表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴォーパルバニーと要塞おじさん  作者: ベニサンゴ
第35章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2141/2197

第2139話「赤兎の刻印」

 巨躯が揺らぐ。

 凄まじい速度で接近したレティは、その運動エネルギーを全て乗せた一撃を叩き込んだ。それは龍の体を陥没させ、そこにくっきりと赤いウサギのマークを刻みつけた。


「『赤兎の烙印』は死刑宣告! あなたは今から、レティによって袋叩きにされるんですよ!」


 高笑いするレティ。その手元にあるハンマーは赤く熱を帯びて周囲にゆらめきを滲ませる。

 最新の冶金技術の集大成たる特殊合金"ヒヒイロノカネ"を存分に用いた"双頭の灼兎棍"には、武器固有のテクニックがあった。

 それは内部に仕込まれた発熱機構によって超高温に熱されたハンマーヘッドを対象に叩きつけることで、火傷跡をつけるもの。それだけでも持続的なスリップダメージを生み出すが、より凶悪なことに新たな弱点としても機能する。

 まさしくそれは、獰猛な赤兎に狙われている証であり、獲物へ突きつけられた宣戦布告なのだ。


「弱点が見つからないなら作ればいいじゃない! ということで、バンバン行きますよ!」


 腐龍イザナミは強大すぎるがあまり、鑑定が通用しない。弱点を見つけることもできず、どこを狙えばいいのかも分からない。そこにレティは、強引に弱点をこじ開けるパワフルなテクニックを繰り出したのだ。

 当然、突然焼けた鉄で殴られた龍は怒る。死にゆく姿なれど、苦痛は和らぐことなどない。むしろ、鱗が弾け、肉が焼け、より鮮烈な生への渇望が湧き上がっているようにも見えた。


『ォァアアアアアッ!』


 ブチブチと筋肉を断裂させながら、顎を大きく開いて絶叫。

 凄まじいプレッシャーが周囲を無差別に襲い、対応の遅れた調査開拓員たちが地面に突っ伏す。


「うるさーーーーーいっ!」

「はえーーーーんやっ!」


 一方、レティとシフォンは即座に応じる。プレッシャーにはプレッシャーを返すことで総裁するのが、近年の調査開拓員におけるトレンドであった。大声をトリガーとするテクニック、『威圧』をちょうどいいタイミングで発動することで、パリィと同じような行動が可能なのだ。

 レティたちは声を張り上げながらも足を止めることなく、再び龍の元へと肉薄する。


「シフォン、マークに向かってありったけ叩き込んでください!」

「うぅう、もう、どうにでもなれーーーーっ!」


 レティがつけた烙印に、シフォンが大きなアーツ製の氷剣を投げつける。焼けただれた傷跡に冷たい刺突が襲いかかり、腐龍イザナミは天に轟くような絶叫を上げた。


「ふおおおっ! すごい、めっちゃ効いてるよ!」

「強制弱点ですからね。ほぼ確定でクリティカルも発生しますし、刺突斬撃打撃全ての物理属性攻撃が特攻になります。ふはははっ!」


 イベントレイドボスとは思えないほどの手応えに、シフォンが歓声をあげる。彼女とて、目の前の敵が予想外に怯んだらテンションが上がる。更に攻撃を続けようと、早速新たな機術製武器を生み出しにかかる。

 彼女の戦いはトリッキーの一言に尽きる。

 次々とその場で生み出すアーツの武器は、その時々に合わせて形状を変える。龍が鋭い爪を叩きつけようと迫った時には巨岩のハンマーを繰り出してそれを砕き、黒いブレスを飛ばしてきた時には炎の斧でそれを切り裂く。斬撃、打撃、刺突の物理属性と、火、水、雷、土、風の機術属性を臨機応変に組み替えて、最適な武器を瞬時に繰り出す。


「うおりゃーーー!」


 尻尾を振りまわし、投げる槍。それは空中で三叉の矛となり、龍の刻印に突き刺さる。


「『ドロー』ッ! 正位置の戦車! やっちゃえーーーっ!」


 更に、彼女の進撃は止まらない。

 アーツの氷槍が深々と突き刺さるのを見ながら、懐からカードを取り出す。運命を占うタロットカードが差し示したのは、猛攻の姿勢。〈占術〉スキルによる理外の力も味方につけた彼女は、溢れ出す力をそのまま龍にぶつける。


『ギィイアアアア!』


 突き刺さった氷の槍は、腐肉を貫き進みながらも分裂を繰り返す。次々と槍の先端が三叉に分かれ、またその先でも三叉に分かれる。三乗で突き刺さる刺激が、龍の神経をズタズタに切り裂いた。


「うーん、シフォンもだいぶ容赦ないですねえ」


 単身でイベントレイドボスを押しつつあるシフォンを見て、レティも思わず舌を巻く。なんだかんだと言って、シフォンはただ避けるだけの毛玉というわけではない。どれだけ攻撃しても決して沈まず、むしろ攻撃をLP供給に変えて戦い続ける、無差別砲撃戦車のような凶悪な存在なのだ。


「とと、流石に刻印が消えるのも早いですね。新しく刻み直さないと」


 赤兎の刻印は永遠に残り続けるわけではない。敵が強ければ強いほど、そして攻撃が当たれば当たるほど、薄くなっていく。

 新たな攻撃の目標を示すため、レティは再びハンマーを熱する。


「行きますよ! 『赤兎の――」

「レティさん、危ないっ!」


 意気揚々とハンマーを掲げた、その時。

 彼女に向かって黒い影が迫る。地中深くを潜航しながら、密かに彼女へ狙いを定めていた、病害。腐龍イザナミの病魔が、レティの足元から吹き上がった。

Tips

◇『赤兎の刻印』

 "双頭の灼兎棍"装備時に使用可能なテクニック。激しく熱されたハンマーを叩きつけることにより対象に重大な火傷を負わせ、弱点を作る。

 獰猛な兎に狙われた獲物の証であり、死の宣告である。


Now Loading...

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

◆剣と魔法とナノマシン1〜7巻まで好評発売中です!
◆合法ショタとメカメイド1〜3巻もよろしくお願いします!

ナノマシン
第1巻 ⚫︎公式ページ ⚪︎ Amazon Kindle ⚪︎ Book Walker
第7巻(最新) ⚫︎公式ページ ⚪︎ Amazon Kindle ⚪︎ Book Walker
メカメイド
第1巻 ⚫︎公式ページ ⚪︎ Amazon Kindle ⚪︎ Book Walker
第3巻(最新) ⚫︎公式ページ ⚪︎ Amazon Kindle ⚪︎ Book Walker
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