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ヴォーパルバニーと要塞おじさん  作者: ベニサンゴ
第35章

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第2140話「ボスのお約束」

 背中を強打する衝撃と、ぐるりと縦回転する視界。勢いよく吹き飛ばされたことに遅れながら気が付いたレティは、無理矢理に身体を捻って二本の足と片腕で着地する。自分が数秒前まで立っていた地面は隆起して、黒い蒸気のようなものが噴き出している。


「地中からの奇襲とは、ボスのくせにいやらしいことを!」


 一方的に攻撃を受けているだけのように見えて、腐龍イザナミはひそかに反撃を繰り出していたのだ。地中に根を伸ばすようにして、誰よりもヘイトを買っているレティを一撃で屠ろうとしていた。

 これまでにない、手の込んだ戦略的な行動に、レティは気を引き締める。それと共に、自分を突き飛ばして助けてくれた存在にもようやく意識が向いた。


「大丈夫ですか、レティさん。けほっ」

「アイさん! 助かりました。ありがとうございます!」


 地面から噴き出す黒ブレスの向こうから現れたのは、〈大鷲の騎士団〉副団長の少女。彼女は少し掠れた声で、咳を繰り返した。レティを吹き飛ばすほどの衝撃を、彼女は声だけで繰り出した。当然、喉には強い負担がかかる。


「ここでレティさんを失うわけにはいきませんから。兄貴が気を引いている間に回復を」

「至れり尽くせりですね。助かります!」


 空中では、アストラが爽やかな笑声と共に飛翔している。龍の長い首が絡まりそうなほどに翻弄していて、しばらくは任せられそうだった。レティはその間にアンプルを飲み干し、包帯を巻き、カツ丼をかき込む。バフの更新はなかなかに忙しい。特に料理を食べてバフを更新するのは、本人の早食いという非スキルテクニックが重要になってくる。

 その点で言えば、レティは優秀だった。


「相変わらず素晴らしい食べっぷりですね」

「もほぁ、もぎゅもぐっ」


 あっという間にどんぶりを空にする様は、いっそ清々しい。アイも前線で戦いながら飯バフを更新することはあるが、天むすやミートサンドウィッチといった片手で食べられる軽食や、エナジーバーのように、素早く食べられるものでなければ難しい。


「と、ところでレティさん。レッジさんの姿が見えないのですが、一緒ではないんですか?」


 団長が龍とタイマンを張っているのをいいことに、アイはさらに話しかける。ローズピンクの髪の一房を指に巻き付けながら。


「レッジさんならエイミーとデート中ですよ」

「デッ!? な、ど、どういうことですか?」


 ぶすっとしたレティは、〈白鹿庵〉のリーダーが宇宙の彼方に出かけていることを伝える。もちろん、エイミーと二人きりなのは偶然のことだろう。しかし、どうしてもそこにはレティの主観も混ざる。


「エイミーさん。あんまり意識してる感じなかったのに……」

「アイ! ちょっとはアシストしてくれ。おーい、アイ!?」


 さしものアストラも、ずっと龍を相手取れるわけではない。どうしてもLP収支はマイナスで、外部からの支援も必要だ。

 実兄の切羽詰まった声が頭上から響くなか、アイは眉を寄せて俯いていた。


「はえやーーーっ!」


 見かねたシフォンがイザナミに飛びかかり、その首に太い縄をくくりつける。タロット、『吊られた男』の効果が発動し、龍は強引に騎士団長から引き剥がされた。


「助かりました、シフォンさん! アイ、こっちの声は聞こえてるのか?」

「で、でもレッジさんも何か頑張ってるんですよね! 私も頑張らなきゃ!」

「アイ? アイ!」


 ぐん、と拳を握り、気合いを入れるアイ。振り返って腐龍イザナミに目を向けると、アストラが今にも押しつぶされそうになっている。


「『光子狂想曲(フォトンカプリッチオ)』ッ! 『インフィニティスラストラッシュ』ッ!」


 歌いながら、繰り出すレイピア。

 目にも止まらぬ速さで突きつけられる鋭利な剣先が腐龍イザナミを押し込んでいく。その隙にアストラは危機を脱し、再び聖剣に光を宿らせた。


「周辺の浄化とワクチンの維持さえ怠らなければ、相手はただステータスが高いだけの木偶の坊だ。一気にかかれば倒せるぞ!」

「うおおおおおおっ!」

「騎士団に負けてたまるか! 耐えてくれよ、俺の闇を祓いし聖滅の血手セイクリッドブラッドハンド!」

「我が真名によって命ず。執縛の猟犬よ、獣に牙を突き立てろ!」

「デストローーーーイ!」


 アストラの声に負けじと、他の調査開拓員たちも飛びかかる。

 彼らもまた一人一人、珠玉の戦士たちである。一線で通用するだけの実力を持ち、無差別の黒ブレス乱射にも耐えてきた猛者だ。一気呵成に走り出し、レティたちによってこじ開けられた好機へと雪崩れ込む。


「もうすぐブラックボックスも限界みたいです。それまでに、少しでも多く削らないと!」


 ラクトが繰り出した強力な拘束も徐々に破られつつある。

 他の支援機術師たちがそれぞれに妨害アーツを繰り出しているが、それが突破されるのも時間の問題だ。あれが自由を取り戻し前に、少しでも追い詰めなければ。

 レティは熱されたハンマーを手に走る。再び、その鱗を叩き潰して焼き印を刻みつけるのだ。


「うおりゃーーーーーーっ!」


 アイの歌唱による広域バフも働いて、彼女はハンマーを振り下ろす。大地を割らんばかりの勢いで、古龍の死を呼び寄せる。


「レティ、もうすぐHPが半分切るよ! 気を付けて!」

「へ?」


 そしてタイミングが悪く、彼女は龍の形態変化を間近で目撃することになる。

Tips

◇ 『光子狂想曲(フォトンカプリッチオ)

 超高速のリズムで奏でられる高難度楽曲。刺激的でありながら滑らかな旋律は聞くものの動きを活性化させ、敏捷性を大幅に上げる。


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