3の84
魔導大会が終わり1ヶ月が過ぎた朝。
「マータ起きなさーい」
「マータちゃーん」
「まだァ」
「はぁマーター。」
「ふふ」
「何笑ってるの?アリス」
「いや、エリスちゃんは本当のお母さんみたいだなって」
「ママになってあげるって言っちゃったしね。でも、孤児院ではアリスもこんな感じなんじゃない?」
「まぁ確かに?」
「アリスにそだてられるなんて!いい子しか育たないんじゃない?」
「はは、なんでよー?たまに悪いことする子いるよ?私の物を隠したりお友達の積み木を邪魔したりする子」
「それは、かまって欲しいからだよ。」
「そうかな?」
エリスはエプロンをしてご飯を作りながらマータを起こそうとするがなかなか起きず眠っている。それを見たアリスは
、クスクスと笑いながらマータを起こそうとするもマータは一向に起きようとしない。
「はぁ、ママになるとは言ったものの大変だね」
「大丈夫だよ!私が手伝ってあげるから!」
「ありがとう!よし、出来た!」
「今日もこの方法で起こすのね。そのうちこれでしか起きなくなっちゃうじゃない?」
「まだこの環境に慣れてなくて疲れてるだけだから、もう少し大人になったら大丈夫だと思うよ。私が少しキツめの鍛錬を課してるってのもあるかもだけど」
「どうしてマータちゃんを育ててるの?」
「マータが望んだからね。彼女は、特別な種族だし狙われる可能性だってあるからね」
「そっかぁ。なら、いっぱい寝てご飯を食べなきゃね!」
マータは、元は人のいない魔境に住んでいたがベルドルーク王国の暗部達に親を殺され実験体にされていたのだ。
だから、これからも人間がいる以上、美しくなるであろうマータが貴族や王族、冒険者にだって襲われる可能性もなくもない。そのため強くなって貰いたいのだ。
「マータご飯だよ〜」
エリスはマータが寝ている寝室のドアを開けて料理が乗った皿を持っていく。
「ん、ご飯。」
匂いにつられて起きたマータはベットからトテッと降りて食卓に着いた。
「ママ エリスお姉ちゃんおはよう」
「「おはようマータ」」
「マータちゃんは、ご飯が好きだね」
「大好き!」
ナイフとフォークを持ち今か今かと待っているマータは、
エリスへ顔を向ける。
「じゃ、食べようか。いただきます」
「いただきます」
「いただきます」
エリスが作った料理は、ハイオークの肉のソテー焼きだ。彼女の見解では、魔力が多く含む物を食べればレベルが上がらずとも魔力容量が増えて強くなることができることが考察されていた。だが、普通の一般人の体では、過剰な魔力量なため体調を崩したり酷い時には魔力を貯める器が壊れる可能性だってあるので食うことはない。
その分マータには異常なまでに魔力の器が大きいため少しずつなら食べて成長することができるのだ。冒険者やその子孫が魔力量が多いいのは、魔力を含む肉などを食べているから強くなったりしている。(レベルが上がりやすくなる)
それでも、マータの特殊な個体では、次元が違うのだ。
エリスもほぼ特殊な位置に立っているがその理由は、エリス自身わかって居ない。
ちなみに、エリスは、アリスと自分にも違う料理を作っていて、アリスには、たまごサンドで自分には、スクランブルエッグを作って食べている。単純に好みで作っているのでめんどくさいとは思はない。
「ご馳走様。ママ」
「よく食べたね。おなかいっぱいになった?」
「うん!」
「そっか、じゃあ歯を磨いて練習服に着替えてきなはい」
「はい!」
前は、無口やカタコト言葉な事が多かったが、今では流暢な言葉を喋り、元気いっぱいである。今日は、学校も休みなので訓練場を借りてマータに修行をつける予定だ。
「アリスは、どうするの?」
「うーん、私は、勉強しなくちゃね。この前のテストやばかったし……エリスちゃーん勉強分からないよ〜」
「はは、じゃあマータの修行が終わったらシロナを誘って勉強会でもしよっか」
「うん!」
アリスと話しながらエリスは、運動着に着替える。
最近髪を伸ばしてることもあり、後ろで一つ縛りにする。
「よし、マータ準備出来た?」
「うん」
「じゃ、アリス行ってくるね」
「お姉ちゃん行ってきます!」
「行ってらっしゃい2人とも」
スリッパから靴に履き替えてドアを開ける。涼しい秋風が吹くので、ちょうどいい気温だ。
「じゃ、今日は50km走ろうか。途中でキツかったらやめてもいいからね」
「頑張ります!」
毎回、鍛錬をする前に軽く走ることにしていて、徐々に走る距離とペースをあげている。6歳には厳しいんじゃないかと思うかもしれないがこの世界は、いやどの世界も弱肉強食なのだ。ここは安全だとはいえここからマータが出ることになった時、怪我をして欲しくないのだ。だから、愛情を込めて厳しくする。それに、マータにはそれだけの才能があるのだ。特別な種族に産まれ『シュヴァルツ』という世界最強と言っても過言でも無い親代わりがいるのだから。
