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〜転生者達の傭兵国家〜  作者: あぱ
軍人少女
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とある軍施設の一室。シュヴァルツ元いいエリスの執務室であるその部屋で、ノルは副官として彼女の留守を任されている。シュヴァルツが席を空けることが続く生活は、一年と半年ほどが過ぎて、それなりに今の仕事に慣れてきた頃だった。


「ノルさん!代表からお届け物です!」

「ありがとう」


扉をノックしてから、元気よく入室したフェータが封筒を提出する。見るからにソワソワしている彼に、ノルは苦笑しながらそれを受け取った。いつも送られてくるものより、少し大きな封筒を丁寧に開ける。中からは、便箋とチケットケースが出てきた。久しぶりに小さな上司から届いた便り。

ノルはまず、便箋を手に取った。


『もし時間があれば、無理のない範囲で是非』


そして、読み終えた彼は、今回送られてきたチケットケースの中身が何かを理解する。


「学園祭の招待券か!」

「え!」


彼はすぐに同封されていた招待券を確認した。内容を確認するまで部屋を出る気がなかったフェータは、ノルの言葉を聞いて目を輝かせる。


「……二枚」


ノルはその枚数を見て、ボソリと呟く。


「ノルさん」


状況を素早く判断したフェータが、このチャンスを逃しはしまいと彼を呼ぶ。しかし、ノルはそちらを見ない。

どう考えても、嫌な予感しかしていなかった。


「考えていることはわかりますよ、ノルさん。その券をめぐって、また何か起こるんじゃないかと心配なんですよね」


フェータは、うんうんとひとりで相槌を打ちながらノルに言う。エリスの婚約騒動での一件を思い出したノルは、無意識に昔折れた腕をさすった。


「二枚しかないのであれば、ここだけの秘密にしましょう」


こいつ、言いやがった。と。そこで思わず、フェータに視線を戻す。


「ノルお前……」


さっきまでソワソワ、にこにこしていたフェータの顔が、完全に悪役のそれになっていた。


「大丈夫ですよ。もしバレてしまったら、団長さんが僕たちを指名して招待してくれたんだと言い張りましょう」


どうしてこういう時だけ、そんなに威勢がいいのかと。が呆れながら、券を袋にしまおうとしたその時だった。


「ノル。そろそろ、昼飯」


バンと。

ノックもしないで扉を開けて、そいつはやって来た。


「ん? フェータもいたのか」

「トレーク…。ノックくらいしろよ」


ノルは心臓が飛び出そうになったのを顔に出さず、自然を装って手紙をしまいにかかる。


「何それ?」


しかし残念ながら、こういう時に限ってトレークはそれを見逃してくれなかった。


「もしかしてシュヴァさんから?」


彼は部屋の中までずんずん進み、ノルの前に迫り来る。

フェータは下手に誤魔化せば、逆に怪しまれるとでも思ったのか、見たことのないくらい落ち込んだ表情でノルをただ見つめている。視線を注がれたノルは、そんな情けない顔でこっちを見るなと言いたかった。


「やっぱり、シュヴァさんからじゃん。今回はなんだって?」


側に置かれていた封筒の宛名を見たトレークが、不思議そうに尋ねる。どうせ、隠しても良い方には転ばないと思ったノルは、仕方なく口を開く。


「学園祭のことについてだ」

「あぁ。もしかして、この前実験してたリストバンドのことか?」

「それもあるけど、当日の招待券が二枚届いた」


トレークにそう告げた途端、フェータがその場に崩れ落ちた。


「うわ!? 驚かせんなよ、フェータ」


突然のことにトレークが声を上げる。


「終わった……。どうせ今回も、僕は学園にいる代表に会えないんだッ」


フェータは思いの丈を吐露。彼から漂う負のオーラに、トレークとフェータ顔を見合わせた。


「お前、そんなに代表に会いたかったの?」


トレークは面食らったまま問う。


「団長が、あの『シュヴァルツ』が、可愛い制服を着て学校に通っているんですよ? 興味がない訳ないじゃないですか。ああ、僕も代表の試合を生で見たかったのにな。どうしてこの前の大会も警備役になれなかったんだろう。もう、本当に心の底から、一緒に勉強してる学生が羨ましすぎますよ。僕だって団長と一緒に学園生活を送って、色んなことを教えてもらいたかった。きっと毎日新鮮なんだろうなぁ。いや、同じ空間にいるだけでありがたいというか……」


