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恋愛短編『ただナンパがしたかっただけなんだ。』

可愛い幼馴染がイジメられていたので、ただナンパし続けてみた。

掲載日:2022/02/09

「うぅ……ひっく……」


 彼女が泣いている。それを見てオレは……ナンパのチャンスだと思った。

 

※※※※※


 初めて会った時は良く覚えている。


 昔から可愛いものが好きだった。ヒーローの変身セットよりもぬいぐるみ派だったし。

 ライオンよりも子猫が好きだった。

 別に誰もそれを矯正しなかったし、普通に近所の男の子とも楽しく遊んでいたから、問題はなかった。


「やっくん。今日から保育園じゃぞ。頑張ったら今日は煮つけを食わせてやる」


「わかった。じいちゃん、かえりのクルマにきをつけろよ」


「おおう、孫に心配されるほどボケておらん。これから将棋倶楽部でナンパしてくるぞい」


 爺ちゃんに手を振って別れた後、オレはすごいものを見つけてしまった。


「やだぁあああ、おかあさあああん」


 そう泣いている彼女は太陽の欠片のようだ。

 キラキラと金の髪に青い瞳。ぷっくらとしたホッペ。

 なんかもう、めちゃくちゃに可愛い。同じ世界の生き物とは思えない。

 流す涙すらも美しく、そこだけ世界が違って見えた。


「ヒナ。お願いだから、泣き止んで、お母さんと約束したでしょ?」


「おいてかないででぇえええええええ」


「ねぇ、あそぼうよ」


「ふぇ」


 青い瞳を赤く腫らしながらその子がこっちをみた。


「じいちゃんがいってた。おんなこがないてたら、とりあえず、さそえって」


「さそえ?」


「ナンパっていうんだ。オレはヤシ」


「ヤシ? ヒナはヒナ」 


 それが、太陽の欠片との出会いだった。

 彼女の名前は日向(ひゅうが) 雛(ヒナ)

 どこぞの国のハーフであることはそれからずいぶん後に知った。


 母離れできなかった彼女はいつもよく泣いて、そしてオレが保育園に引っ張っていったのだった。

 そのころは仲もよかったが、彼女すぐに成長し、なんというか生意気になった。


「ふん、ヤシ。砂場をよこしなさい」


「わかった」


 どけようとすると、袖を掴まれた。


「……いっしょにおやまを作るの」


 それは、一緒に遊ぶだけなのでは?


「ヤシ、本をいっしょに読むわよ。ひらがなをおべんきょうするの」


「いま、ようこちゃんをナンパしているからダメ」


「……なら、ヤシといっしょにナンパする」


「わかった」


 先生から怒られたけど、どうしてだろう?


 年長になる頃には、すっかり命令口調。だけれど、それでも彼女の可愛かったので許せた。

 爺ちゃんが言っていたけど、顔がいいと何やっても可愛いらしい。

 確かに彼女がわがままを言っても、なんか許せてしまう。

 可愛いは強い。


 だけど、それも小学生になるまでだった。

 他の学区からも人が集まり、彼女はあっという間に人気者になった。

 当時やっていたテレビアニメで彼女のような金髪のキャラクターがいたのが大きな理由だろう。


「ヒナ、一緒に帰ろうぜ」


「今日は無理。クラスの友達と遊ぶから」


「わかった」


 そんな感じで何度か断れると、なんだか誘いづらくてそのまま僕らは疎遠になった。

 爺ちゃんにそのことを言うと。


「やっくん。良い男というのは悲しい別れを繰り返すのじゃよ」


「爺ちゃん。またフられたの?」


「……」


 爺ちゃんはナンパは上手だけど、彼女と長続きしないのだ。

 季節は廻り、僕らは中学生になった。

 オレは子猫を誕生日に買ってもらい、家で遊んだり、友達とひたすら走っていた。

 なんか知らんけど、オレの周りでは走るのが流行っていた。

 鬼ごっこ、リレー、かけっこ、延々と走っている小学生時代だった。

 可愛い女子達とも友達になれたし、ヒナと疎遠になったことを除けば楽しかった。

 ヒナはたまにすれ違うが、凄い目で睨みつけられる。

 

