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――転送。
目を開き、辺りを見回すと、すでに景色は会場裏から変わっており、エリスはボックス・ガーデンのフィールドに立っていた。
ここは……今回の開始は砂漠エリアか。
足を取られる柔らかい砂と、穏やかながらも稜線が形成されるくらいの、しっかりと勾配のある砂丘が特徴の地形で
――ぶっちゃけると、今エリスが一番苦手・・とするエリアだ。そもそもエリスのスキルは、移動系と言う、スキルになっている。魔術も苦手というていなので、そこまで使えない。
「……マズいな」
剣がメインウェポンのエリスは、接近戦が基本だ。
相手の懐に飛び込めるくらいの距離が、間合いとなる。だが、こんな何もない、遮蔽物もないエリアは、明らかに遠距離攻撃が有利であり、エリスとは相性が悪い。足場も悪いし。距離を詰めようにも、逃げられながら魔術ぶっ放され続けたら、一方的にボコボコにされて終わる未来しか見えない。早いところ移動しなければ――と、そんなことを考えていると、フィールド全体に、高らかにブザーの音がなり響く。
本戦開始。
「……フゥ」
とにもかくにも、まずは移動だ。
さっさとこの危険地帯を抜けないと、待っているのは早期リタイアである。そうして、移動を開始したエリスだったが……その行動は、裏目・・に出る。
「? ――うわぉッ!?」
魔力を感じた、と思った次の瞬間、突如地面がうねり出し、エリスは体勢を崩し――眼前に生み出されるゴーレム!砂で構成された、流体的な肉体のゴーレム。四、五メートルはあろうかという巨体で、とりわけ腕が太く、暴力的な質量をしていやがる。
斬撃が、最も効果のないタイプの敵だ。
相手の姿は見えない。砂に隠れているのか、どこかの稜線の裏側にいるのか。
(やっば、一番嫌だと思ってた状況になったッ!!)
「うぉッ――」
エリスは、地面をゴロゴロと転がってゴーレムの重量級のパンチを回避。連続して放たれるパンチ、口から放たれる砂の放射から逃れ、状況を打開するため、反撃する。
「うーん、魔術で水を流すくらいいいよね?」
さすがに水自体は、誰でも生成できるのでエリスは、大量な水を出す。
「よいしょっ!」
剣を振りかぶり砂のゴーレムをぶった切りこのゴーレムを出してる人物を魔力感知で探す。
(いた。そっちか)
出処を見つけたので天衣を使い一気に詰める。
「ッチ!いけ!」
その間に男はゴーレム5体を生成するがエリスは水魔術を使ってゴーレムをぶった斬ろうとるがそう簡単にやらさせてくれないらしい。砂の壁を作った。やらかい砂にガードされ剣は受け止められてしまった。
「ふ、大した魔術を使えない女が本戦に出てるとは驚きましたね」
「それでも本戦で出れる実力があると思わなかったの?」
「この環境で剣技だけで勝てると思わない方がいいと思いますけどね!」
更に10.20体とゴーレムを増やしていく。さすが本戦に出る選手だろうか。口調ではエリスを舐めているがそれは、相手を怒らせ罠に嵌める作戦だ。並の学生ならこのゴーレムに囲まれた時点で諦めるだろうけどエリスは、違う。
「ふふ、それで勝った気なの?所詮動くおもちゃじゃない」
「それは、どうですかね。行けゴーレムたち!」
何体かは大きな腕を振り回し もう何体かは簡易な土魔術でエリスを追い詰めていく。
「砂塵爆裂!」
「なっ!?」
更にスキルなのか男が詠唱をすると砂が舞い 、なんと爆発したのだ。
「変われ」
「ッ!!」
まさかこのようなスキルがあるとは驚いた。土魔術を変質させているのか元からある物体を変質できるのか分からない。もし、元からあるものを変質させているなら驚異になり得る。
「チッしぶといな君。」
「しぶとくてすいませんね!」
さすがにやられっぱなしじゃ嫌なのでエリスは、天衣を使う。
「は?」
目の前から突然消えたエリスに男は、驚き一瞬、体を固めてしまったのがダメだったのだろう。男は、エリスの、超越した、スキルに対応出来なくなった。
「じゃあね」
「ッ!」
上へ天衣したエリスは剣を振りさげ男をダウンさせた。
一瞬固まった時点で死んでいたがこれは、お遊びなので死ぬことはなかった。
パリンと生徒がいなくなりエリスは、息を吐く。
「はぁ最初っから大変だなー」
◇ ◇ ◇
――エレジア魔術高等学校、5年生ルーヴァ・アスラン
学院のボックス・ガーデン出場選手の中で、誰もがトップであると認める実力者である。予選においては、皆が想定していた通り、頭一つ抜けた実力を示し、圧倒的な一位抜けで本戦への切符をゲットしていた。
そして、始まった本戦で彼が転送された先は、市街地エリア。
多くの遮蔽物があり、建造物による高低があり、必然的に奇襲が多くなるエリアである。
経験豊富な彼であっても、やはり緊張は存在しており、心臓がいつもよりも早く脈打っていたが――自らを鼓舞するため、わざと不敵に笑みを浮かべ、歩き始める。
隠れることなどせず。市街地エリアの、最も遮蔽物がない中央の道路を、真っすぐと。
と、その時、背後の頭上から、彼の後頭部を目掛け無音の魔法が放たれる。
それは、まるで弾丸が如き勢いで迫っていき、しかし
ルーヴァは届かなかった。どの段階で気付いたのか、瞬時に対抗魔術が放たれ、効果が中和される。
攻撃を行った選手は驚き、だが流石に本選に出場しているだけあり、位置を割り出されないようにするため、即座に移動を開始したが――遅い。
食らった魔法の位置、その魔力の残滓から、相手の位置をすでに特定し終えていたルーヴァは、風の刃を発生させる『鎌鼬』という魔術を発動し、放たれたそれは建物ごと・・・・相手選手を両断し、一瞬で戦闘不能にさせていた。
――ルーヴァには、これ、という代表するような魔術はない。
逆に言えば、彼が覚えている魔術は全て練度が非常に高く、並の魔法士など比べものにならないようなスピードと威力を有しているのである。彼の武器は、持ち前の反射神経の良さに加え、魔術に対する膨大な知識と、妥協のない実戦訓練による経験値。
自らを『器用貧乏』と評すことの多いルーヴァであるが、しかしその『器用さ』によって、彼はボックス・ガーデンにおいて最強の選手として君臨していた。しかも、誰も彼のスキルを知らない。彼は、見せたことがないのだ自身のスキルを。
「よし……動けるな。さあ、彼女はどこか。出来ることなら、この舞台で戦いたいものだが」
そうしてルーヴァは、ただ前進し続け、接敵し次第圧倒的な魔法能力で以て、相手選手を沈めていく。
蹂躙が開始する。




