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ヴォーパルバニーと要塞おじさん  作者: ベニサンゴ
第40章

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第2157話「無限投擲杭」

 一瞬だけレッジと言葉を交わすことができた。レティにとって、それだけで十分だった。


「レッジさんが時間を稼いでくれている間に、倒します!」


 "双頭の灼兎棍"を握り、決意を固めて飛びかかる。向かう先は赤熱した龍だ。

 レッジの元へと迫っている病魔の手が彼に届く前に、龍の中に渦巻く病巣を潰滅させる。それが今、彼女が己に課した勝利条件だ。

 遠く離れたところにいても、レティとレッジは一心同体。切っても切れない真紅の糸で結ばれている。彼が今、死力を尽くして抗っている。ならば彼のバディたるレティが死力を尽くさないはずがない。


「うおおおおおっ!」


 猛々しく声を張り上げて、熾烈極まる龍の猛攻へと飛び込む。検証班によって最も危険と判断された龍の懐へと潜り込み、ゼロ距離で攻撃を叩き込む。


「『赤兎の烙印』ッ!」


 ハンマーの内部に仕込まれた熱源が動き、赤灼の輝きを放つ。甲高い音を立てるハンマーを龍の駆体に叩きつければ、火花のように鱗が散った。


「いいね。やるじゃん」


 赤兎の烙印。暴虐の狩人(ヴォーパルバニー)に狙われた証。

 赤く焼け爛れた刻印に、次々と鉄杭が突き刺さる。剥き出しの弱点に深々と食い込み、龍は思わず悲鳴をあげた。

 回収屋コフィン。彼女はただ機体を取り戻すだけではなく、レティの側について周り、棺の中から取り出した鉄杭で援護射撃を繰り出していた。


「コフィンさんも流石ですね。本職と同じくらい戦えてるんじゃないですか?」

「買い被りすぎ。弾が切れたら営業終了だからね」


 コフィンの武器は1メートル強の太い鉄杭だ。彼女はそれを思い切り投げて攻撃している。威力は見た目相応に凄まじく、『赤兎の烙印』を狙えば龍の鱗さえ貫通する。

 だが、それは天叢雲剣ではなく、使えば減る消耗品だった。


「ふぅむ……。弾が切れなければ、まだまだ戦えますか?」


 コフィンの援護はレティにとっても大きな助けになっていた。これのおかげで龍の動きが鈍り、危険をすり抜けたことも多々ある。

 考え込むレティの問いに、コフィンは困惑の表情で頷いた。

 機動力を担保しているフックショットは圧縮ガスの力で射出されるが、ガス自体はかなりの量がまだ残っている。動き回るだけなら、当分問題はない。


「では、現地調達しましょう」

「……? なるほど、流石はレティ。〈白鹿庵〉だね」


 レティの視線を見て何かを察したコフィンは、口元を緩める。

 火焔に呑まれた焦土。そこには墓標のように黒々としたものが散乱している。フックショットの鉤爪がそのうちの一つに飛びかかり、地面から引き抜く。


「『機体解体』」


 手元へ引き寄せたそれを、コフィンは工具を用いて分解する。無数の精緻な部品で構成された、芸術的なほどに美しい腕。調査開拓員の、意識なき残骸。それを無慈悲に破壊して、ただの金属へと変える。

 そして、それを再び手の中で組み上げていく。

 一度ほどいたものを、再び編み直すように。


「即席、"死者の骨杭(デッドマンズパイル)"」

「いい名前じゃないですか。それなら投げ放題ですよ。なぜなら、材料はいくらでもありますからねぇ!」


 周辺に散乱している無数の調査開拓用機械人形。龍の猛攻と背後から迫る煌炎猩々の圧力に押しつぶされた同志たちの屍。本来ならそのまま朽ち果てる運命にあるそれを、レティは資源として見た。

 回収屋コフィンの能力があれば、それを武器に転用することもできるだろう。コフィンのメインウェポンが投擲ならば、天叢雲剣である必要はない。

 つまり、


「やっちまってください、コフィンさん!」

「いぇあ!」


 無表情のまま、コフィンは勢いよく杭を投げる。機械の腕をそのまま捻ったような異様な風貌のそれを、容赦なく龍に向けて突きつける、

 赤い兎の痣に深々と突き刺さり、滂沱の如く血が溢れ出す。


「いいですよぉ! どんどん投げていってください!」

「流石はレティ。常識に囚われない発想が素晴らしい」

「えへへ。褒めても何も出ませんよぉ」


 真っ直ぐな賞賛を受けて、レティはクネクネと身をよじる。

 周囲に転がる機体をかき集め、分解(バラ)して部品(モツ)を集めて再構成。生み出した杭を龍に投げつける。

 大量の調査開拓員が一気に、一箇所で行動不能に陥り、なおかつそのほとんどが機体回収を諦めた今の状況でなければ現実的ではない動きだ。しかし、だからこそコフィンの動きは精彩に満ちている。

 普段なら大切に扱うべき機体を武器として、あまつさえ龍へ投げつける。その背徳感がゾクゾクと背筋を震わせていた。


「コフィンさん、杭をできるだけいっぱい集めてください。レティが、あの宝玉を叩きます」


 二人の動きが、龍の攻撃に適応しはじめた。

 それを見計らって、レティは切り出す。

 この状況を崩すには、龍に強烈な一打を与えなければならない。そのもっとも有力な候補が、胸に埋もれている黒い宝玉だった。全身が赤く燃える龍の、唯一そこだけが炎を退け続けている。

 レティの勘が、そこに何かあると訴えていた。


「任せて」


 ぶい、と指を二本立てて見せるコフィン。

 彼女が背負う棺は、蓋が閉まりきっておらず、隙間から調査開拓員の腕がはみ出していた。

Tips

◇ "死者の骨杭(デッドマンズパイル)"

 〈回収〉スキルを用いて集めた調査開拓用機械人形の部品を転用した投擲武器。まともな倫理観があるならば発想すら至らぬ外道の傑作。歪んだ骨格は、死者への冒涜を示す。

"嘲りの挽歌"

 死をも恐れぬ葬い人の声。死にゆく者の精神へと直接突き刺さり、尊厳を破壊する。


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