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ヴォーパルバニーと要塞おじさん  作者: ベニサンゴ
第35章

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第2152話「迫り来る黒い手」

 疾病は白龍イザナミを苛む。それが、黒龍イザナギに届かないはずがない。縁を辿り、地理的、時間的な隔たりを超越して、かならず襲いかかってくる。マーリンはその追手からイザナギを守るため、最果ての塔に匿い続けていた。

 だが、俺たちがここに来たことで、隔離されていた世界が繋がってしまった。龍が見つかり、病魔が迫る。


『レッジさん、聞こえてますか!』


 俺が開けてしまった、世界の亀裂。地下洞窟の見える向こう側から、黒い手のようなものが伸びてくる。あまりにも存在として強すぎる病魔が、形を持って襲いかかってくる。

 だが、それと同時に、声が届いた。


「レティか!」

『そちらの状況はよく分かりませんが、緊急事態なので連絡しました。こちらで龍骸をなんとかするので、それまで耐えてください!』


 調査開拓団のネットワークは優秀で、辺鄙なところにまでよく届く。最果ての塔があるこの世界は異空間なのだろうが、世界が繋がったことでTELが繋がったらしい。

 しかし、なぜレティがこっちの現状を知っているのだろう。


『管理者同士で情報共有をしています。レゥコを通じて、レティにも』


 どうやら、ウチの管理者はかなり優秀らしいな。


「つまり、レティがなんとかするまで、俺たちが時間を稼ぐことができればいいんだな」


 俺もレティが何をしているのかはよく分からない。だがその口ぶりからして、前線で戦っているのだろう。どれほどの時間がかかるのかは分からないが、今は信頼するしかない。


「すまん、マーリン。軽率だった」

『本当だよ』


 こうなったのも俺のせいだ。やらかしたなら、ちゃんと責任は取る。


「『野営地設置』」


 テントを建てよう。

 病気に負けないテントを。


「エイミー、3分頼む」

「人使いが荒いわねぇ!」


 テントが組み上がるまで、どれだけ短縮しても3分はかかる。その間無防備な俺と、奥にいるイザナギを守ってもらわなければならない。

 エイミーは両腕の盾をクロスして、黒い手を阻む。病魔の具現化だが、物質性を持ったが故にエイミーを無視できない。


『しかたない。私も協力するよ』

「さっきの拳法か?」

『冗談。――魔法使いらしくスタイリッシュに戦うさ』


 マーリンが、風を纏う。彼女はいつの間にか手元に呼び寄せていた長い杖を、病魔の手に差し向ける。


『"龍よ、巡り巡れ"』


 突風が病魔に食らいつき、噛みちぎる。

 大地を抉る深い軌跡が、その激烈な威力を物語っていた。


「……普通に強いのか」

『魔法使いだからね』


 思わず唖然としてしまう。

 彼女が使ったのは、おそらく俺が持つモジュール〈嵐綾〉の本来の姿なのだろう。エルフが伝えてきた"魔法"を改造し、無理に移植した俺たちのものとは、まるで性能が違う。

 そして、それでも、


「倒れてはくれないか」

『相手は概念的な災厄事象そのものだからね。風で吹き飛ぶ程度なら、苦労はないさ』


 指を捩じ切られた病魔は、形を歪め、再生していく。

 ものの数秒足らずで、その姿は完璧に復元されていた。

 拳を握りしめ、マーリンを襲う。横から割り込んだエイミーが、それと衝突しながら防ぐ。


「ちなみに魔法は連発できるのか?」

『塔の守りを捨てるならね』

「じゃあ、やめてくれ」


 マーリンはすでに魔法を使い続けている。イザナギに直接病魔が迫れなないのがその証左だ。あくまで病魔はこの最果ての地の外から、手を伸ばさなければならない。


「『遥か聳える長城の高壁』ッ!」


 エイミーが大規模なテクニックを繰り出す。大盾が左右にずらりと並び、堅固な防衛線を構築する。だが病魔の手もそこに躊躇いなく拳を叩きつける。汗を滲ませながら盾を支えるエイミーの表情が、余裕がないことを何よりも雄弁に語る。


「せめてシフォンがいてくれたら……」

「あっちはあっちで頑張ってくれてるみたいだからな。信じるしかない」


 唇を噛み締めるエイミー。

 徐々に盾に傷が増えていく。〈鉄錠奉仕団〉の作ったワクチンがなければ、"疾病"によって瞬く間に瓦解していたはずだ。それを考えれば、健闘できているだけでも素晴らしい。

 ただ、それでは足りない。


「あと1分だ!」


 テントは構築が進んでいる。

 エイミーは何も言わないが、あまりにも長い1分だ。60秒もあれば、敵は100回以上の致命傷を繰り出してくる。100の死線を一度のミスもなく乗り越えなければならないのだ。

 極限の状況に置かれて、エイミーは口を動かす余裕すらない。


 あと、30秒。


 向こうも何か勘付いているのか、攻撃はさらに熾烈さを増す。

 エイミー一人で受け止める量を、遥かに超えている。彼女は気合いだけで動いていた。

 だが、


「ッ!」


 わずかな隙を、病魔は見逃さない。

 蟻の一穴が城壁を崩す。

 緻密に計算された上で、ギリギリの状態で維持されていた均衡が、一気に崩れる。


「――首ぃいいいいいいいっ!」


 エイミーが瞼を閉じた、その時。

 声が響き、斬撃が病魔の手首を斬り落とした。

Tips

◇黒死の蝕手

 星を蝕む病の具現。触れるもの全てを腐らせ、爛れさせ、死に至らしめる。何かを探すように手を伸ばし、その先にあるものは黒く崩れ去る。


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