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ヴォーパルバニーと要塞おじさん  作者: ベニサンゴ
第35章

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2117/2153

第2117話「封印措置惑星」

 〈エミシ〉近傍にある大型の惑星農場。管理番号W-003αを設定された広大な小麦畑だった岩石型惑星である。直径はおよそ1,500kmほど。月よりも更に小さい。それでも、その全地表を開墾して小麦畑としているため、収量は膨大なものになる。現実的には惑星全てで単一の品種を育てているわけではなく、試験農場や休耕地として設定されているエリアもある。


『こちらの農場では毎日2,000万トンの小麦を生産していました。それがストップしているのですから、かなりの痛手ですよ』


 かつては黄金の美しい大地を見せていた惑星農場は、軌道上を高速で動く無数の黒い物体で包まれていた。個々は5メートルほどの直方体に近い鋼鉄の装置が、無数に投下され衛星となって飛び回っているのだ。

 エミシによる封印措置。それは惑星に対し絶えず無数の熱線を送り込むことで、地表を灼熱にするというものだった。

 当然ながら畑は全滅。更に封印用小型衛星を動かし続けているだけでも膨大なコストがかかる。熱線のエネルギー源としては近くの太陽の光が使われているとはいえ、数千、数万という数の機械が衝突しないように巡りつづけるには細やかな調整も必要だ。


『うん? 毎日2000万トンも小麦を作っていたんですか?』


 エミシが重いため息を漏らした直後、ウェイドが疑念を芽吹かせる。〈エミシ〉から各都市に輸出される農作物のリストは公開されており、ウェイドも閲覧できる。それを合算すれば、エミシの作物生産能力もわかる。

 しかし、そこの計算との齟齬が――。


「まあ植物ってのは自分の思い通りにはいかないからな。選別してりゃ、もっと減るだろ」

『なるほど、確かにそうですね』


 迂闊なことを言って顔を真っ青にするエミシを見かねてフォローすると、ウェイドも頷く。こう言う時だけ妙に頭が回るのは厄介だ。


『しかし、随分と選び抜きましたね。もう少し選別を甘くしてもいいのでは?』

『あ、あははっ。それはその、万が一にも健康被害なんて出しては大変ですからね』

『流石はエミシですねえ』


 目をザブザブと泳がせながら適当なことを言うエミシ。ウェイドも素直にそれを信じて、うんうんと頷いていた。


「で、現地調査がしたいんだが」

『はい。どうぞ』


 宇宙船の眼下には、広大な岩石惑星。そして、それを包み絶えず熱線を打ち出し続ける無数の人工衛星。大地は燃え、大気は揺らぎ、熱風が渦巻いている。


「どうやって降りれば?」

『レッジさんなら……』

「なんだよその信頼の目は!」


 何も考えていなかったらしいエミシの、わざとらしい期待に満ちた目に思わずがっくりと肩を落とす。封印措置がどんなものか、具体的な話を聞いていなかった俺が悪いのかもしれない。しかし、あんな関門をどうやってぐぐり抜ければいいのだ。

 人工衛星の動きはとても素早い。巨大すぎる惑星との対比で緩慢にも見えるが、実際には新幹線よりもはるかに早い。当然、当たれば無事では済まない。

 そして人工衛星が放つ熱線も凄まじい。地表に向けて打ち込まれているため今は問題がないが、降下しつづけて人工衛星が"上"に来たら状況は一変する。掠るだけでも燃え尽くされるような灼熱を避けながら進まなければならない。

 どちらをとっても、正気とは思えない。

 だからこその封印措置なのだろうが……。


「あのな……俺にもできないことはいくらでもあるんだぞ。一般人に何を求めてるんだ」

『はい?』

『はぁ?』

「なんで二人して首を傾げるんだ」


 まったく、レティたちだけじゃなく、最近は管理者たちまで俺のことを見誤っている。ただのおっさんに期待を寄せられても困る。


「しかたない。助っ人を呼ぶか」


 俺にこの封印措置を突破することはできない。

 だが、できる奴に心当たりはある。というか〈白鹿庵〉にいる。問題は彼女がログインしているかどうかだが……。


「お、ちょうどログインしてるじゃないか」


 俺は彼女の名前をタップして、通話を繋げた。

Tips

◇惑星焼却封印衛星

 管理者エミシの判断によって発動する惑星封印措置に用いられる特別な人工衛星。対象惑星の低軌道上に多数配置され、地表に向けて太陽光凝集熱線を放ち続ける。惑星地表面を加熱すると共に有機物の燃焼を行い、生物、微生物、その他の活動を極限まで阻害する。


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― 新着の感想 ―
またシフォンが投げ込まれるのか…。
だれかしらでとっかかりが得られるの調査開拓団の理念通りなんだろうけどこのおっさんがやると厄介な人脈してんなって感想になる
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