3の85
『準決勝では、アラン・フェリクス・ザッハ対ガイアス・ラ・フェライトの対決でございます!』
『いやぁ〜楽しみですね!どちらもこの国の将来を担う方々です!今日しか見れることのない対決ですからね!』
実況の声とともに会場は大盛り上がりだ。それは、そうだろう。皇帝の息子であるアランと帝国軍総帥の息子の対決である。盛り上がらない方がおかしいくらいだ。
「今日のガイアスは、なんか違っかたけどあいつ勝つ気なんじゃないか?」
「え?あのガイアスが?」
観客席にいるウレックとアルレンが会話を始める。
「勝つのはアラン様よ」
「シロン様は、アラン様が大好きですもんね」
「お互い本気で戦うところをみたら面白いだろうな」
アリス、シロナ、ケルヘラムもその後に続いて話を始める。彼らが見つめる先はアランとガイアスが剣を手に持ち見つめあってる。
「ガイアス、今回本気を出して戦って貰うよ」
「アラン……俺は、強いぞ?」
「ほぅ?いつもと違って事ね」
お互い笑い合いながら話す。いつも本気を出さないガイアスにアランは、気づいているのでわざとこのことをいう。
「では、両者構え。 始め!」
ガイアスは、スキルである風魔術を自身のの体と剣に纏いアランへ攻撃を仕掛ける。
「はぁああっ!」
「はぁああ!」
アランは、右目を紫色に光らせ自身の剣に火を纏い体に身体強化魔術を発動させる。剣と剣の打ち合いで火花が飛び散る。風で炎が巻き上がるがお互いに怪我は負傷はなしだった。お互い手を休めずに打ち合いを続けて、攻防一体がしばらく続く。
「はぁはぁはぁ。やるなガイアス」
「お前こそ。だけど、俺は負けられない!」
ガイアスは、紫電を体に纏うと風を纏った時よりも数段早く攻撃を仕掛けてアランの足元に風を巻き起こす。
「ッチ」
アランもそれを避け左目でガイアスと全く同じことをやる。これは、天眼の能力である相手の動きスキルをコピーすることができゆスキルだ。
「やっぱり、そのスキルは強いね。自分の使えないスキルを劣ることもなく使えるなんて」
「ずるいって言うなよ?」
次は、俺の番だと言うかのようにアランは、自身の背中に氷の翼を作り浮き上がる。
『なんと!アラン選手がスキルを使ってたか翼を作ってしまいました!ガイアス選手は、空からの攻撃耐えることができるのでしょうか!?』
「まじか……これは、予想外」
「俺だってシロナと遊んでるだけじゃないからね。シロンと魔術を勉強しながら俺のスキルを研究しながら色々鍛錬してたんだ」
ガイアスは、いつもアランにわざと分けていたのでお互い本気を知らなかったので驚愕してしまった。
まさか、最強のスキルのさらに探求するとは思わなかった。
この技は、天眼と魔眼を両用することによって作ったのだ。
天眼の相手のスキル 魔術をコピーする力と魔眼の魔術を探究して自身が扱いやすくする力を使って使えるようになった。
「行くぞガイアス!」
「ッ!」
上からアランは、氷の槍を落としアラン自身も剣で追撃してくる。ガイアスは、慌てて後ろにバク転して避けたり横に移動したりして攻撃を避けるが攻撃を出来ないことにいらだちを覚える。
(クソ、アランには悪いがここで負けるわけにいかないのに!特待生は確実にアルレンに勝つ。なら俺は、あいつに勝ちたい!)
