術も切れるから最後になるかな?みんな
本当にありがとう。大好きだよ』
『俺もみんなのこと大好きだ。アランこの国の未来を頼んだぞ?そして、幸せな家庭を築け』
「あぁガイアス。この国を守り抜いてみせる」
『『みんな今までありがとう!』』
そうして2人の姿は消えても、教室は、生徒の泣き声に支配されていた。




