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小康状態。
脳筋魔族と殿下が、互いにそうやって睨み合いを始めたがために、しばし、戦場が停滞する。
「あちゃー、怪獣ツートップが揃っちゃったね。実質決勝戦かな、これが」
そう、楽観的な声を溢すルーヴァ先輩に、エリスは肩を竦める。
「怪獣大決戦に巻き込まれた、小市民Aの気分っすね」
「あはは、面白いこと言うね、エリスちゃん。まあでも、相手が怪獣でも、泣き所っていうのは、必ずあるものだよ。エリス、悪いけど、手助けはさっきの一発だけね。俺も君とも戦いたいし」
「フン、雑魚ならば雑魚らしく群れていても、こちらとしては一向に構わんぞ」
「相変わらず口が悪いですね、バラジア。まぁエリス当然ながら、この場にいるのならば、手加減はせんぞ」
「えぇどうぞ」
ニコニコ笑うエリスをみて3人は固まる。さっきの戦いでの余裕ではないことは分かっているのだからなぜ笑ってるかと言うと戦闘を楽しんでるって証拠だからだ。
(この状況は、私にに有利に働くかもしれない)
この状況ならば、混戦は必至。しかも、この三人は実力者だ。脳筋魔族とルーヴァ先輩は勿論、殿下は大陸最強の国の皇子だ。
ならば、予期せぬ被弾が増えることは間違いないし、状況がカオスになるのも目に見えておる。ましてや、エリスの実力を知らない3人がすこし油断してるのは、事実なのだ。
――最初に攻撃を開始したのは、殿下だった。
突如、周囲に散乱する瓦礫が浮き始め、彼の下に集まって行ったかと思うと、それが生物の形を成していく。
生み出されたのは、周囲の建造物と同じくらいの高さがある、狼。
「カァッ!!」
その瓦礫狼が形成される途中で、脳筋魔族は突撃を開始。
だが、瓦礫狼の完成の方が一足早く、角張り、如何にも攻撃力の高そうな前足でのフックを放ち、それを脳筋魔族はナックルダスターで殴って軌道を逸らすことで、回避。
その重量の感じさせる巨体からは、信じられないような機敏な動きをしている、あの瓦礫狼。
恐らくゴーレムの一種なのだろうが、エリスが砂漠エリアで戦ったゴーレムとは、比べものにならない程の練度だ。
接近戦が主体である脳筋魔族は、距離を詰めようと動き続けているが、逆に殿下は、瓦礫狼を主軸に、牽制の魔術を次々と放って、一定の距離を保ち続ける戦い方をしている。
さすがエリスに劣るが珍しいスキルを持っている方だ。
恐らく……接近戦に限って言えば、脳筋魔族の方が上手だと判断しているのだろう。殿下は、接近戦も強いが、メインはやっぱり魔術だからな。
そして、そこにルーヴァ先輩がちょっかいをかける。
ルーヴァ先輩はトラップのような、相手の動きを阻害するタイプのスキルが得意らしい。
使い方も上手いな。
脳筋魔族には、動きを少しだけ阻害するような魔術を放つことで、瓦礫狼の攻撃から避けにくくさせ、殿下には、脳筋魔族への対処に気を取られた一瞬の隙を狙って、致命傷にはならないまでも、ダメージは受けるであろう攻撃を続けている。
二人は鬱陶しいとばかりに、簡単に払ってそれらを防御し、殿下に限っては同時に反撃も行っているが、この妨害を続けることが出来たら、いつかはあの二人もまともに食らってしまうだろう。
鬱陶しく、だが排除の第一目標にはならないような、絶妙な邪魔し具合だ。エリスはと言うと、あの乱戦の中に入るタイミングを見ていた。入ろうとするもスキルや魔術が入り乱れていて入るタイミングがなかなか見えない。




