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――魔導大会が終わった後には、晩餐会が行われる。
これは、第一回目の魔導大会からずっと続いてきたもので、友好を育む目的で、出場した全学院、学園の選手が参加可能であり、生徒達にとっては競技と並んで楽しみにされている行事である。
国が違い、種族が違い、故に価値観の違う者達との、貴重な交流の場。
そう難しく考えずとも、単純に年頃の男女であればこういう場は最高に楽しいもので、気心の知れた友人、または全く知らない他校の生徒と絡み、笑う。
この晩餐会で生まれたカップルなども少なくないため、男女共にそういう意識を持って交流に臨んでいる者もそれなりにおり、実際初々しさを醸しながら、仲良さげに話している男女もすでにチラホラといた。
そしてそれを、周囲にいた別の生徒達が、からかいながら遠巻きに眺めるのだ。
大人達もまた、この時ばかりは生徒達の騒ぎには一切口を挟まず、一角に集まり、酒を飲み談笑を始める。
バラジア・ナスカ・トランクラもまた、そんな空間の中にいた。
ボックス・ガーデン総合優勝。同時、最優秀選手としても表彰。輝かしい結果を残したが故に、彼の周りには男女共に多くの者達が集い、彼を褒め、しかし当人は終始何とも言えない表情であり。
やがて囲まれるのが面倒になってきたのか、無難な対応でその場を切り抜け――と、そこで、彼の様子を見て、面白おかしく笑う生徒2人。
「お疲れ、バラジア。いやぁ、大人気ねぇ」
「お疲れ。相変わらず人気者だね、君。まあ、ボックス・ガーデンなんて花形競技で優勝だし、さもあらんって感じだけど」
そう声を掛けてきたのは、ルナとカリナといつもの二人組。彼女らに対し強く出れない彼は、苦笑気味に言葉を返す。
「あと、ルナをナンパしたんですって?」
「いや、おれでは無いのだが……」
「それでも近くにいたんでしょ?」
「あぁ悪かった」
「ふんっ」
「まぁまぁカリナ許してあげて?バラジアは、試合の前で集中してて周りを見てなかっただけなんだし」
「まぁルナがそういうなら」
「すまなかったルナ。うちの奴が迷惑かけて」
「いいのいいの」
イカつい彼がか弱い2人に謝ってる姿は非常に面白いが周りは、特に気にせず会話を続けている。
「やぁやぁおつかれさまだねー」
「久しぶりに見たね」
「同意」
「なんか冷たい!?」
やってきたのは甘い香りを纏ったルーヴァであった。
彼らは共に面識があるので軽く挨拶する。
「まぁいいや。いやぁ今年は面白いことになったねまさか2年のエリスちゃんより先に落とされるとは思わなかったね、彼女、何者?」
「特待生であり努力家よ」
「へぇあの学院の特待生か、それはすごいわけだ」
「むっあのチビがか。確かに女にしては強かった」
「俺もそこに混ぜてくれないか?」
なんとやってきたのはモルタ帝国皇子であるアランだった。戦闘時とは違い爽やかな表情できた。
「初めまして私は、ヴァンドール魔導学院5年ルナルナ・アローラでございます」
「あぁ楽にしてかわないよ。この人たちは俺が王族だと知っていても変わらんしな」
「ありがとうございます」
「さすが王族だ。イケメンで心の器も広いとは」
「そちは、魔族でも地位が高いんじゃなかったか?」
「まぁ形だけな。」
大会時は、バチバチしていたがなんだかんだ気の合う友人のようだ。
「して、その女はどこ行った? まだここにおらんようだが」
「ん、確かにそうねぇ」
「来たようだね」
彼らの見る先では、小柄な少女が大きなドアを潜り堂々と歩いて入ってきた。
エリスは会場に入るとすぐに品の良い音楽と、ガヤガヤと楽しそうな喧騒が聞こえてくる。
「お、エリス! 待っていたぞ」
そう、すぐにこちらへと声を掛けてきたのは、ルーヴァ先輩。
彼の隣には、ルナ先輩にカリナ先輩 ルーヴァ先輩にバラジア に殿下までもがいた。
「こんばんは、皆さん。お疲れ様です」
「あぁ。エリスは、だったな。今回は俺の一敗だ。もう、大会で戦う機会はないが、いつか必ずリベンジしよう」
(そうかな?私はすぐにあうきがするけどね)
「アレは勝ちとは言えないよ。一対一なら普通に負けてたろうしね」
「だが、お前は混戦に勝機を見出し、実際に俺を落とした。である以上、貴様の作戦勝ちだ。これで俺が、『一対一ならば勝てていた』、などと言ったところで、間抜けにも程があろう」
そう言ってバラジアは、エリスにワイングラスの一つを渡す。
「飲め」
「なに、私を酔わせて部屋に連れ込むき?」
「なにが連れ込むだ。俺は一応 彼女いるしガキには興味ねぇーよ」
「へぇー」
――それから、皆と話を進める。シロナも入りそうにこちらを見ていたがボックス・ガーデンのメンバーで集まってしまったため入りずらそうだった。
競技のこと、戦いのこと、ボックス・ガーデンのコツ、バラジアの学校の話、こっちの学院の話。
意外と話は盛り上がり、1時間くらい話したところで、バラジアは「他へ挨拶に行ってくる。ではな」と言い残し、この場を去って行った。殿下も「風にあたってくる」といい
シロナと会場を後にした。シロナは突然話かけられて、顔を真っ赤にしついて行った。
「エリス君は、将来どうするんだい?」
「私ですか?今のところ冒険者として各地を回って見たいなーって思ってます。」
「いい夢だね!君は強いし冒険者にぴったりだろうね」
とっさにルーヴァに問われたがまだ酒が全体に回らないうちだったのでなんとかすぐに回答できた。
「じゃあ私も明日用事があるので部屋に戻りますね。先輩方おつかれでした!」
「お疲れ様エリスちゃん」
「エリスちゃんじゃーね」
「エリス僕が送ってこうか?」
「ルーヴァ先輩に襲われたくないので1人で大丈夫です」
「ははっそうかい。じゃ気をつけて帰りたまえ」
エリスは、少し酔った状態で部屋に戻った。飲みすぎると明日に影響するしこの前の事があったので酒は比較的抑えた。最悪 魔術を使って体内のアルコールを分解すればいいのだけど。
「さすがにこの匂いで部屋に戻るはまずいよね。マータいるし。」
トイレに行きアルコールの分解と匂いを消す魔術を発動さ
せとく。酔いがさめたので少し早歩きで部屋に戻ることにした。もしかしたらお腹をすかせて起きてしまったかもしらないからだ。そのためにスキルを使いパーティ用の食事をいくつからくすねて来た。虚数空間に入れて置いたので腐ることも冷める事もないので料理の質は落ちることはない。
(ん?あれは、もしかしてベルドレークの暗部?まさかまだ懲りないの?)
せっかくいい気分になっていたのに最悪のタイミングであったことに少しイラついた。




