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〜転生者達の傭兵国家〜  作者: あぱ
軍人少女
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エリス優勝おめでとう!ガイアス様も準優勝!凄いですわ」

「ありがとうございます……」


試合後、流れのままに表彰式を終えたエリス。

シロンたちと合流し、運営から闘技場を退場するための指示を待つ。今大会から設置されたスクリーンには、試合のリプレイがたくさん流されていた。その中にはやけに短い試合映像があるわけだが、そのほとんどがエリスの試合だったりする。


(やっと終わった……)


彼女はドームの四方八方から突き刺さるような視線を浴び続けるという、居心地悪い空間から抜け出せたことにひとまず安堵した。


「エリスちゃん!ガイアス様との試合で、最後に何をやったの?」

「え? ああ。あれは魔術で作った槍を投げただけだよ。」

「え、そんな事もできるの!?」

「まぁ、冒険者の先輩に教えてもらったんだ〜あはは」


アリスが興奮した様子で、話しかけてくるのに答えると、ケルヘラムは怪訝な表情だ。


「確かにそうだけど、君、今回移動系は一度も使ってないでしょ」

「えっ。それってあんなに速いのに、瞬間移動は使ってないってことですか?!」

「スロー再生でフローリアが走る様子が分かったのは、高速移動しかしてないってこと」


「ええ〜。エリスちゃんって、やっぱり凄い!」とアリスがはしゃぐのを遠くに聞きながら、ラゼは思考に更ける。


(これで王国がどう動くかが問題だな)


帝国に起こる大事件を預言する前に、今回の大会で優勝者を当てるというのがあちらの出方だった。エリスが思うに、先読みの巫女は十中八九この世界を乙女ゲームの世界だと認識している転生者か転移者だ。モブポジションだった自分がシナリオを折り曲げているだけで、その「大事件」とやらは実際に起こる可能性は高い。


(シロン、記憶に抜けがあるかもしれないってこと緋翠の宮の件で分かっちゃってるからなぁ。巫女には情報を落として欲しいんだけど……)


正直言って、軍人なんて職業についたからか、そんなお花畑みたいな世界の話をされても現実的ではないという感覚が抜けなかった。エリスにとって小説のシナリオどうこうというのは、本音を言えば危険が及びそうなイベントだけ知ることができればどうでもいい。いや、別にシナリオについて知らなくとも、国に仕える者として排除するべきものは排除する。結局、どんな裏事情のある任務だとしても、自分は自分のできることをやるしかないのだから、やることは大して変わらない。そして学園生活なんてたかが、5年だけだ。その間の出来事を全て分かっていたとしても、華の盛りが過ぎたその後の長い人生にどう影響するかなど分かったものではない。


(はぁいつまでこの世界に入れるか分からないし早めに王国との決着をつけなきゃ。もし、すぐに悪神に呼ばれたならいっそ行く前に滅ぼしとこう。国ごと)


エリスは心の中で溜息を吐く。二度目のバトルフェスタを終え、次に待つのは学園祭。いかにも学生たちの祭典という感じで、小説のイベントが発生しそうな行事だ。何もないと思うことの方が不自然である。


「よければ、この後打ち上げでもどうですか? 実は部屋を借りて準備もしてあるのです」

「是非やりたいです! ありがとうございます」

「ふふ。アルレンも手伝ってくれたのよ」

「おおっ。ありがとな、アルレン! 肉も用意してくれたか?」

「ウレックならそう言うと思って、店に頼んでおきました」

「よっしゃ!!」


楽しそうに笑っているシロンや他のメンバーを、エリスは遠巻きに見据えた。


たかが5年の学園生活。もうそれも折り返し。エリスの場合はいつ軍や悪神に戻されてもおかしくない。

こうして学生に混じって血生臭い孤児上がりの軍人がいる違和感は、任務だと言い聞かせて自分の中に押し込めて来た。

だが任務でも、彼女たちと出会って友人として暮らしている時は、やっぱり楽しかった。何せ同年代の友達ができたのはこれが初めてだったし、学生という期間限定の尊い時間の体験は浮き足立つところがあったと認めよう。


(……いつまでこうしていられるかな)


「エリスさんも来るよな!」


ウレックに呼ばれ、エリスは微笑みを浮かべる。


「はい。行きますよ」


定かではない未来のことを考えても仕方ない。

彼女たちの大切な時間を邪魔する奴らは、自分がぶっ飛ばせばいい。それが仕事であり、友としてやるべきことだ。


(私がいる限りこの人たちに、手は出させない)


エリスはそっと振り向いて、ナイフよりも尖った鋭い眼光を向ける。先ほどからこちらを伺っているひとりの人物は彼女と視線がかち合い、びくりと肩を震わせた。


(何かするなら、私にどうぞ)


お前が黒だということは、分かっているぞ、と。エリスは泳がせていた王国側の人間に仕掛ける。それは彼女にとっての宣戦布告。


王国のスパイとか、もうひとりの転生者とか、シロンが化け物になるかとか。そんなことはこの国で『シュヴァルツ』と呼ばれる自分が、阻止してみせる。


たった5年しかない小説の流れは、とっくの昔に歪んでいた。


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