 中学生になると、さらにいろいろな人が増えた。可愛い子もたくさんいる。

 うん、クラス分けは上々、可愛い子もいるな。


「ナンパしよう。保っちゃんもどうだ?」


 入学式で隣に座っていた縁で友達になった保っちゃんをナンパに誘うが、顔の前で手を振って断られた。


「いや、無理だろ。ヤシ、お前……勇者だな」


「可愛いは正義だ。そして女子は可愛い、グェッ」


「フンっ!」


 鼻息と花の香りが流れていく。ヒナが後ろから追い越してきたのだ。

 すれ違い際に肘を入れられた。話さなくなって久しいが、たまにこうして肘を入れに来るのだ。

 暗殺者なのか、それにしてはあまりに可愛すぎるだろう、彼女は隠れるのに向かない。

 脇腹を押さえていると、保っちゃんが興奮した様子で肩を叩いてきた。


「おい、今の日向(ひゅうが)さんだよな。お前知り合いなのか」


「時々、肘鉄を入れられる」


「マジかよ。すっげえ」


「ヒナのこと知っているのか?」


 保っちゃんは少し遠い地区に住んでいると聞いたが?


「いや、知っているだろう。だってクォーターだぜ、めっちゃ美人だし。大人っぽいし、同じ年に見えないもん」


 確かに、ヒナは背が高い。オレよりも高いかもしれない。

 むぅ、爺ちゃんの指導の下、牛乳をたくさん飲んでいるのに……。

 ヒナはより可愛くなった。

 顔立ちははっきりしてきたし、昔は泣き虫だったのに今はいつも怒ったような表情をしている。

 でも可愛い、本当に可愛い、手足がすらっと伸び、青い瞳と長い睫毛がキツイ表情を引き立てる。

 ちょっと猫っぽい。そして可愛い。仕草がよいのだろう、ピンと背中を張った姿勢と立ち姿が美しいのだ。


「流石のヤシも、日向さんはナンパできないだろ?」


「……必要ない」


「だよなぁ、あんなに可愛いもんな」


 彼女はオレがナンパしなくても、上手くやるだろう。

 さぁ、オレは他の女子を探そう。


「いくぞ保っちゃん。入学してすぐの友達がいない寂しそうな可愛い女子を探すのだ」


「ヤシ、お前、鬼畜だな」


 ちなみに、その日のナンパは全て失敗に終わり、入学早々オレは変人の称号を与えられた。

 中学になっても、可愛いものをめでるか、ナンパするか、走ることしかしてなかった。

 俺は二年生になった。背が伸びたと思う。ヒナは別のクラスだが、最近は肘鉄すら入れに来なくなった。


「ヤシ、知っているか?」


「なんだ保っちゃん」


「日向さん、山辺に目をつけられたらしいぞ」


「山辺? あぁ、女子バスケの子だな。スタイルが良いし、そこそこ可愛いな」


「流石ヤシ。だけど、あいつって友達が多いだろ。そんで、ツレを巻き込んで日向さんを無視とかしているらしいぜ」


「なぜ? ヒナは人気者だ。可愛いからな」


 ヒナは世界一可愛い。当たり前のことだ。


「可愛すぎるからな。山辺さんの好きな人が日向さんのことが好きだからって理由らしいぞ」


「……そうか」


 席を立つ。彼女のことが心配だ。


「なんつうか、お前もお前で損しているよなぁ。このナンパ師め、また他の女子とのセッティング頼むぞ」


 保っちゃんが手を振っていた。どうやらオレに任せるようだ。

 ナンパは複数人の方が効率的なのだがな……。

 二つ隣にクラスに行くと異様な雰囲気だった。

 いつも人だかりができるヒナの周りにぽっかりとスペースができている。

 ヒナは一人で本を読んでいるが、おそらくずっとページは進んでいないのだろう。

 ただ、顔を伏せていた。


「ヒナ」


「……なに?」


 ナンパとは、とにかく相手に話させることだ。

 この瞬間が一番緊張する。ヒナは氷を連想させるような鋭い視線をぶつけてきた。


「今日は、いい天気だな」


 まずは天気の話、ありきたりだが次の一手に繋げやすい。むしろ次が大事。


「……」


 ヒナ、まさかの一手パス。これは困った。爺ちゃんがいう所の負けパターンに入ってしまった。

 本来ならここで距離を置くか、別の女子を探しに行くのだが……。

 前の席に座る。誰もいないのだし、座っても良いだろう。

 