つらつらとフェータが饒舌に語り出した。


「そういえばこいつ、団長に会いたいがために入団して、この部隊を志望し続けたんだっけ」


自分の世界に入ってしまった彼を遠巻きに、トレークがノルに確認する。


「忘れてたけど、そうだった」


ノルは頷く。


「なんか、可哀想になってきたな」


トレークはあまりにも悲観しているノルに、同情した。


「今回はオレたち、警備に呼ばれなかったもんなぁ。行きたいなら、このチケットを手に入れるしかないってことか」

「そうなんですよ!!」


すると、トレークの発言を拾ったフェータが食いついてくる。


「どうして、学園祭の警備は騎士団だけでやるんでか!? そんなに外面が大事なんですか!?」

「…………そう怒るなよ。もし、団長がいない貴族の学園を軍が守るってなった時を考えてもみろ」


ノルの指摘が的を射ており、その場のふたりは沈黙した。


「なんでお前まで黙るんだ?」

「いや。だって、大会も同じことが言えるなと……」


きっとエリスがいなくなった後のことを想像したのだろう。トレークが眉をひそめる。


「でも、それじゃあ、なおさらチケット欲しいですよ」


フェータの困り果てた様子に、ノルは頭をかく。


「仕方ない。どうせ、みんな行きたいんだろう? 下手に暴れられるより、ちゃんと勝負をつけたほうがマシだ」


彼が何を言いたいのか、瞬時に理解した戦友のトレークは、ニヤリと口角を上げる。


「そうこなくっちゃ!」

「?」


フェータはきょとんと首を傾げた。


……


「これより黒軍 学園祭招待券 勝ち取り戦をはじめる!」

「うぉおおお!」

「わぁーーい!」


シュヴァルツの部下である彼等は、軍の訓練場で集まっていた。みんなエリスに会いたいとの事は分かっていたのでノルが気を利かせて2人の参加者を決めることにしたのだ。

勝負方式は至って簡単、8人全員の乱闘だ。使っていいのはこぶしのみ魔術やスキル 武器を使ったら即失格だ。

ここには男女関係なく戦うことになる。


数時間後。


「はぁはぁはぁ。そろそろ負けを認めたらどうだ?トヴェリ」

「そういうノルこそボロボロじゃないか」


フラフラだが立っいるのは2人のみでそれ以外は2人の周りでボロボロになり倒れているフェータなんて上半身は裸で顔は赤く腫れ上がっている。エットもなぜか服が破け大きな胸が出ている。だが、ここで欲情するようなバカは居ないのだが。


「おらァァァ!」

「うぉっ」


トヴェリの攻撃を避けきれずノルは倒れてしまっまた。


「よっしゃあああああ!」


トヴェリは最後まで立っていた喜びといつまでも決着がつかなかったノルに買った喜びで咆哮を上げた。


「……何やってんだ?」



騒がしい訓練場を、たまたま顔を出しに来ていた「死神の玩具屋」ことセルジオ・ハーバーマスが怪訝な表情で覗き込む。聞き覚えのある声に、エリスの部下たちは一斉起き上がりにそちらを振り向いた。


「ハーバーマス殿!?」

「……エリスのお付きか」


彼に気がついたノルが、想定外のとんでもない人の登場に驚きの声をあげ、慌ててセルジオに挨拶した。


「これは一体何の騒ぎなんだ?」


ヤバイ人が来てしまったことに気がついた周囲の部下たちによって、前回被害を受けたクロスに無言の憐れみが向けられる。


「……実は、団長からいただいた招待券を……」


乱闘で、勝ち上がって学園祭行きを決めていたノル。自分はまたセルジオのせいで病院の世話にならなきゃならないのかと。気が気ではない。


「ああ。学園祭な」


言葉を濁した彼だったが、セルジオは案外平気そうな表情で。


「心配しなくても、俺はちゃんと招待券を貰ってる」


彼は自慢げに言って、最後の決戦前で負けたフェータを見下ろす。その場にいた誰もが心の中で、フェータに合掌する。セルジオはニヤニヤ笑いながら、勝負に負けたフェータの元へ。


「……なんでしょうか」


わざわざ笑いに来たのかと。お前はなんて嫌なやつなんだと。フェータは、とても嫌そうな声色で尋ねる。


「実は俺、リストバンド作ったおかげで、そこそこ顔が効くんだよなぁ」

「僕も学園祭行きたいです、ハーバーマス様!!!」


フェータが屈するのは早かった。


「なんというか。あいつ、上手く世を渡ってるよ」

「あの瞬時の判断を実戦でも発揮してほしいな」


ノルとトヴェリ達は、貴族の出身でありながら軍でなんだかんだ可愛がられている後輩を見て苦笑する。


「よかったな。フェータ」

「あーあ。おれも代表、見に行きたかったなー」

「学園祭ってのも、楽しそうだしな」


腕相撲で負けた部下たちは、セルジオが暴れないことに緊張を解いて自由に語りだす。


「それにしても。警備が大変ってのは分かるが、招待券が二枚っていうのも少なくないか?」


そのうちのひとりが、疑問に思っていたことを口にする。


「俺が聞いた話だと、友人や知人を招待するのが二枚だけみたいだ。……保護者は別枠らしい」


学園祭の警備システムに携わっているセルジオが応えた。

彼らはその答えに、ハッと息を飲む。エリスはこの二枚分しか、学園に人を呼ぶことができなかったのだ。



その数日後。



「どうしたんだろ、こんなに……。もしかして何かやらかした?」


学園にいるエリスの元には、部下たちからたくさんの仕送りが届くことになる。どれも必需品で、あって困るようなものではなかったため、彼女は怪しみながらもありがたく受け取った。しかし、彼らが気遣うまでに至ったその経緯を、エリスが知る由なかった。


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