「よし、じゃあ私に着いてきて」
「はい」
ちなみに走るのは学園の結界があるギリギリのところで1周20kmもある。それぐらいこの学園は広いのだ。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「はぁ、はぁ、はぁ」
ペースは変えずにエリスが前に入り後ろに着いてくる感じでマータはエリスの走りにくらいつく。しっぽがフリフリしていて可愛らしいがそれは、あるといる時に感じるもので
走ってる側からしたら邪魔になる。
「うーん、マータのしっぽどうしようか。それじゃ弱点になるかもだし」
50km程度など余裕なエリスは後ろを時々振り返りながらかんがえる。特殊な血族である妖狐族は、魔力が増えれば増えるほど尾が増えるそうだ。エリスの天理眼で調べたので間違いがない。身長のせいか4尾もあるも少し邪魔そうだ。
だが、種族固有のを取り除くような事はしたくないので何か上手く使えないだろうかと考える。背が低いうちは隠しとくのが得策だと考えることにした。
「よし、終わり!よく頑張ってね偉いぞ」
「うぅ〜」
走り終えたエリスは、マータを存分に撫で回す。マータは、嬉しそうに撫でられる。
「さすがマータね。じゃあ少し水を飲んで休憩したら。組手からやろうか」
「はい」
そういい、エリスは魔術で水を生成し、予め用意しておいたグラスに注ぐ。魔術で生み出された水は、汚れなども入っていないので安心安全で、美味しく冷たいのでごくごく飲める。それをマータにも飲ませてあげて軽くストレッチをする。
「よし、息は整ってるね。じゃあやろうか」
「はい!」
お願いの距離は大股ひとつ分で向き合う。使用するのは自身の体のみで、魔術や魔石は使用禁止。 ちなみに妖狐であるマータは人間と違い魔石がなくても魔術を起動できるのだが、魔石があった方が便利なのでもう少し成長したら最上級の魔石をあげるのも悪くない。
「はっ!」
「ふっ」
まず、仕掛けたのはマータで拳をエリスへ放つ。それを簡単に弾きマータに蹴りを放つ。それをマータは自慢のしっぽでキャッチし腕ごと絡み取りエリスを引き寄せて蹴りを放った。
「はぁああ!」
「ふふ、いい動きだね。だけど━━っ!」
「ふっ!」
エリスは、マータの動きを読んで、足を掴み地面に掴もうとしたがマータは、蹴りを放つ振りをしてその場で横回転して拳で、マータはエリスの顔にヒットさせた。
「―――当たった!」
「うっそ。まさか、もう私に一撃を与えるなんて……」
鍛錬を初めてまだ1週間しか経っていないのに自分に一撃を与えると思ってなかったエリスはマータを見てぽかっんっとしてしまった。エリス直々に育ててたノル達ですら、1ヶ月はかかったのだ。
(はは、これは思ってた以上な大物だね)
「よし、じゃあ次は武器ありだね」
「はい!」
魔術で構築した鉄の剣を渡してエリスも自分の分も作る。
しっかりと刃もあるのでこれが当たったら最悪大怪我をするかもだが、それを含めての鍛錬である。
「私を殺す気で来なさい。そうしないとマータは死ぬわよ」
「分かりました!」
マータのいい所は、言われたことの意味をしっかり理解し返答してくれる事だ。普通なら躊躇するが彼女は、その制約がない。なので何時でも本気なのだ。
お互い剣を構える。始めの合図はない。ただ、己のタイミングで仕掛けるのみ。
「はぁっ!」
ガキッン
エリスは突きを放ちそれに対応する形でマータが剣の腹でエリスの剣を受け止める。さらに、剣を滑らせ自身の剣を地面に刺し蹴りを放つ。
「へぇー。やるね」
エリスは、関心したが簡単にマータの蹴りを受け止める。だが、マータは剣をもう一本創造し、上から振り落とす。それを難なく避けるエリス。
「はぁはぁはぁ」
「うんうん、いいね。だけど、少し甘いかな?」
「っ!?」
呼吸を整えていたらいつの間にかエリスの剣がマータ首に掛けられておりマータは自身の敗北を知った。
「……」
「マータは、強くなってるからそんなに落ち込まなくて大丈夫だよ?むしろ異常くらいだよ」
「ほんと?ママに攻撃当てられなかったし。ままは、凄く手加減してた」
「はは、バレてたか。ままは、世界最強だからね。自分の娘には負けないよ!」
落ち込んでるマータを励ますようにマータの頭を撫でながら自分が強すぎるだけだと主張する。事実エリスの発言は何も間違えてない。エリスは、ほぼ人外の境地にいるのだから。
「よし、少し軽食とって魔術の勉強しようか」
「勉強……ガクっ」
「もっと強くなるためには、頭が柔らかくならないとダメだからね!」
こうして、2人の修行は日がくれるまで続いた。
「エリスちゃん達私を忘れてる?」
その頃家で勉強していたアリスは、中々帰ってこない2人に忘れられているのでは、ないかと考えていた。