「……」


「……」


 この沈黙は敗北に等しいのだが、他に手を思い浮かばない。

 今オレはヒナをナンパしようとしているのだ。諦めの悪さはナンパでは必要なことだ。

 周囲の奴らもこっちをみて、何とも言えない表情をしている。

 他のクラスの人間が来るってだけでも、変な空気なのに、そいつが無言で席に座っているのだ。

 まぁ、変な光景だろうけど勘弁してもらいたい。

 

 キーンコーンカーンコーン


「……」


「……」


 ヒナの横顔が尊いなぁとか思っていたら、昼休みが終わっていた。

 一言も話さなかったが、なぜか充足感がある。

 

「またな」


「……」


 そう言って、クラスを後にする。クスクスと笑われていたが、ナンパとはいつだって後ろ指をさされる覚悟があるものがするのだ。

 放課後、ヒナのもとへ行こうとするもヒナは帰っていた。


「フム、残念」


 一緒に帰って、久しぶりに駄菓子にでも誘おうと思ったのだが。


「ねぇ、あんた」


 話しかけられる。山辺だった。手入れしている黒髪に黒い手袋をしていた。

 普段バスケで荒れている手を保護するためだろう。


「なんだ?」


「日向さんとどういう関係」


「彼女をナンパしようと思っている」


「……一組の変態ってあんたのことね。入学してから何人もの女子を誘ったっていう」


「多分そうだ」


 変態とはなんだ、オレはただのナンパ師だ。


「ねぇ、今ね。ちょっと日向さんに立場をわかってもらっているの?」


「立場とは?」


「あの子調子に乗ってない、ねぇ皆?」


「そうよ」「あの髪って染めてんじゃないの」「私もそう思う」


 何人かの同調、その中には男子もいた。


「流石に、ちょっとキツいよな。遊びに誘っても乗ってくれないし」


「それは、誘い方が悪い。つまりナンパが下手くそだ」


「いや、ナンパとかじゃないけどさ。あるじゃん雰囲気っての?」


 なるほど、ナンパにおいても断れない雰囲気を作るのは大事だが……。


「どんな理由があろうとも、ヒナを追い詰めてよい理由にならない」


「はぁ、何それ! 日向がなんだっていうの?」


 イライラと山辺が詰め寄ってくるので、首の後ろに手を回して引き寄せた。


「ちょ、えっ?」


「ヒナは世界一可愛いんだ」


 耳元でそう囁く、これをやった後は大体股間に膝蹴りされるのでガードするが、山辺は顔を真っ赤にしてパクパクと口を開閉している。その隙に教室を後にした。


 翌日。


 早起きして、近所の家の前で待つ。

 ヒナが家から出てきた。


「……なにしてんの?」


「一緒に学校へ行こうと思った」


「それ、普通にキモイ。ストーカー」


 酷い目で見られてしまった。それでも彼女は可愛い。黒いストッキングが可愛い、鞄を両手で持っているのが可愛い、他にもいろいろあるが、なるほどこれは確かに魔性だろう。

 ちなみに「ここで一緒に行ってもいいか?」と聞くのは悪手だ。

 反対しかされないからな。それなら黙ってついていく方がいい。

 明確な拒絶が無い場合はその距離感でよい。これ、ナンパの鉄則である。


「……」


「……」


 そして無言、小学生のころは話題が尽きることはなかったが、今は一言も続かない。

 困っていると、助け舟が訪れる。


「ヤシ君。おはよう」


 同じクラスの峯川さんだ。彼女はオレが一年のころにナンパした女子だ。

 中学二年生にして、非常に人ができている。