攻撃に転換しようと考えを巡らせる。思い出すのは、お母さんとのダンジョン巡りやお母さんとの対人だ。アランの攻撃を僅かに受けながらでも考え自信が今できることを考える。
「これか!はぁああ!」
「なっ!?」
ガイアスの周囲に強大な風が吹き上がり雷を纏った竜巻ができる。アランは、膨大な風の塊と雷に翼を砕かれ、撃墜した。
「これで空は飛べない決着をつける!」
「はぁはぁ。あぁガイアス!」
「「はぁああっ!」」
最後は、お互いの剣術のみで戦うことになった。お互い満身創痍で魔力も枯渇しかけてることを分かっているのだ。
「クッ」
「はぁっ!」
アランの剣がガイアスの剣に弾かれ剣が後ろに刺さりガイアスが剣をアランの首に突きつけた。
「そこまで!ガイアス・ラ・フェライト の勝利!」
「「うぉおおおお!」」
会場は大盛り上がりだった。今間までには見たことがない互いの力が拮抗した試合でレベルの高い戦いだったからだ。
「強く当てた。ごめん……」
ガイアスは勝利したにも拘わらず、ばつの悪い顔でアランに手を差し伸べた。かなり厳しい戦いをアランに勝利を収めたあと、今までずっと争うことを避けていた人を負かした事実と向き合うことになり、彼は困惑していたのだ。最初から勝つ気持ちでいたはずなのに、実際勝ってみれば煮え切らない感情に苛まれる。ガイアスと幼いときから一緒に遊んだ仲であるアランは、彼のそんな心中を悟ったのか、差し出された手を強く握ると勢いよく立ち上がった。
「やっと本気で戦えたな」
「!」
彼は負けたにしては清々しい面持ちで。その一言には勝敗よりも、こうして本気で戦えたことの方が嬉しいという思いが込められていた。そこでやっとガイアスは友であるアランから一方的に距離を置いていたことを自覚し、言葉を失う。
「楽しかった。次は負けないぞ」
アランから楽しかったと言われたのは、果たしていつぶりだろうか。彼がこの国の皇子で、自分は総帥の息子で。
でも、その前に自分たちは友であったはずなのに。学生の今だからこそ公に許されている友人としての交流を無視し、先ばかりを見て大事なことを見落としていたのではないか。
ガイアスは少し考えた後、困惑していた顔に笑みを浮かべ、
「次も俺が勝つよ」
そう答えた。アランは一瞬目を丸くしたが、どこか吹っ切れた様子のガイアスに笑う。
「その前にフローリアを何とかしないとな。策はあるのか?」
「一応はね」
「あいつも今まで手を抜いていたのがバレバレだな」
「そうだね。でも特待生は多分、まだ実力の半分も出してない。緋翠の宮からビーハムまで二人も転移できるだけの能力があるってこと、俺は忘れてないよ」
あの時シロンに夢中だったアランは、ガイアスの指摘に目を見開いた。そうだ。あの女子生徒は、スキルが移動とはいえかなりの距離を難なく転移できるだけの力がある。やろうと思えば、軌道も残さず相手の背後を取ることなど簡単なことのはずだ。つまり、誰にも追いつけない魔石起動のスピードに、一瞬で試合を終わらせることができる転移を使えば、彼女はもっと容易に試合を終わらせることができるということ。となれば、このバトルフェスタという場において彼女に勝てるものなど誰もいない。
「……あいつ、本当に何者なんだろうな」
「さあね。まあ、平民でヴァンドールに特待生として入学できたって時点で、普通の女子学生ではないことは分かってたんじゃない?」
「確かにな」
ふたりは隣の間にいる小さな少女を見る。
裏では皇族のために暗殺にも手を染めているアルレンを、負かしてみせる彼女は普通じゃない。ガイアスは一度剣を交えた時のことを思い出す。同い年の、それも肉体的に力が劣るはずの女子に圧倒されたのはあれが初めてだった。
後々になって冒険者として活動していたことを知り、ビーハムで出会ったゼーゼマンによれば運び屋なんて仕事もしているらしい彼女。あの時ははぐらかされたが、ゼーゼマンと顔見知りということは、それなりに位のある誰かに仕えている可能性が濃厚だった。理事長ファルスが引き抜いて来たことも、かなり引っかかる。
「すごく今更だけど、殿下はあいつのこと何も聞かされてないんだよね」
「ああ。そういうことに関してはアルレンがいるからな。……あまり深読みすると嵌るぞ。お前は疑うとすぐに壁を作るからな。アリスだって平民だ。中にはそういうやつもいる」
そういうやつ、とは平民でも能力に優れたものがいるということだ。ガイアスも冒険者ギルドに出入りするようになって、自分よりも小さな子どもが生きるために戦うことを生業にしているのを実際に目にしたときは衝撃を受けた。貴族である自分は、恵まれた環境で勉学を修めることができているが、そうでない子どもはあんな幼い時から自分の体を資本に働いているのだ。
全く生まれを匂わせないがエリス・フローリアもそうした環境で育ちここまで成り上がって来たのかもしれない。
現に、彼女が保護者らしき人物を連れてきたことは一度もない。見たことのある大人は、見るからに仕事で知り合ったような、良い意味でも悪い意味でも生活感がない人ばかりだ。
ガイアスの脳裏に、ノルとトヴェリが現れた時に見せたラゼの心から嬉しさのにじんだ笑みが浮かぶ。自分の知らない一面を見ただけで、どうしてこんなにも胸騒ぎがするのだろうか。 彼は自分の心も、彼女の過去もまだ知らない。