「おはよう峯川。国語のノート助かった」


「いいよ、また頼ってね。それで? ナンパしているの?」


 ちらりとヒナを見る。恐ろしい目でこっちを見ている。


「あぁ、ナンパだ」


「そう、じゃ、邪魔したらダメだよね。何か協力できることがあったら言ってね」


「わかった。さっそく合コンを、グエッ」


「バカヤシ」


 久しぶりの肘鉄だった。鋭角に入れてくるあたり、技は衰えていないようだ。

 結局、話すことなく学校についてしまった。だが、昨日よりは幾分表情が良いようだ。

 さっそく昼休みにも教室に行く、すると、今度はヒナの周りに女子がいた。


「フム……」


 出直すかと思ったが、様子がおかしい、ヒナの周りに女子はいるが誰もヒナに話しかけない。

 ……なるほど壁を作っているのか。男子では突破は難しいだろう。

 しかし、ナンパとは壁を破壊する行為であるのだ。今日は応援がいる。


「頼む、峯川、耶麻」


「任せて」


「マジで、山辺陰湿だわ」


 我がクラスの女子二名に来てもらったのだ、無論二人ともナンパして振られている。

 耶麻はショートヘア―が愛らしい、クラスのムードメーカーだ。

 熱しやすい性格ゆえに周囲と色々あったが、すでにナンパ済みである。


「はいはーい、ちょっといい」


「日向さんだよね。食堂で話さない? 個人的に興味あったんだよね。ヤシがいっつもあなたのこと話しているからさぁ」


「ちょ、なんなの?」


 青い目を白黒させているヒナも世界一可愛いな。

 山辺が何か言っていたが、とりあえずヒナを食堂へ連れてきた。

 

「今日は助っ人二人に来てもらった」


「はぁ、あんたねぇ。どういうつもりよ、当てつけのつもり!」


「女子がいたほうが、警戒心がとかれてナンパが成功しやすい」


「この、バカヤシっ!」


 バチコーン。目に星が舞った。神速の左だった。世界が狙える。

 

「うわぁ、ちょ、誤解だから。ヤシ君は……」


「アハハ、まぁ、いいんじゃない? ヤシも悪いしさ」


 首が座らず、ぐるぐるしているオレを峯川は心配し、耶麻はケラケラと笑った。

 ヒナは二人を見て、完全に混乱しているようだ。

 ようやくダメージが回復してきた。


「ヒナ、困っているなら、君を助けたい」


「ヤシになんか助けてもらいたくない!」


「なぜだ?」


「ヤシなんて、私以外の女子を、な、ナンパしているんでしょう? 私のことなんてどうでもいいんだっ!」


 ……えっ? なんでそうなった? 今度はオレが混乱する番だった。しかし、彼女はいつかのようにボロボロと泣いて、俺の胸倉を掴んでいる。


「違うぞ」


「違わないっ」


「オレはヒナを世界一可愛いと思っている」


「嘘っ」


「嘘ではない、保育園であった瞬間から、心底君に夢中だ」


「誰にでも言ってるんでしょ?」


「ううん、違うよ。日向さん。ヤシ君はね、困っている女子を助けているだけなんだ。ただ、なぜかそれをナンパって称しているからややこしいんだけど。私も男子にイジメられていたのをヤシ君に助けてもらったの」


 峯川が冷やした手拭きを頬に当ててくれる。うん、腫れが引いていくようだ。


「アホだよね。ただ、辛抱強いし、あの手この手でくるし、なんでか上手いこといっちゃうんだよなぁ。そのままなら本来の意味のナンパも成功しそうなもんなのに、ヤシったら『オレにとってはヒナが一番だが可愛いものには幸せになってほしい』とかいっちゃうからね」


「……あんたバカなの? そういえば、保育園でも似たようなことしてたような……」


 信じられないものでも見るように、ヒナがこちらを見ている。

 正面から見るヒナも可愛い。


「そうかもしれない」


「えっ、まって、小学生の頃。女子を連れていた理由は?」


「友達がいないらしいので他の友達を紹介していた。まぁナンパだ」


 ちなみにその女子とは今でも時々遊ぶぞ。


「私を誘わなくなったのは?」


「ヒナに女子の友達ができて、嬉しそうだったから邪魔したくなかった」


「……本当に……バカヤシ……皆の前で誘われたら恥ずかしいだけだったの……私、それで誘われなくなって、嫌われたと思って、あんた、ナンパとか言っているし」


「オレはヒナが幸せなら、それを眺めているだけでよかった」


 バチコーン、今度は右。星が舞う。天の川に揺蕩うヒナも可愛い。

 そしてオレはおたふくのようにホッペがパンパンだ。


「ヤシ君!?」


「わぁ、バイオレンス。なんていうか、私達お邪魔みたいな?」


「ええと、そうかも。じゃあいくね。はい、おしぼり」


 二人は去っていくようだ。去り際にヒナに何か耳打ちをしているようだが。


「ありがとう」


 両ホッペにおしぼりを当てるとひんやりする。周囲の人間はドン引きしていたが、何人かナンパしたことのある女子がいたおかげで、騒ぎにならずにすんでいる。


「それで?」


「?」


「ナンパ、してくれるの?」


 上目遣いで体を寄せてくる彼女の頭を久しぶりに撫でる。


「無論だ。君は世界一可愛い」


「ヤシ。本当にキモイ」


 結果から言うと、驚くほど簡単に彼女へのイジメは消えた。

 ヒナのダブルビンタを見た男子たちは恐れおののき、それは山辺の想い人も同様だった。

 耶麻あたりは、こちらも復讐をするべきだと言っていたが、ヒナが望まなかったので今回の『ナンパ』はこうして終わったのだった。


「行くわよ、ヤシ」


「わかった」


 朝、ヒナと一緒に登校する。一年でオレの方が背が高くなったんだな。

 金髪を揺らす彼女の横顔はなぜか自信にあふれているようで、とても愛おしい。


「ねぇ、ヤシ。今日、お母さんが久しぶりにご飯でも食べに来なさいって」


「それは楽しみだな」


「私思うのよね」


「なんだ、オレはカレーにはソース派だ」


「私卵派、じゃなくて。ヤシ、あんたが私と距離を置いて、それで私何もしなかった」


 肘鉄を入れに来ていたけどな。あれはあれで可愛いが。


「私、距離が離れてもずっと見てた。クラスで無視されていた時もヤシに助けてほしかった。そうしたらあなたがきてくれた。だから次は私の番……あなたが好きよヤシ」


 一つ嘘をついていることがある。あの時食堂で幸せならば眺めるだけでなどと……。

 本当は、一番近い場所でヒナを笑顔にしたかった。

 ただ、怖くて、自分で良いのか自信が無くて。


『ナンパってのは、つまり寂しそうな女性を助けるってことさ』


 爺ちゃんが言った、そんな戯言を盾にして他の女子を助けることで自信をつけようとした。

 オレは世界一可愛いヒナの笑顔を守れる男になりたかっただけの、ナンパものなのだ。


「……ところで、ヤシ。私と話さなくなってから、何人の女子を『ナンパ』したの」


「数は覚えていないが、まぁ数十人ほどだ」


「……私、本気で後悔しているわ。これからは学校でも油断しちゃだめね」


「よくわからないが、オレにとっては君が世界一可愛いくて、大好きな女の子だ」


 そう言って、手を握るとヒナは握り返してくれた。

 細く柔らかい感触に意識が天国に行きそうになる。


「おはよー、ヤシ君。やっと日向さんと付き合えたんだ」


「はよはよー。これでやっと、ヤシにアタックできるね」


 峯川に耶麻が左側と後ろから抱き着いてくる。


「ちょ、何してんのよ! ヤシと私は両想いだったのよ!」


「知ってるけどさ、だからって諦めなくてもいいでしょ。日向さんとのことが収まってからって『協定』があったからね」


「そゆこと、結構ガチで狙っている人もいるからね。よろしくヤシ」


「フム、悪い気はしない」


「こ、この」


 プルプルと震えるヒナも世界一可愛い。


「バカヤシイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」

https://ncode.syosetu.com/n2707hm/

リクエストをいただいたので、番外編を書きました。

よかったらこちらもどうぞ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 非常にいい作品でした 読者的にはヒナちゃんはNOな人いそうですが、 可愛いは何をやっても許されるという一文が大きいですねw 『ナンパ』素敵でしたが惚れさせ過ぎもよくないですね(笑
[良い点] いいなぁ…ほっこりするし甘い( ´ u ` ) [気になる点] そりゃモテますよね〜…(笑) [一言] (っ'-')╮ =͟͟͞☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
[良い点] 上から目線で申し訳ないですが、 久しぶりに「小説」を読んだ気がしました。 素晴らしい読み物をありがとうございました。 [一言] ぜひ様々な番外編を描いていただきたいです! この世界の物語を…
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